漢方で「イボ」といえば、薏苡仁(ヨクイニン)という生薬が有名です。薏苡仁=はとむぎは昔から「いぼとり」として使われてきました。
現在では、薏苡仁をエキス抽出したものをタブレット状に加工した第3類医薬品や健康食品がテレビの通販番組で飛ぶように売れているようです。数か月の服用ではなかなか改善はみられませんが、3~4年間ほど根気よく飲み続けた結果、ある日突然ポロっとイボがとれた!という体験談を聞くことがあります。
イボは大きく分類すると、ウイルス性イボと加齢性イボがあります。
ウイルス性については、感染ウイルスの種類も多く、感染経路などを特定するのも難しいため、予防や対策は難しいとされています。
皮膚科治療としては切除手術やウイルスの増殖や増大を根絶するための注射治療などがあります。治療を受けなくても、イボが自然に消えてしまうこともあります。
自然に治る人と治らない人がいるのは、人間に本来備わっている自然治癒の力の差と言えるでしょう。
加齢性イボは皮膚の老化が原因です。皮膚は紫外線や大気汚染、白く精製した米や砂糖、食品添加物、動物性たんぱく質などの過食やストレスなどでダメージを受けます。
さらに加齢により新陳代謝が低下し皮膚の細胞が新しく生まれ変わりにくくなるため、イボをはじめ、シミやそばかす、ほくろなど皮膚の症状が現れます。
「歳だから仕方がない」と諦めずに、まずは身体にとって正しい食事を心がけ、適度な運動で血行を促進し、質のよい睡眠をとり、必要であれば漢方の力を借りながら肌の健康を保持していくことが大切です。
イボにおすすめの漢方薬
『桂枝茯苓丸加薏苡仁』 ◇婦人科系の悩みがある人のイボに ‐
血の流れが悪い「瘀血タイプ」の人に使われる桂枝茯苓丸にイボや肌荒れによいとされる薏苡仁を加えた薬です。
体力中程度で、顔色や皮膚の色が青黒く、女性であれば生理不順や生理痛、更年期障害で顏が火照るけれど足先は冷たいような人に適しています。
舌の色は赤紫色で舌裏(舌の裏)の静脈(血管)が透けて紫色に膨らんで見えることがあります。これは瘀血の典型的なタイプといえるでしょう。構成生薬の桂枝が逆上した気を降ろすことで火照りの症状を治し、桃仁と牡丹皮が身体に滞る血を流し、さらに茯苓が身体の余分な水を捌きます。
このように気・血・水がバランスよく流れることで、皮膚の細胞が活性化され、イボや肌荒れ、肝斑などを改善します。
副作用として消化器症状が報告されています。
『麻杏薏甘湯』 ◇冷え症でむくみがある人のイボに‐
麻杏薏甘湯は、主に関節痛や神経痛に効く漢方薬として使われる漢方薬ですが、体質や体力が合えばイボの改善にも役立ちます。
体力中等度~やや虚弱気味の人で、身体に冷えがあるため汗をかきにくく、体内の水を溜め込んでしまうため下半身が浮腫むようなタイプに適しています。
構成生薬の薏苡仁には、もともとイボや肌荒れを改善する作用がありますが、体内や皮膚表面の湿気を取り除くという作用があります。温める力の強い麻黄でさらに余分な水を発汗によって発散させ、皮膚のコンディションを改善します。
胃腸が弱く吐き気がある人、狭心症や心筋梗塞などの循環器系の病気がある人、重度高血圧人、腎臓に障害がる人などは、専門家に必ず相談するようにしてください。
また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。