「休肝日」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?肝臓を休める日、すなわちアルコールを控える日という意味です。このような言葉が存在するくらいアルコールの飲み過ぎが肝臓に与える影響は非常に大きいということです。
アルコールを飲み過ぎて問題になるのが「アルコール性脂肪肝」です。このアルコール性脂肪肝を放っておくと後々深刻な肝障害へ進行するので要注意です。
アルコール性脂肪肝の原因
では、なぜアルコールを大量に摂取すると脂肪肝になりやすいのでしょうか。
肝臓の代表的なはたらきのひとつに解毒作用があります。体内に入ったアルコールは肝臓に運ばれ、分解されて無毒化されます。その際に中性脂肪が生成され、肝細胞内に溜まりやすくなります。
日常的にアルコールと大量に摂取すると、肝臓に負担がかかるだけではなく、生成された中性脂肪がエネルギー消費されないまま肝細胞にどんどん蓄積されていくことになります。中性脂肪が溜まった肝細胞が肝臓全体の30%以上になった状態を脂肪肝と呼びます。
脂肪肝になると、肝細胞の間の毛細血管が圧迫され、血行が悪くなり、倦怠感、疲れやすさなどの症状が現れる場合があります。
しかし、通常は自覚症状がほどんど現れないため、健康診断などで偶然発見される以外に症状が出てこないことも少なくありません。
なぜなら、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、肝細胞の一部が機能しなくても、残りの肝細胞でカバーすることができるので、限界になるまで症状が現れないためです。したがって、症状が現れたときには、すでに肝炎、肝硬変などの肝障害に進行している場合が多いので、早い段階で対処することが大切です。
アルコールが原因の脂肪肝はアルコールの摂取を控えれば、肝臓の機能が回復し、元に戻ることができます。とはいえ、飲酒が習慣になっている人にとって、禁酒することは簡単なことではないでしょう。
しかし、脂肪肝の状態のまま飲酒を続ければ、肝細胞が破壊されてアルコール性肝炎になり、さらには回復が不可能な肝硬変、肝がんへと進展する可能性が高いことを考えれば、禁酒さえすれば元に戻ることができるうちにしっかり改善に取り組んでいく必要があります。
西洋医学では、アルコール性脂肪肝に対して、特に治療薬はなく、生活習慣の改善が中心です。禁酒はもちろんのこと、脂肪と糖質を控えたバランスのとれた食事、適度な運動を取り入れて生活改善することで相乗効果が期待できます。
アルコール性脂肪肝の漢方薬
次にアルコール性脂肪肝に効果があるといわれる漢方薬を紹介します。
東洋医学では、肝だけに注目するのではなく、体全体をみていきます。脂肪肝の場合、肝の脂肪を取り除きながら、脂肪が溜まりにくい体質を目指して治療します。
まず、肝の機能を高め、脂肪の燃焼を促す作用をもつ「大柴胡湯(だいさいことう)」や「小柴胡湯(しょうさいことう)」が挙げられます。 大柴胡湯は比較的体格のいいタイプに用いられます。大柴胡湯はコッコポアG錠として販売されているため見かけたことがある方もいるかもしれませんが、コレステロールの吸収を抑える働きももっていると考えられています。
⇒大柴胡湯について
他には、脂肪の燃焼を促す効果がある漢方薬として、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」があります。
脂肪肝以外に肥満にも用いられます。体内の熱を下げ、余計な水分を排出する働きがあるため、高血圧やむくみにも効果があります。
⇒防風通聖散について
また、体内の血が滞っている場合には、血の滞りを取り除き、血行をよくしながら脂肪の燃焼を促す働きをもつ「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」も脂肪肝の改善に用いられます。
生活習慣病のひとつともいわれるアルコール性脂肪肝は、生活習慣を見直せば改善できる病気です。漢方薬も大事ですが、生活習慣も大事です。
放っておけば、命にかかわる病気に発展しかねない恐ろしい病気でもあります。アルコール性脂肪肝を予防するためにも、日頃からアルコールの摂り過ぎに気をつけ、肝臓に負担をかけない生活を送ることが大切です。