ヒステリーの原因と症状、使用する漢方薬

ヒステリーとは

ヒステリーとは強い心的ストレスなどによって、精神や身体に何らかの障害が現れる神経症です。ヒステリーは精神的な障害が現れる「解離性障害」と身体的な障害が現れる「転換性障害」に分類され、現在ではこれらの名称で呼ばれることが多くなっています。

ヒステリーの原因と症状

ヒステリーの主な原因は、現在や過去におけるストレスや心的外傷などが代表されます。これらのダメージを回避するために精神機能が一時的に停止したり、身体症状に転換されることで心身に様々な症状が起こるとされます。「解離性障害」では一時的な健忘や人格の統一性を失うなどの精神面の障害が、「転換性障害」では手足の麻痺や運動障害など身体面の障害が主に現れます。

解離性障害の主な症状

 解離性健忘・・・自分に起きたことの一部や全部の記憶を失う。一時的な健忘であることが多い。

解離性遁走・・・強いストレスなどで突然日常的な場所を離れ放浪してしまう。本人にはその間の記憶がないことが多い。

解離性昏迷・・・体を動かしたり言葉を発することができなくなったり、周囲からの刺激に反応しなくなる

離人症性障害・・・精神が体から離れたような感覚になり、自分自身を外側から見ているように感じる

解離性同一性障害・・・一人の中に複数の人格が存在し、それらが交代で現れる症状。

転換性障害の主な症状

 解離性運動障害・・・立ったり歩いたり、声を出すなどの能力が失われる

解離性知覚麻痺・知覚脱失・・・皮膚感覚や視覚・聴覚などが心因的に障害される

解離性けいれん・・・てんかん発作に似た心因性のけいれん症状

ヒステリーで広く使用される治療方法

ヒステリーの治療の基本は患者さんが安心できる環境を整えることです。それには医師との信頼関係や家族など周囲の人の理解や協力が重要であり、ストレスなどで「解離」や「転換」を起こしている精神機能を安定させることで自然に軽快していくのを見守ることが必要となります。家族を含めてヒステリーに対する正しい知識を持ってもらうことや、症状などに合わせたカウンセリングも治療の一つとなります。薬物治療は特別有効なものではありませんが、不安感や抑うつ状態の緩和など補助的に使われることもあります。

ヒステリーで使用される漢方薬治療と対策

ストレスなどで心身の状態が不安定になる病気は数多くありますが、漢方薬は病名ではなく症状や原因・体質といったものに注目して用いるものを選びます。ヒステリーでは精神活動に関わる「肝」や「心」の働きを整えるものや、活動エネルギーとなる「気」の流れが悪くなった状態(「気滞」。高じるとヒステリーの原因ともなる)を改善するものが多く使われます。

柴胡加竜骨牡蛎湯・・・肝の働きを高め、気分を落ち着かせてイライラや不安感・不眠などの症状を改善する作用があります。比較的体力があり、小さなことでもくよくよしてしまいがちなタイプの人に向いています。ヒステリーなどの様々な神経症や、更年期障害や不眠など自律神経の乱れによる症状に広く使われます。同様の症状で体力がないタイプの人には桂枝加竜骨牡蛎湯を使用します。

抑肝散・・・肝の高ぶり(働き過ぎ)を抑え、神経が高ぶってイライラする・不眠があるといった症状を改善します。神経症のほか、子どもの夜泣き、認知症に伴う興奮症状などにも用いられます。比較的体力を選ばずに使用できますが、神経の高ぶりがあることが重要な使用目標となります。症状が続き体力や胃腸の機能が弱っているような人には抑肝散加陳皮半夏を使用します。

甘麦大棗湯・・・心の血を補い、神経の栄養不足による精神不安や興奮などの状態を改善する作用があります。ヒステリーや夜泣き、ひきつけ、てんかんなど激しい興奮状態や急激なけいれんなどの症状を鎮める目的でよく用いられます。ストレスによる胃腸機能の低下を伴う場合にも効果的です。比較的体力がない、子どもや女性に使われることが多い漢方薬です。

半夏厚朴湯・・・気の流れを良くし、気滞に伴う不安や抑うつ状態などを改善する作用があります。神経質なタイプで、喉に何かがつまったような感じ(「ヒステリー球」と呼ばれる症状。喉における気滞が原因となる)がある人に効果的な漢方薬です。ストレスによる不安や不眠、ノイローゼ傾向、神経性胃炎などによく用いられます。

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