帯状疱疹になると、その後脳卒中(脳梗塞・脳出血)になりやすくなります。リスクファクターと早期治療の重要性

帯状疱疹は、子供のみずぼうそうの原因となる帯状疱疹ウイルスが、大人になってぶりかえしてくることから起こる病気で、皮膚の一部に水ぶくれができ、ピリピリとした痛みが出る病気で、日本でも5.00/1,000人年ほどの帯状疱疹患者さんが出て、見かけることも多い病気です。

帯状疱疹後神経痛という、帯状疱疹の後に痛みがずっと持続するという患者さんもよくおり、帯状疱疹後神経痛などの方に漢方薬を使用し改善を見る場合がありますが、最近の研究では、帯状疱疹になった後、90日間は脳卒中(脳梗塞・脳出血)のリスクが高くなり、普段の1.3倍~2倍、脳卒中になりやすい(脳梗塞・脳出血)というデータが出ています。

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stroke vzv

iunn-Horng Kangさんという方が、Strokeに投稿していた論文で、帯状疱疹後に脳梗塞になる率が上昇すると報告し、その研究が色々なところでされており、実際に関連が深いとされるようになってきました。

免疫抑制剤を使用するような方、化学療法などで免疫が落ちている方にもなりやすい帯状疱疹ですが、免疫抑制剤(ステロイドなど)を使用し、帯状疱疹となった方達にも同じような傾向が見られ、帯状疱疹後には、普段の1.36倍脳卒中になりやすく、また頭部の帯状疱疹で合併症もあるような場合は、最大で2倍以上のリスクとなることが報告されています。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/art.39855/abstract

脳神経の合併症(つまり帯状疱疹後の脳卒中のリスク因子)とされるものは、下記のものです。

GENICULATE HERPES ZOSTER
POSTHERPETIC TRIGEMINAL NEURALGIA
HERPES ZOSTER DERMATITIS OF EYELID
HERPES ZOSTER KERATOCONJUNCTIVITIS
HERPES ZOSTER IRIDOCYCLITIS
HERPES ZOSTER WITH OTHER OPHTHALMIC COMPLICATIONS
OTITIS EXTERNA DUE TO HERPES ZOSTER

日本語にすると
・GENICULATE HERPES ZOSTER(Ramsay Hunt syndrome?)
・三叉神経痛を残す帯状疱疹
・眼瞼部の帯状疱疹
・角結膜炎の合併がある帯状疱疹
・虹彩毛様体炎の合併がある帯状疱疹
・その他眼科合併症
・外耳道炎(帯状疱疹による)

これらの合併がある帯状疱疹では、特に注意が必要です。

帯状疱疹後の脳卒中に対する注意点

リスクが高いことがわかれば、次にくるのは対処法です。

有効な対処法は3つです。

・帯状疱疹になったら早期に治療(抗ウイルス剤)
・疾患の啓蒙を行い、何かあれば早期受診を指導
・予防のためのワクチンへの取り組み

この3点が重要です。

これらの研究では、治療を行う(抗ウイルス薬でしっかり治療する)ことにより脳卒中の発症を減らせるという報告が同時に出ていますので、早期発見・早期治療で早めに皮膚科や内科を受診することの大切さが分かります。

なってしまった場合も、脳梗塞であれば早期に治療を行うことで後遺症を減らすこともできるようになってきた時代なので、変なことがあればすぐに救急外来を受診するよう、特にはじめの数ヶ月啓蒙することで、脳梗塞の後遺症を減らせる可能性があるかと思います。そのため医療者はそのことを認識する必要がありますし、このページを読んだ人は、周りにそのような人がいれば注意して見る、啓蒙するなどの対策がとれます。

最後の課題はワクチンです。2016年から、生ワクチンが帯状疱疹の予防として使用できるようになりましたが、まだまだ普及率が低いです。それらの予防をすることで得られるメリットが周知されていけば、普及が広がっていき帯状疱疹の予防となり、帯状疱疹後の脳卒中の発症率が減らせる可能性があります。

帯状疱疹後は脳卒中が起こりやすくなり、特に発症してから時間の経っていない時期が要注意です。そのことを知っておきましょう。

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