起立性低血圧とは、急に立ち上がったり長時間立っていたりすることで血圧が低下し、立ちくらみやめまいなどの症状が起こるものをいいます。
具体的には、立ち上がった時の収縮期血圧が立ち上がる前に比べて20mmHg以上(または拡張期血圧が15mmHg以上)低下する場合に起立性低血圧と診断されます。
慢性的な低血圧(収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下)が併せて起きている人もいます。
起立性低血圧の原因
起立性低血圧には原因が不明のものと明らかなものがあります。
・特発性起立性低血圧
起立時には血液が重力の関係で足の方にたまりますが、自律神経の働きにより下半身の血管を収縮させることで頭の方の血液が不足するのを防いでいます。この自律神経がうまく働かないことによって、たちくらみやめまいなどの症状が起こります。
特発性起立性低血圧には、代表的な症状の一つとして起立性低血圧が起こる「シャイ・ドレーガー症候群(小脳などの萎縮が見られ自律神経症状が現れる原因不明の疾患)」も含まれます。
・症候性起立性低血圧
明らかな疾患が原因で起こる起立性低血圧で、糖尿病や内分泌系疾患、神経疾患、心臓疾患、などが原因疾患として挙げられます。また降圧剤やパーキンソン病治療薬など服用中の薬によって起こるものもあります。
起立性低血圧の症状
起立性低血圧の症状では「めまい・立ちくらみ」が最も多く見られます。朝礼や通勤・通学の電車などで長時間立っていると倒れてしまうのも多くは起立性低血圧によるものです。ほかにも、
・朝起きられず午前中は調子が悪い
・疲労感、倦怠感
・肩こり
・頭痛
・動悸、息切れ
・乗物酔いしやすい
などの症状が見られることがあります。
起立性低血圧の治療
特発性起立性低血圧の治療では、生活習慣や食事内容に注意し、必要に応じて薬物治療も行います。疾患や薬物が原因の場合は、それらを改善するための治療を行います。
日常生活等の注意点
・ゆっくり立ち上がるようにするなど、急な動作を行わないよう心がける
・立ち上がる前に足踏みをして、足の血流の流れをよくする
・休養や睡眠をしっかりとるようにする
・規則正しい生活と適度な運動を行う
・水分と塩分(他の疾患に対して問題が無い場合)を多めにとる
・交感神経を刺激するカフェインを適量摂る
・弾性ストッキングなどの使用
薬物治療
血管を収縮させたり自律神経に作用したりして血圧を上げたり症状を改善するものや、精神安定剤、漢方薬などが用いられます。
起立性低血圧に使用する漢方薬と対策
起立性低血圧を漢方では、水の代謝が悪く体内に余分な水がたまっていることや、血の不足(血虚)・血行不良(お血)によるもの、体が冷えて新陳代謝が低下していることなどが原因と考えます。疲労倦怠感が強いなど活動エネルギーが不足(気虚)している場合は「気を補う」漢方薬が効果的です。
・苓桂朮甘湯・・・体を温め、胃腸の調子を整えて体内の水の偏りを調整する作用があります。体力があまりなく冷えがあり、むくみなど水の停滞がある人の立ちくらみやめまい・動悸などに用いられます。
・半夏白朮天麻湯・・・胃にたまった水分が頭の方へ上がってきたことで起こるめまいや頭痛に効果的な漢方薬です。胃腸の働きを改善して消化吸収を良くし、余分な水分を利尿する作用があります。胃腸虚弱で体力がなく冷えがあり、胃にポチャポチャ水の音がするなど体に水がたまっている人に向いています。
・真武湯・・・冷えた体をしっかり温め、体内の余分な水分を排出する作用があります。新陳代謝が低下して冷えが強い人のめまい・立ちくらみ・下痢・腹痛などに用いられます。
・当帰芍薬散・・・血を補い血行を良くして体を温め、余分な水分を利尿する作用があります。体力がなく冷えや血行不良・むくみなど水の停滞がある人の、めまいや頭痛・肩こり・婦人科系疾患などに用いられます。
・補中益気湯・・・胃腸の働きを整えて消化吸収を良くし、体に元気(気)をつける漢方薬です。気の不足で血液循環が悪くなることによる立ちくらみ・低血圧・倦怠感・朝起きられないなどの症状に効果的です。髪や皮膚の乾燥や貧血傾向など、血の不足が同時に見られる場合は十全大補湯を使用します。