鍼灸治療で使用される鍼は、長い歴史の中で磨き上げられてきた技術と現代の安全基準によって、非常に安全な医療器具とされています。また、鍼を作る専用の工場で作られ、鍼の1本1本がきちんと包装され、外に触れないようになっています。
日本では、鍼灸治療は「はり師」や「きゅう師」という国家資格を持つ専門家が行うため、専門知識と技術が担保されています。また、施術前の消毒、手袋の使用、鍼の中でも鍼灸師が触って良い部分、触らない部分を分け、清潔に操作しています。また、鍼灸院にもよりますが、当院では鍼はディスポ(1回使い切り)の鍼を用いており、清潔操作を心がけております。
本記事では、鍼灸で使われる鍼の安全性に焦点を当て、その構造、衛生管理、品質基準、さらに万が一のリスクへの対策などを詳しく解説します。
1. 鍼の基本構造と安全設計
鍼灸で用いる鍼は、非常に細く柔軟な金属製で、一般的にはステンレススチールが使われています。この材質は、錆びにくく、強度が高く、体内に刺入した際にも壊れにくい特徴を持っています。鍼の直径は0.1~0.3ミリメートル程度と非常に細いため、刺入時の痛みが少なく、体内への負担も小さくなります。
また、鍼の先端(鍼尖)は精密に加工され、弧を描くようにやや丸みを帯びた形状に整えられています。
※当院で採用している鍼メーカーであるセイリンの鍼先端
これにより、皮膚や筋肉へのダメージを最小限に抑えつつ、適切な刺激を与えることができます。加えて、鍼は体に刺入される「鍼体」と、操作時に触れる「鍼柄」の2つの部位から構成されており、鍼灸師が直接操作するのは鍼柄のみです。刺入される鍼体には直接触れないようにすることで、細菌などの付着を防ぎ、衛生面でも配慮がなされています。
2. 使い捨てのディスポーザブル鍼
かつては鍼を再利用していた時代もありましたが、現代では衛生管理の観点から使い捨てのディスポーザブル鍼が主流です。ディスポーザブル鍼は一度使用した後、再利用せずに廃棄されるため、感染症のリスクを大幅に低減します。さらに、これらの鍼は使用前に滅菌され、個別包装されているため、患者ごとに新しい鍼を使用することが徹底されています。
患者様によっては「他人と共有された鍼が使われるのではないか」という不安を抱いてみえるかもしれませんが、当院ではディスポーザブル鍼を使用しているため他人と共有されることはございません。安心して鍼灸治療を受けられます。
3. 日本の厳格な品質基準
日本国内で流通している鍼は、医療器具として厚生労働省の承認を受けた製品です。これにより、鍼の製造から販売まで厳格な品質管理が行われ、国の基準をクリアした鍼のみが市場に流通しています。日本の鍼は品質も優れており、世界的に見ても高い安全性が確保されています。
鍼の製造工程では、精密な加工技術が求められます。特に、鍼尖の仕上げや鍼体の表面処理などが重要で、これらの工程を経ることで、鍼が体内に刺入された際に肌を傷つけず、滑らかに刺さるように設計されています。また、厚生労働省によって定められた安全基準に従い、製造後の検品や滅菌処理も行われているため、患者に提供される鍼は高い品質を保っています。
4. 鍼灸師の技術と安全への配慮
日本で鍼灸を行うには、「はり師」や「きゅう師」といった国家資格が必要です。これらの資格を取得するためには、指定の専門学校や大学で東洋医学の理論や解剖学、生理学、衛生学などの知識と技術を学び、さらに国家試験に合格しなければなりません。そのため、鍼灸師は鍼を安全に扱う技術を持っており、各患者の症状に応じて適切な治療を行う能力を備えています。
また、鍼灸治療を行う際には、皮膚の消毒や手指の清潔保持など、感染予防のための衛生管理が徹底されています。鍼灸師は、患者一人ひとりの体質や体調を考慮して、鍼を刺す深さや角度を調整し、安全かつ効果的な治療を行います。
5. 万が一のリスクとその対策
鍼灸治療は安全性が高いとされていますが、万が一のリスクに備えた対応も整っています。稀に鍼を刺入した際、出血や内出血が生じることがありますが、これは皮膚の浅い部分にある毛細血管が傷つくためで、通常はすぐに治まります。また、内出血が生じた場合でも、数日以内に自然に治癒することがほとんどです。
感染症のリスクについても、ディスポーザブル鍼の使用や消毒によって大幅に低減されているため、非常に稀です。さらに当院では、なにかあればすぐに医師が隣のクリニックで診察することができる環境のため安心です。
6. 鍼灸治療を安全に受けるための注意点
患者様が鍼灸治療を受ける際により安全に受けていただく方法があります。例えば、治療前後の飲酒は血流を促進し、内出血のリスクを高めることがあるため避けることなどです。また、治療直後は体がリラックスした状態であるため、激しい運動や長時間の入浴は避け、体を安静に保つよう心がけることが推奨されます。
まとめ
鍼灸に使用される鍼は、使い捨てのディスポーザブル鍼が採用されていること、厚生労働省の厳格な基準をクリアしていること、鍼灸師が高度な技術と衛生管理を徹底していることから、非常に安全性が高いと言えます。また、鍼灸師は国家資格を持ち、専門的な知識と技術を備えているため、安心して施術を受けてください。