甘草とは、マメ科の植物である甘草の根と根茎を乾燥させた補気薬に分類される生薬です。中国、旧ソ連、スペイン、イランを産地としており、サポニンやフラボノイドを主成分としています。
サポニン成分に甘味がある為、北アメリカやヨーロッパではリコリス菓子として古くから親しまれており、現代でもグミやキャンディーとして一般的に販売されています。
【中医学的に見る甘草の効能】
甘草自体には、脾胃益気作用、咳止め効果、四肢の痙攣効果があります。
また、五臓六腑全ての十二経を帰経としている為、様々な漢方薬に含まれている複数の生薬の効能の差異を調整/調和する為に用いられることが多いです。味を甘、性を平とする生薬です。
とても便利な生薬ではありますが、甘草のサポニン成分であるグリチルリチンの化学構造式が副腎皮質ホルモンであるアルドステロンと類似しているので、過剰摂取(10g以上)してしまうと偽アルドステロン症を起こし、高血圧/浮腫/高Na血症/低K血症などを起こす可能性があります。
複数の漢方薬を併用する時は、摂取する甘草の総量を念頭に置いておく必要があります。また、既に浮腫を持っている方、腎機能異常の方、利尿剤を併用されている方には注意して使用する必要があります。
⇒参考:偽性アルドステロン症について
【甘草が用いられる主な漢方薬】
- 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
:芍薬と甘草の二つの生薬のみからなる漢方薬です。急激に起こる筋肉のけいれんを伴う疼痛に用いられるので、特にこむら返りの症状に使用されることが多いです。
- 葛根湯(カッコントウ)
:生薬「葛根」のページを参照して下さい。甘草はこの漢方薬において、調和作用を発揮しています。
- 小青竜湯(ショウサイリュウトウ)
:生薬「五味子」のページを参照して下さい。甘草はこの漢方薬において、調和作用を発揮しています。
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
:生薬「柴胡」のページを参照して下さい。甘草はこの漢方薬において、抵抗力をつける働きを発揮しています。
【西洋医学的に見る甘草】
甘草エキスには、顕著な抗炎症作用及び抗潰瘍薬が認められている為、今後の植物バイオテクノロジーにおいて生産が期待されている化合物の一つです。
【甘草の成分が用いられている西洋医薬品】
肝機能を保護したり、アレルギー性疾患を治療する時に用いる「グリチロン」や「強力ネオミノファーゲンシー」といった医療用医薬品に応用されている他、市販の風邪薬にも喉の炎症を抑える目的の成分として含有されています。