むくみの原因と対処方法・漢方薬

症状の特徴

細胞と細胞の間にある水分(間質液)は通常、毛細血管により排出・吸収されますが、このバランスが崩れることにより、むくみが生じます。

体のむくみのうち、脚のむくみはよく見られる症状で、特に女性に多く見られます。

むくみの原因は様々ですが、むくみが続いたり、ほかの症状もある場合は医師の診断を受ける必要があります。

  • 両脚がむくむとき:最もむくみやすいのは脚で、長時間立っていたり、座っていたりすると、病気がなくてもむくみます。病気が原因の場合は、全身性浮腫が8~9割を占めます。病気の原因としては、心臓、腎臓、肝臓、内分泌の病気が考えられます。指で押したときに圧痕が残る場合は、水分とナトリウムが貯まっている場合が多く、圧痕が残らない場合は、リンパ浮腫や、甲状腺機能低下症が考えられます。
  • 片足だけがむくむとき:片一方の足に怪我をしたとき、炎症、かぶれ、アレルギー、脳梗塞などで片足が麻痺したときに起こります。また、血液の流れ、特に静脈やリンパの流れが悪くなり、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症やリンパ浮腫でも片方がむくみます。生理的な機能としては、左>右で浮腫みやすいとされています。そのため右だけが浮腫む状態は不自然で、しっかり調べるべきです。
  • 心性浮腫:心臓のポンプ機能が低下している場合に生じます。立っている時は足に、寝ている時は腰や背中にむくみ、夕方に強く生じます。
  • 腎性浮腫:ネフローゼ症候群では、全身に強い浮腫が起きます。急性糸球体腎炎から腎不全になると浮腫が生じます。
  • 肝性浮腫:腹水をともなうことが多いです。治療が難しいです。
  • 薬剤性浮腫:降圧剤であるカルシウム拮抗薬は動脈の血管拡張により静脈圧が上がり、足がむくむことがあります。糖尿病薬のインスリンは腎臓におけるナトリウムの再吸収が高まることでむくみます。消炎鎮痛薬、甘草を含む漢方薬、グリチルリチン製剤、男性・女性ホルモン、副腎皮質ステロイドはナトリウム貯留作用があるため、全身にむくみが生じることがあります。

西洋医学の治療

むくみ自体の解消には、利尿薬を用います。薬以外にも利尿作用のあるカリウムの多い食事を取るのもむくみ解消には有効です(腎不全や心不全や糖尿病では、カリウム制限の必要な状況の場合もあるので、全ての方にいえるわけではありません)

ただし、病気が原因の場合は、その治療を優先に行います。薬剤が原因のむくみの場合は、その薬剤を中止したり変更をします。

漢方医学の治療

漢方医学では、むくみは水のバランスの崩れた「水毒」によるものと考えるのが基本です。また、水の代謝をつかさどる「腎」の働きが低下した「腎虚」も原因のひとつと考えます。さらに、自律神経が原因の場合は「気」の巡りをよくし、ホルモンバランスの崩れが原因であれば「血」の巡りをよくして、気、血、水のバランスを正すことを目的に治療をします。

水の滞りを改善する作用のある五苓散はむくみ解消の第一選択薬です。むくみ以外にも、頭痛やめまい、吐き気、嘔吐などの症状に高い効果があり、余分な水を排泄します。二日酔いやそれに伴うむくみにもよく用いられます。また、水の滞りを改善する作用のある柴苓湯も用いられます。

冷え性で月経痛がひどく、むくみがある人や、妊娠中のむくみには、当帰芍薬散が有効と言われ使用されます。血の巡りを改善し、冷えを解消する作用があります。(妊娠中の新規薬剤の服用は、必ず主治医に確認してください)

むくみと冷えが重なり、だるさを感じやすい人には防已黄耆湯が用いられます。特に下半身にむくみが強い場合に効果があります。

腎虚を改善する牛車腎気丸もむくみに用いられます。

むくみに対して用いられる主な漢方処方

以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 体力のある人
  • のどの渇き、発汗、四肢関節の腫れ、痛み、尿量の減少→越婢加朮湯
  • 口の渇き、尿量の減少、みぞおちの抵抗・圧痛→木防已湯
  • 体力が中程度の人
  • のどの渇き、嘔吐、尿量減少、腰から下のむくみ→柴苓湯
  • のどの渇き、嘔吐、尿量減少、皮膚のかゆみ、黄疸→茵蔯五苓散
  • 体力がない人
  • のどの渇き、疲労感、手足の冷え、腰から下の冷え→牛車腎気丸
  • 頭重感、貧血、めまい、耳鳴り、肩こり、動悸、疲労感、冷え→当帰芍薬散
  • 肥満、めまい、発汗、手足のむくみ、疲れやすい→防已黄耆湯
  • 体力無関係
  • 頭痛、めまい、口の渇き、嘔吐、下痢→五苓散

ライフスタイルで注意すること

塩分の取りすぎに注意し、栄養バランスを考えた食事を取ることが大切です。また、アルコールを控え、適度の運動をし、睡眠不足にならないように注意をすることも大切です。手足のむくみを感じたら、自分でマッサージすることも有効です。

参考文献

・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・むくみ体質をあきらめない(Medical Tribune)

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