水虫(白癬菌)の特徴
水虫は皮膚糸状菌というカビの一種である白癬菌が、皮膚の角質層に寄生することで感染します。
一日中通気性の悪い靴や化繊の靴下、ストッキングで覆われている足元は通気に欠け、常に温かくジメジメと湿度がある状態であるため、この環境を好む白癬菌は増殖しやすくなります。白癬菌は頭皮やからだにも感染しますが、高温多湿状態である足への感染がほとんどです。
水虫にはいくつかタイプがあり、足の裏に水ぶくれができるもの、指の間がジュクジュクするもの、爪に感染して黄色くボロボロになるもの、慢性化して皮膚がカチカチに硬くなるものなど様々です。
水虫は人から人へ感染しますが、単に肌がふれ合ったり菌が付着したタオルで足を拭いたからといって、必ず感染するわけではありません。梅雨の時期や浴場・プールなど高温多湿な環境で、付着した白癬菌が足の傷ついた角質層から入り込んだときに感染しやすくなります。角質層から入り込んでも、その人の免疫力が強ければ感染にいたりません。普段から風邪を引きやすい虚弱な人、糖尿病などの疾患で免疫が低下している人は感染しやすい状態と言えるでしょう。
免疫低下のほか、普段暴飲暴食などで胃腸に負担をかけ、内臓に熱がこもり体内に水分がダブついている人も水虫になりやすい体質といえます。漢方ではこのような状態を「湿熱」といい、簡単に言えば身体の中が「高温多湿」の状態であるということです。これもまた白癬菌が好む環境です。このようなタイプの人は、日頃の生活習慣や食事の内容を見直し、場合によっては漢方薬の助けを借りて水虫に感染しない健康な体作りを行っていくことが大切です。
水虫になってしまった場合は、水虫の治療を西洋薬で行うのは良い方法です。また同時に水虫の状態と体質や体力に合った漢方薬を服用するとともに、生薬が配合された外用薬も併用するとよいでしょう。ただし炎症が強く痒みや痛みが治まらない場合は、水虫の治療に長けた皮膚科を受診することをおすすめします。
また、皮膚に皮脂や汗で汚れると菌が繁殖しやすいため、足をこまめに洗う、靴下を取りかえるなど、足を乾燥させ清潔な状態に保つことが水虫改善には大切です。
【水虫(白癬菌)におすすめの漢方薬】
『十味敗毒湯』 ◇じゅくじゅくした水虫のファーストチョイス ‐
体質体格ともに中等度の人で、患部がジュクジュクと湿っており、痒みや熱を持つような症状に十味敗毒湯は適しています。患部の熱や湿気を取り去り、かゆみを止める生薬で構成されています。急性のアレルギー性皮膚症状にも使われることの多い薬です。水虫が慢性化し広がるようであれば、消風散がおすすめです。また、水虫が完治しても再発を繰り返すようなことがあれば、体質から変えていく必要もあるため、体質改善を考慮した漢方薬を選ぶことも必要になってきます。
著しく胃腸の弱い人は使用を控えてください。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『消風散』 ◇慢性化し痒みが強い水虫に ‐
症状が広がり慢性化し、激しい痒みや炎症が現れたものに消風散は適しています。13種類もの生薬で構成され、患部の熱を冷ます、痒みを止める、膿や分泌物を排出する、血を補うなどの多様な作用で水虫を改善します。
体力中等度以上の人向きのため、胃腸虚弱な人や冷えが強い人には不向きです。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『麻杏薏甘湯』 ◇皮膚が乾燥気味の軽度水虫に‐
麻杏薏甘湯は、主に関節痛や神経痛に効く漢方薬として使われる漢方薬ですが、体質や体力が合えば水虫の改善にも役立ちます。
体力中等度~やや虚弱気味の人で、身体に冷えがあるため汗をかきにくく、体内の水を溜め込んでしまうため下半身が浮腫むようなタイプの乾燥した水虫に適しています。構成生薬の薏苡仁には皮膚のあれやいぼを改善する作用がありますが、さらに身体の中の湿気を取り除くという作用もあります。身体の冷えは、温める力の強い麻黄が作用を発揮します。ちなみに、昭和期を代表する偉大な漢方医である大塚敬節は、水虫の患者への処方検討時に、体質や体力のほか「頭にふけの多い人」か否かを目安にしていたとのことです。
水虫患部がジュクジュクと化膿している場合は、使用を控えるようにします。胃腸が弱く吐き気がある人、狭心症や心筋梗塞などの循環器系の病気がある人、重度高血圧人、腎臓に障害がる人などは、専門家に必ず相談するようにしてください。また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『土槿皮酊(どきんぴちんき)』 ◇水虫の外用薬 ‐
木の皮を乾燥させた「木槿皮」という抗菌・抗真菌作用のある生薬を主薬としています。角質軟化作用、殺菌作用のあるサリチル酸や安息香酸など西洋薬成分も含まれるため、漢方薬とは言い難いですが、中国の古い医学書である「本草綱目」には木槿皮を用いて水虫やたむしを治したと記されていることから、木槿皮は水虫の改善にはなくてはならない生薬といえるでしょう。土槿皮酊(どきんぴちんき)は液剤なので、皮膚が乾燥し硬くなってしまっているタイプの水虫に特に適しています。
使用後に、発疹、発赤、かゆみ、腫れや刺激感が現れた場合は、副作用の可能性があるため注意してください。