夜泣きは生後6ヶ月頃から見られ、1歳頃には少なくなります。
泣き入りのひきつけは痛みや怒り、恐怖感、欲求不満などが原因と考えられていますが原因不明のことが多いです。
症状がひどくなると、息を吸った状態で、呼吸が止まり、チアノーゼやけいれんを起こす場合があります。
乳児では、約50分の感覚で深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」のサイクルが規則的に繰り返されます。睡眠の長さは、新生児で18時間、1歳で14時間前後、4から5歳には12時間前後となります。
乳幼児期は睡眠メカニズムが未熟で、夜泣きがおこることが多いと考えられています。
西洋医学の治療
夜泣きの原因が何かの病気によるものなのかどうかによります。特に疾患が見つからなければ、対症療法がおもな治療法となります。
もし何かしらの疾患が疑われ脳波検査を行い、発作回数が多い場合はフェノバルビタールを投与することもあります。
しかし基本的にはこどもの不安や不満を取り除いてスキンシップを深めるようにといったことが主体となり、西洋医学的治療法はほとんどありません。
漢方医学の治療
「夜泣き疳の虫には漢方薬が効く」と昔から広く知られているように、漢方薬による治療が経験的に使用されています。ただし、てんかんによるひきつけに対しては、漢方薬はあくまでも西洋医学的な治療の補助的な治療法と考えられています。
夜泣きは東洋医学的には、「肝気の失調」と考えられています。
第一選択薬としては甘麦大棗湯が用いられています。甘麦大棗湯は、心身の興奮状態をしずめる作用があり、ヒステリー症状に使用されます。
特にこどもや女性に多く用いられています。配合生薬の小麦や大棗には興奮を鎮める作用があります。
体力がなく、冷えが見られる場合は、桂枝加竜骨牡蛎湯が用いられます。神経の高ぶりを抑える竜骨や牡蛎に加えて、体を温める生姜や発汗作用のある桂皮によって、体を温めて精神を安定に保ちます。
神経過敏な場合は抑肝散が用いられます。抑肝散jは元々赤ちゃんやこどもの夜泣き、ひきつけに昔からよく用いられてきた漢方薬です。イライラ感やけいれんなどにも効果があるという報告がされています
柴胡は熱をさまし、筋肉の緊張を緩める効果があります。さらに釣藤鈎がけいれんやふるえを改善する作用があります。
茯苓は、神経の高ぶりを抑える作用があります。さらに、てんかんの補助療法としては柴胡加竜骨牡蛎湯が用いられています。
- 夜泣き・ひきつけに対して用いられる主な漢方処方
以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。
- 体力のない人
- 興奮がつよい、ヒステリー→甘麦大棗湯
- 冷えがある→桂枝加竜骨牡蛎湯
- 体力が中程度の人
- 神経過敏、イライラ→抑肝散
- 体力のある人
- 神経過敏・不安が強い→柴胡加竜骨牡蛎湯
- ライフスタイルで注意すること
乳児は言葉で意思を伝えることができないため、泣くことで何かを訴えようとします。思い当たる原因を取り除いてやり、それでも泣き止まない場合は、静かに抱っこをしてあげたり、背中をなでてあげたり、コミュニケーションを主体として安心させてあげることがやはり大切です。
幼児の場合は、昼間に寝すぎてしまったり、運動不足によって夜寝られなくなることが原因の場合もあります。昼間に沢山遊ばせてやったり、規則正しい生活を送らせることが大切です。
参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)