とくに病気などの原因がなく、風邪をひきやすい、疲れやすい、元気がない、顔色が悪い、神経質など、体質的に体が弱く病気がちな子どもがいます。
子どもの虚弱は、自律神経や内分泌・免疫機能が弱い、抵抗力が弱いことが原因と考えられています。また10歳以上の児童に多いのが、起立性調節障害です。起立性低血圧による自律神経障害により、めまい、立ちくらみ、食欲不振、頭痛、腹痛、疲労倦怠感が見られます。朝なかなか起きられずに午前中調子が悪く、不登校の原因ともなりえます。
時に、そういった方に漢方薬を使用することがあるので解説します。
西洋医学の治療
西洋医学では、子どもの虚弱に対して病名がないため、治療法は確立していません。それぞれの症状に合わせた対症療法が中心となります。
一方、起立性調節障害では、起立性低血圧に対しては、昇圧剤を用います。自律神経失調症に対しては、自律神経調整剤、精神安定剤、ビタミンB1誘導体などを用いて治療をします。
漢方医学の治療
漢方医学では、虚弱は気虚、血虚、水毒ととらえます。体質を丈夫にして虚弱を改善するためには、消化・吸収機能を強化するような漢方薬を選択します。また、冷えを改善するような漢方薬も用います。
具体的には、緊張による腹痛や下痢には、小建中湯が用いられることがあります。小建中湯に配合されている生薬の芍薬は筋肉や内臓の痛みを和らげ、さらに、生姜は体をあたため、食欲を増進する生薬と考えられています。さらに、膠飴は栄養分となり滋養作用を期待されます。食欲がない、倦怠感が強い場合は、人参湯、補中益気湯が用いられます。構成生薬の人参には、滋養強壮作用があります。
よく風邪をひく場合は、小柴胡湯が用いられ、体の免疫機能を強くする作用が期待され使用されます
こどもの虚弱に対して用いられる主な漢方処方
以下に症状別に用いられる漢方処方を挙げます。
- 体力がない人
- 虚弱体質、緊張による下痢、便秘、血色不良、腹痛→小建中湯
- 虚弱体質、腹痛、食欲不振、疲労感、倦怠感→人参湯、補中益気湯
- 体力が中程度の人
- 扁桃・リンパ節が腫れやすい、胃腸虚弱、食欲不振→小柴胡湯
経験的にこれらが使用されることがあります。
ライフスタイルで注意すること
こどもの虚弱は、自律神経系を刺激することで症状の改善がみられることがあります。室内では、素足で過ごして、足の裏から体温調節機能を刺激することは自律神経系に良い効果をもたらします。また、適度な運動や健康的な食生活も大切です。
参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)