かぶれ(接触性皮膚炎)の漢方薬

何らかの物質に直接触れたことが原因で現れる皮膚の炎症や湿疹を、かぶれ=接触性皮膚炎と言います。

人間はひとりひとりが異なる体質や体調を備えているため、身のまわりの全てのものがかぶれの原因になります。特に金属類やゴム、医療品の化学物質、衣類、日光などの特定のものにアレルギー反応が起こり、かぶれること人が多いことが知られています。また、刺激の強い洗剤や毒を持つ植物、毛虫などに触れれば誰でもかぶれる可能性はあります。

かぶれの治療として皮膚科では、皮膚の炎症を抑えるためにステロイド外用薬や、アレルギーの場合は抗ヒスタミン薬などが使われます。漢方薬については、いわゆる皮膚炎や湿疹でよく使われる薬で対応することになります。

かぶれは急性の症状であることが多いため、西洋薬での治療が優先されますが、症状が軽い場合は、漢方薬を使いつつ本来備わっている自己治癒力で改善していくのもよいでしょう。当然かぶれの原因となるアレルゲンを特定し、それらを取り除くことや日常生活から避けることが一番大切です。繰り返しアレルゲンへの接触がくり返されると、症状が続き慢性化することもあるので注意が必要です。

かぶれ(接触性皮膚炎)におすすめの漢方薬

 『紫雲膏』 ◇炎症とかゆみに直接アプローチ ‐

紫雲膏の生みの親は、江戸時代の外科医、華岡青洲(はなおか せいしゅう)で、全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を世界で初めて成功させた人物としても有名です。古い医書である「外科正宗」に記載されている潤肌膏に、青洲が豚脂(豚の脂)を加えて改良したものです。かぶれによる炎症やかゆみを鎮めるだけでなく、殺菌や止血の作用もあるとされます。このように紫雲膏はたいへん優れた薬です。

肌荒れなど乾燥性の皮膚の不調、やけどや痔核による痛みにも使われますが、ジュクジュクと患部が化膿している状態には適していません。紫雲膏は赤紫色の軟膏なので使用するさい、衣服が汚れないよう工夫してください。また豚脂は入っているため、独特の匂いが苦手と感じる人もいるようです。ドラッグストアでは1000円以内で購入できるチューブタイプもあるので、においなどを気軽に是非試してみてください。

 『十味敗毒湯』 ◇かぶれによる湿疹ができたら 

十味敗毒湯は体質体格ともに中等度の人で、かぶれは限られた部分にのみ現れ、患部はジュクジュクと湿り、痒みや熱を持つような症状に適しています。急性のアレルギー性皮膚症状に使われることの多い薬です。

慢性化し痒みや痛みが皮膚に広がるようであれば、消風散を試してみるのもよいでしょう。完治しても再発を繰り返すようなことがあれば、原因物質やアレルゲンを特定し、日常生活から排除することが重要になってきます。

著しく胃腸の弱い人は使用を控えてください。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。

『消風散』 ◇かぶれが慢性化してきたら ‐

かぶれによって、炎症を起こした患部が赤く熱を持ち、そこからじゅくじゅくと分泌物が出ている状態で、耐え難いかゆみが現れるような症状に消風散は適しています。構成生薬の石膏や木通、蝉退(セミの抜け殻)などが皮膚周辺の熱を取り、知母や防風などの鎮静作用でかゆみを抑えます。

地黄が含まれるため、胃腸の弱い人や身体の冷えが強い人には向いていません。

甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。

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