■変形性腰椎症とはどのような病気か
加齢や腰への負荷の蓄積などが原因で、腰椎の変形や異常が起こることによって発生する腰痛です。
背骨は「椎骨」と、その間でクッションの役割をする「椎間板」が積み重なってできています。老化などにより椎間板が弾力性を失ってくると、すり減ったりつぶれたり、横に飛び出したりしてきます。これにより椎骨がお互いの摩擦ですり減り、また不安定になった背骨を支えるためにトゲ状の骨(骨棘)が増殖してきます。
このように背骨の変形や骨棘が神経などを刺激することで痛みが起こるものが変形性脊椎症で、これが腰椎で起こったものを変形性腰椎症といいます。
■変形性脊椎症で出てくる症状
慢性的な腰の痛みやだるさ、腰が重く感じるなどが主な症状です。特に朝起きた時や動き始めた時、腰を後ろに反らせた時などに腰の痛みやこわばりを感じやすくなります。
40歳以上の男性に多く見られ、高齢者の他にも重労働やスポーツなどで長年腰に負担をかけている、若いころから腰痛持ちであるといった人がなりやすい病気です。
女性の場合は更年期障害の一つとして起こる場合も多く、変形に加え骨粗鬆症を伴っていることもあります。変形性腰椎症は鈍痛であることが多いため症状を我慢しがちですが、放置することで脊柱管狭窄症などの合併症になることもあるので注意が必要です。
■変形性腰椎症の治療
患部のX線検査による骨の変形や骨棘の形成の確認、痛みが強い場合などは神経の圧迫を調べるMRI検査を行います。老化現象である変形性腰椎症は、保存的な治療で症状を和らげるのが一般的です。もし痛みやしびれが強いなど日常生活に支障が見られる場合は、骨棘を切除したり神経の圧迫を減らすなどの手術が行われます。
保存的療法としては次のようなものがあります。
・運動療法・・・体操やストレッチで腰を支える力を強くする
・温熱療法・・・ホットパックや入浴などで温めて血行を良くする
・装具療法・・・コルセットで患部を保護する
・牽引療法・・・引っ張って関節の隙間を広げる
・薬物療法・・・鎮痛剤などの服用
変形性関節症の症状に対する効果的な漢方薬治療と対策
東洋医学では骨や関節、筋肉の痛み、しびれ、腫れなどは、生体エネルギーが消耗している状態(痺証)で起こると言われます。「痺証」の時は気血水の運行が妨げられているので、その原因を取り除く必要があります。
例えば冷えると痛む場合は体を温め、炎症でお血がある時は血行を良くし、腫れやむくみがあれば利水(腫れを引かせる)ような漢方薬を用います。また腎が弱って体が虚の状態になることで起こる腰痛の場合は、腎を補う処方が有効となります。
・疎経活血湯・・・血を補い、血行を良くして「お血」の状態を改善し、気血の通り道を良くする作用があります。体力中等度くらいで冷えがあり、血行不良や水の停滞があるような人に向いています。特に腰から下が冷えると痛むといった症状に効果があります。
・桂枝加朮附湯・・・体内の余分な水分を除き、血行を良くし、体を温めて痛みを和らげる作用があります。冷えと湿気が原因で痛んだり悪化したりする場合に効果的です。体力が低下している人の関節痛などに用いられます。
・八味地黄丸・・・腰痛は腎との関係が深く、腎が弱ると冷えなどの腰痛の原因が体に入りやすくなると言われています。疲れやすく腰や四肢の冷えがある、尿が多いまたは少ないなど排尿障害がある人などに向いています。手足のほてりや口渇があるタイプの人には六味丸を使用します。
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・・・血行を良くして体を温め、冷えによる痛みを和らげます。手足の冷えが強く、血の働きが良くない(血虚)場合に効果的です。