乳腺炎・乳腺症の漢方薬|乳腺炎・乳腺症の原因と症状

乳腺炎とは 乳腺炎の原因・症状・治療

乳腺炎とは乳腺に炎症が起こった状態で、乳房の腫れやしこり・痛み・発熱などの症状がおこります。乳腺炎には以下のような種類がありますが、ほとんどの場合は急性うっ滞性乳腺炎か急性化膿性乳腺炎です。

・急性うっ滞性乳腺炎

授乳期に見られる乳腺炎で、乳汁が乳腺内に溜まって炎症をおこすものです。症状の表れ方は人それぞれですが、主に乳房が赤く腫れる・固くなる・しこりができる・痛み・発熱などの症状が起こります。乳汁が溜まるのは授乳の際に乳汁が十分に排出されないためで、授乳の不慣れや乳児の哺乳力の弱さ、乳管の開きが十分でないことなどが原因となります。出産後2~3日の、特に初産婦に多く見られます。

治療の基本は乳房マッサージと授乳による乳管の開通です。乳汁うっ滞が改善し、乳汁が十分に排出されれば症状は落ち着きます。

・急性化膿性乳腺炎

乳頭や乳輪などにできた傷から細菌感染して炎症を起こすものです。授乳期に関わらず起こる病気ですが、授乳で乳頭に傷ができている時や、急性うっ滞性乳腺炎になっている時は細菌感染しやすいので注意が必要です。主な症状は、乳房の腫れや傷み・しこり・寒気を伴う38~40度の高熱・腋下リンパ節の腫れなどです。悪化すると乳輪の下に膿が溜まり膿瘍に進行するケースもあります。

治療は抗生物質や消炎鎮痛剤の投与、切開や穿刺吸引による膿の排出、乳房マッサージなどの方法がありますが、治療内容によっては授乳の中断が必要になるため、症状や医師の方針・専門性などによっても選択肢が変わってくるようです。

肉芽腫性乳腺炎

自己免疫が原因とされ、乳腺にしこりや膿が溜まる炎症性疾患で、比較的まれな病気です。乳がんとの識別が難しく診断に時間がかかりますが、がんに変化することはありません。炎症を抑えるステロイドなどで、数か月以上かけて治療することが多いです。

乳腺症とは 乳腺症の原因・症状・治療

乳腺症とは、「乳腺に正常とは違う変化が起こった状態」の総称をいいます。「状態」であり、まだ病気とは言えないも多いため、乳腺炎や乳がんといった明らかな疾患は乳腺症には含まれません。

乳腺症は女性ホルモンの影響によって、乳腺に起こる生理的変化と関連があります。例えば月経前に乳房の張りや痛みを感じる変化(いわゆる月経前緊張症)もその一つです。こういった生理的変化が長年積み重なるうちに、乳腺の中に生じた様々な病変をまとめて乳腺炎と呼んでいます。

症状としては痛みやしこり・乳頭からの分泌物などがあり、乳がんの症状にも共通して見られるものが多いです。このため診断は乳がんの検査と同じ手順(問診、視触診、レントゲン・超音波検査、細胞検査等)で行い、乳がんやその他の疾患の可能性がないものが乳腺症と診断されます。

多くの場合は経過観察のみで治療は原則必要ありません。痛みが強い場合は鎮痛剤や、乳腺に作用するホルモンを抑える薬剤を使用することもあります。またストレスや睡眠不足を避け、ホルモンバランスを整えることも症状の緩和に有効と言われています。

乳腺炎に効果的な漢方薬と対策

東洋医学では、乳汁は「血」から作られ「気」によって運行されると考えられます。このため出産時の出血により気血が不足していたり、気血を作る源である脾胃(消化器系)が弱っていることが乳腺炎の原因とするものです。

また産後の育児・家事などで気を張り続け、ストレスで自律神経の働きが乱れることがあります。これは体全体の機能を調節する「肝」の働きが低下し、「気」の流れが滞った状態(気滞)です。この気滞により乳汁の分泌が悪くなり、乳房が張って痛む症状が起こるとされています。

葛根湯・・・風邪の時に使われるものとして有名ですが、他にも様々な使い方ができる漢方薬です。悪寒や発熱・患部の腫れなどがあり、首筋や肩が凝るような状態を目安に使用されます。体にこもった熱を発散させたり炎症を抑える作用があり、急性うっ滞性乳腺炎によく使用されます。また初期の急性化膿性乳腺炎にも効果があるとされています。

小柴胡湯・・・肝の気の通りを良くして、イライラする、みぞおちがつかえる感じがするといった症状を改善する作用がある漢方薬です。また炎症を抑え、脾胃の働きを正常にし、気を補う効果もあります。葛根湯より少し病気が進んだ段階で使用することが多いです。

十味敗毒湯・・・熱を冷まし、腫れや化膿などがある疾患を改善する処方です。ストレスなどで低下した肝の機能を高め、炎症の完治を早める効果があります。使用目標は小柴胡湯と似ていますが、急性化膿性乳腺炎の初期には十味敗毒湯の方が良く効くと言われています。

乳腺症に効果的な漢方薬

乳腺症の原因を漢方では、「気滞(気の流れの滞り)」によるものと考えます。気滞は精神的ストレスによって起こりやすくなり、また気滞から「お血(血の巡りが悪くなった状態)」が引き起こされることで、しこりが発生すると言われています。気の巡りを良くしてストレスによる自律神経の乱れを整え、お血があれば血の巡りを良くする漢方薬を併用すると効果的です。

加味逍遥散・・・自律神経に関係する「肝気」の巡りを良くし、イライラやストレスが蓄積した状態を和らげる作用があります。比較的体力虚弱で精神不安やイライラ・のぼせなどがあるタイプの人の、更年期障害や月経困難などによく使われる漢方薬です。

四物湯・・・血を補い、血の巡りを良くする作用がある漢方薬です。血の不足による全身の栄養不良状態を改善し、生理不順などの婦人科疾患を改善する処方としてよく用いられます。加味逍遥散と併せて乳腺症の治療に用いられることがあります。

桂枝茯苓丸・・・お血を改善する代表的な漢方薬です。乳腺症による乳房痛の症例に対して、およそ8割の患者に有効であったという報告があります。

半夏厚朴湯・・・体内の余分な水もまた乳房のしこりの原因になり得るとされています。神経質なタイプで体内に水の滞りがあり、喉がつかえるような感覚があることなどを使用目標とします。気滞が強い場合は、加味逍遥散などと併用するとより効果的です。

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