目の奥の疲れ
パソコンなど目を使う作業をする人に多い「疲れ目(眼疲労)」や「眼精疲労」の症状の一つとして、目の奥の疲れを感じることがあります。
一時的な症状である「疲れ目」は、十分な休養や睡眠をとることで症状が改善されるものです。
しかし「眼精疲労」になると休養をとっても症状がとれず、目の疲れやそれによって起こる様々な症状が慢性的に続いてしまいます。
目の奥の疲れの原因と症状
眼球の奥には「外眼筋」と呼ばれる眼球を動かす筋肉が6本ついています。これらの筋肉が疲労することで感じるのが目の奥の疲れです。
症状としては、目の奥が重く感じる、目の奥が痛むなど、様々な感じ方があります。目の筋肉が疲労する原因には次のようなものがあり、複数の原因が組み合わさっていることもあります。
・視力の矯正不良
近視・遠視・老眼など目のピント調節がうまくできない原因がある。またはそれらを矯正する眼鏡やコンタクトレンズの度が適切でない。
・パソコンなどの日常的な長時間使用
パソコンを使った仕事等は、近くを見続ける目の筋肉の疲労に、情報を正確に処理する緊張感が加わる負担の大きい作業と言われる。
・眼精疲労を起こしやすい目の病気がある
ドライアイ・緑内障・白内障・斜視など
・目以外の病気が関係するもの
首や肩の凝り(蓄膿症や虫歯・自律神経失調症などで起こるものも含む)、頭痛による目の奥の痛み、ストレスなど
目の奥の疲れの治療
目の奥の疲れを改善するには、まず原因を取り除くことが大切です。
眼鏡やコンタクトレンズを使用している場合は定期的に度数やキズのチェックを行う、パソコン作業時には時々画面以外の距離を見て目のピントを変える・首や肩のストレッチをする・ブルーライトカットの眼鏡を使うなどの対策が効果的です。
目の疲れや肩こりなどを起こしやすい病気があれば適切な治療を受け、ストレスをためないように気を付けます。睡眠を十分にとり、目を休めることも大切です。
目の奥の疲れを感じている時は、蒸しタオルなどで目と目の周りを温めて血行を良くする(充血がある時は避ける)、目の周り・首・肩をマッサージしたりツボを押す(眼球を圧迫しないように注意する)などの方法も有効です。
薬物療法ではビタミン剤の内服や点眼剤、目のピント調節を助ける点眼剤やドライアイ用の人口涙液などがありますが、補助的な効果にとどまることが多いようです。
目の奥の疲れに使われる漢方薬治療と対策
漢方で目の疲れは、目と関わりのある「肝」と、肝の働きを助ける「腎」の機能低下によるものと考えられます。
肝には全身を栄養する血を貯える働きがありますが、目を使い過ぎて肝の血を消耗することで、栄養が不足して目の疲れが起こるようになります。
また肝は自律神経にも関係し、ストレスが続くことで機能低下を起こしやすくなります。
腎は生命の源であり、老化に関係する臓器です。中高年以降の老化による目の疲れは腎の機能低下に関係があるとされています。
漢方薬治療では肝や腎の働きを整えるものや、肩こり・ストレスなど目の疲れの原因となる症状を改善するものなどが効果的と考えられます。
・杞菊地黄丸・・・腎の働きを補う漢方薬「六味丸」に、目の働きを高め、肝と腎を滋養する生薬を加えた処方です。特に中高年以降の、老化による目の疲れやかすみ目などに効果的です。疲れやすく、口の渇きや排尿困難といった水の停滞、ほてりなどがある人に向いています。
・十全大補湯・・・血や活動エネルギーである「気」を補い、弱った体を元気にする作用がある漢方薬です。目の使い過ぎやストレス、月経・出産などで肝の血を消耗したことによる目の疲れに効果的です。これらは比較的若い人に多く見られる目の疲れです。血や気が不足して、冷えや疲労感・髪や肌の乾燥があるような人に向いています。
・柴胡加竜骨牡蛎湯・・・肝の働きを良くして気の巡りを改善し、ストレスによる自律神経の乱れを整える作用があります。比較的体力があって、みぞおち辺りの張り・つかえ感があり、イライラや不安感・不眠などがある人に向いています。体力があまりなく、みぞおち辺りの張りもないような人には桂枝加竜骨牡蛎湯を使用します。
・葛根湯・・・体を温めて発汗を促し、頭痛や首・肩のこり、初期の風邪など様々な症状に効果を発揮する漢方薬です。体力中程度以上で発汗がなく、肩や首の後ろがこるような人に向いています。