膝の痛みの原因
膝関節は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)・前面にある膝蓋骨(いわゆる、膝のお皿)から構成されています。
膝の周りの筋肉や、骨と骨をつなぐ靭帯・腱、関節の中でクッションの役割をする半月板や軟骨、潤滑油である関節液などによって、膝関節は安定を保ち、体重の負荷から守られています。
膝の痛みは、これらの膝関節を構成する組織に障害が起こることで生じます。原因としては、スポーツや外傷(けが)によるもの、加齢や膝への過剰な負担によるもの、病気や他の原因から発生するもの、などがあります。
膝の痛みが起こる病気と治療
スポーツや外傷によるもの
・半月板損傷
半月板が損傷して欠けるなどし、膝の痛みや引っかかるような感じがある・膝に水がたまる・膝を曲げ伸ばしできなくなる(ロッキング)などの症状が現れます。多くは膝に体重がかかった状態で無理にひねったり伸ばしたりすることで起こります。加齢に伴い起こりやすくなります。安静や消炎鎮痛剤の使用・膝の水を抜くなどの保存療法で改善しない場合は、手術で損傷部位の切除や縫合を行うことがあります。
・靭帯損傷
膝に大きな衝撃がかかることで、靭帯が傷ついた状態です。膝の痛みや腫れ・不安定感・動かしにくいなどの症状が起こります。軽度の損傷(捻挫)から重度の靭帯断裂まで損傷の程度は様々です。治療は損傷した部位や重症度により、固定や装具装着による保存療法や手術による靭帯再建などを行います。
・膝蓋腱炎
膝蓋骨と脛骨をつなぐ膝蓋腱が炎症を起こし、膝の下辺りに痛みや腫れが起こるものです。ランニングやジャンプする競技で起こりやすく、「ジャンパー膝」とも呼ばれています。またスポーツをしている成長期の子どもで、骨の不安定さからこのような症状が起こるものを「オスグッド病」と呼びます。治療はストレッチなどリハビリ療法を中心とし、必要ならスポーツは休止します。難治例では手術が検討されることもあります。
加齢や膝への過剰な負担によるもの
・変形性膝関節症
多くは加齢により膝関節の軟骨がすり減ることで起こり、関節が変形して膝の痛み(特に立ち上がりや歩き始めの時)・動かしづらい・膝に水がたまるなどの症状が現れます。中高年の膝の痛みの原因のほとんどを占めると言われています。消炎鎮痛剤の使用や膝関節内へのヒアルロン酸注射、運動療法などで効果が出ない場合は手術を行うこともあります。治療以外にも下半身の筋肉を鍛えるなど予防が非常に大切です。
・膝蓋骨不安定症
加齢や外傷・膝の使い過ぎなどで靭帯がゆるむことで、靭帯で固定されている膝蓋骨が不安定になるものです。膝の不安定感や違和感・膝蓋骨が外れて痛むなどの症状が起こります。膝周りの靭帯や筋肉を強くするトレーニングや、靭帯再建術などの治療を行います。
膝の痛みに使用する漢方薬治療
膝に関わらず痛みの原因を漢方では、気(元気など活動エネルギー)・血(血液とその働き)・水(体液など体に必要な水)などの巡りが良くないためと考えます。気血水の巡りを妨げるのは、冷えや湿気・生活環境や外傷による血行不良などがあります。また老化が原因の膝の痛みには、生命の源である「腎」の機能低下が関係します。
・防已黄耆湯・・・皮膚機能を整えて汗のかき過ぎを抑え、体内の余分な水を利尿し、痛みを緩和する作用があります。色白で筋肉が柔らかい水太りタイプで、汗をかきやすい・足のむくみがあるなど水の停滞が見られる人の、膝の痛みや腫れなどに効果的です。
・越婢加朮湯・・・痛みを抑え、熱を冷まし、体内の余分な水を排出する作用があります。比較的体力があり、むくみや尿量減少など水の停滞がある人の、炎症や熱感があるような膝の痛みに効果的です。
・桂枝加朮附湯・・・体を温めて痛みを抑え、体内の余分な水分を除く作用があります。体力があまりなく冷え性で、寒冷や湿気によって痛みが悪化する人の関節痛や神経痛・頭痛などに効果的です。
・疎経活血湯・・・血を補って血行を良くし、余分な水分を取り除いて痛みやしびれを改善する作用があります。体力中程度で血行不良による冷えやむくみなどがある人の、冷えると悪化する関節痛や神経痛・筋肉痛などに効果的です。
・桂枝茯苓丸・・・血の滞り(お血)を改善する代表的な漢方薬です。外傷によって起った内出血などのお血が原因の膝の痛みに効果的です。比較的体力があり、イライラやのぼせ・頭痛などがある人に向いていますが、お血解消の目的で体質を問わず広く用いられることがあります。
・八味地黄丸・・・腎の働きを補い、体を温め水分の代謝を良くし、体を滋養する作用があります。体力がなくて疲れやすく冷えがあり、頻尿や尿量減少・足腰が弱って痛みやしびれがあるなど下半身の症状がある人に向いています。むくみやしびれなど、水の停滞の症状が強い場合は牛車腎気丸を用います。