■口臭
虫歯や歯周病がある人、食事後に歯を磨いていない人の口内は、細菌が繁殖し不衛生な状態にあるため口臭が発生します。
このような場合は「病気を治療する」、「歯をしっかり磨く」ことですぐに解決しますが、口内を清潔に保っていても口臭が気になる場合は、唾液の分泌量の低下、胃腸の不調や病気などの原因が考えられます。
漢方は口臭の原因をしっかり把握しアプローチすることで、口臭の改善を目指します。
【口臭におすすめの漢方薬】
『茯苓飲』 ◇ゲップや胃のもたれがある人に‐
茯苓飲は身体の中に水が滞り機能が低下して、胃酸が逆流したり、吐き気やゲップ、胸やけなどがあらわれる人の口臭に適しています。
鏡で舌を見てみてください。舌には白く厚い苔がついていることが多く、「口がネバつく」、「胃がポチャポチャする」、「食欲はあるのに、胸がつまって食べられない」などを症状を自覚する人が多いです。
構成生薬の茯苓や朮は、胃の中に滞る余分な水を捌き、陳皮や枳実が胃に滞った気を巡らし充満したガスを消します。またこの薬には独特の苦みがあり、「気」と「水」をスーっと下へ押し下げ、胃の不快感を改善してくれます。
なお、「気」のパワーが減少している「気虚」があり、身体が冷えている「寒証」タイプの人の薬ですが、著しく体力の無い人には向いていません。服用時にむかつきや食欲低下がある場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
『黄連解毒湯』 ◇高血圧でイライラやのぼせがある人に‐
黄連解毒湯は、熱が身体の中にこもり、「気」が頭へ逆上したために、のぼせや顔のほてりがあり、何かとイライラすることが多い人の口臭に適しています。
漢方では実熱実火という状態で、火や熱を象徴するような、炎症、熱感、充血、興奮などが身体にあらわれます。もちろん胃もそのひとつです。胃に熱がたまる「胃熱」は過食、暴飲暴食でフル稼働した胃が熱を帯びてしまっている状態で、舌には黄色い苔がべっとりつき、口臭の原因のひとつになります。
4つの構成生薬は基本すべて冷やす作用があり、身体の中の余分な熱や水分を取り去ることで症状を改善します。また炎症を抑える作用もあるため、口内炎や、アトピー性皮膚炎等にも用いられることが多い薬です。
体力のない虚証タイプ、身体が冷えていて便秘がある人、身体の水が不足している「陰虚」のタイプにはおすすめできません。副作用として、肝機能障害、間質性肺炎、黄疸などが記載されているため、服用前に専門家に相談してください。
『麦門冬湯』 ◇口が乾きやすく、ネバつく人に‐
麦門冬湯は胃腸障害も少なく、使いやすい漢方薬でドラッグストアで見かける機会が多くなりました。
身体を潤す力が低下している「陰虚」タイプの口臭に適しています。口の中が乾燥すると、口内の細菌が増えるため口臭の原因となります。
舌は乾燥しているため、ひび割れがあり、先端が赤く変色していることがあります。また殺菌作用のある唾液の分泌低下は、交感神経の関係でも起こります。緊張やストレスが強い人の口臭については、麦門冬湯が有効な場合もありますが、精神的な症状を漢方で改善していき、交感神経の高まりを抑えることで口臭を改善することが好ましいこともあります。
構成生薬の麦門冬は、身体や口内の潤いを補うとともに、潤いが少ないことで火照ってしまった熱を冷まします。また、粳米には潤いを補う作用のほか、気を補う作用もあるため、水の巡りをよくします。ドライアイの他、乾燥したタイプの咳や気管支炎、痰が切れにくいなど呼吸器の症状に使われることの多い漢方薬です。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として肝機能障害や間質性肺炎などが記載されているため、服用前に専門家に相談することをおすすめします。