- 症状の特徴
低血圧は、起立性低血圧と本態性低血圧に大きく分けられます。
起立性低血圧とは、急に立ち上がった時に、収縮期血圧が20mmHg、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する場合をいいます。体内を循環する血液量が減少するとおこりやすくなります。
原因として、出血、下痢、多尿、大量の発汗や、降圧剤や向精神薬、抗パーキンソン病薬の服用などが考えられます。
本態性低血圧とは、血圧が100/60mmHg未満で、めまい、疲労感などの症状があり、原因がわからないものとして考えられています。
低血圧は高血圧に比べて、生命の危険が少ないものとして考えられているため、積極的に治療の必要はないとされています。
- 西洋医学の治療
日常生活の改善指導を行い、必要に応じて、選択的α1受容体作動薬のメトリジンや間接的交感神経刺激薬のリズミックを用いて、血圧を上げる治療をします。
- 漢方医学の治療
漢方では、直接血圧を上げる治療はせず、体質の改善を目的とします。低血圧には、虚証や陰証の人が多いため、体力をつけたり、血行を改善する漢方薬を用います。
また、低血圧の原因は、水毒と呼ばれる水の代謝障害や瘀血と呼ばれる血液の循環障害が考えられるので、利水作用のある漢方薬や血をめぐる作用のある漢方薬が用いられます。
- 低血圧に対して用いられる主な漢方処方
以下に症状別に用いられる漢方処方を挙げます。
体力のない人
- やせている、顔色が悪い、冷え性、食欲不振→十全大補湯
- 手足や腰の冷え、倦怠感、めまい、動悸→真武湯
- 貧血、更年期障害、月経異常、冷え性、めまい→当帰芍薬散
- 胃腸虚弱、顔色が悪い、冷え性、食欲不振、貧血、下痢→人参湯
- 疲労感、倦怠感、冷え性、しびれ、尿量異常→八味地黄丸
- 胃腸虚弱、頭痛、動悸、悪寒、疲労感、倦怠感→補中益気湯
- 消化機能の衰弱、食欲不振、冷え性、倦怠感→六君子湯
- 自律神経失調症、息切れ、めまい、頭重感→苓桂朮甘湯
- ライフスタイルで注意すること
過労、ストレス、睡眠不足が続くとめまいが起こりやすい状態となります。食生活においても、冷たいものや刺激物を過剰に摂取しないように気をつける必要があります。
参考文献
・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)