■歯周病の原因
歯周病の原因は、歯に付着する歯垢(プラーク)です。歯肉が歯垢を形成する細菌に感染することで歯周病になります。
歯と歯肉の間に付着し停滞した食べカスが歯垢形成の要因であるため、日ごろ歯磨き等、口腔内ケアをしっかり行うことが最も重要であることは言うまでもありません。
その上で、歯周病によって起こる炎症や痛みを改善する目的で漢方薬が使用されることがあります。また歯周病の可能性がある場合は自己判断で漢方薬を使用せず、必ず歯科医を受診して適切な診断と治療を受けるようにしてください。
歯周病の漢方薬
『排膿散及湯』 ◇腫れ・痛みを伴うときに‐
排膿散及湯は、3世紀はじめに書かれたとされる医学書「金匱要略」に記載されている排膿湯と排膿散を合方した日本独自の漢方薬で、体力や体質は問わず使用できます。
歯周病の痛みや腫れのほか、にきびや痔瘻、副鼻腔炎など、皮膚や粘膜の化膿や炎症、痛みを改善します。構成生薬の枳実と桔梗には化膿した患部の膿を排出する作用があり、また枳実と芍薬の組み合わせが気を巡らせて血の流れをよくします。
排膿散及湯という名前でドラッグストアの店頭に並ぶことはないようですが、同じ生薬構成で販売名を変え、商品を発売している製薬会社もあるので、店頭の薬剤師や登録販売者に相談するとよいでしょう。
また、多くの漢方薬に含まれる生薬といえば「甘草」ですが、排膿散及湯には特に甘草が多く含まれているため、アルドスロン症やミオパチーのある人、低カリウム血症の人は使用禁止とされています。また、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。
『黄連解毒湯』 ◇暴飲暴食で胃腸がオーバーヒートしている人に‐
黄連解毒湯は、胃に熱がたまる「胃熱」タイプの歯周病に適しています。胃熱とは、過食や暴飲暴食でフル稼働した胃が熱を帯びてしまっている状態です。そしてその胃熱が、気の逆上とともに頭の方へ上がることで、口腔内の環境がより悪化し、歯肉の炎症や歯痛などの症状を引き起こすきっかけとなります。
黄連解毒湯の4つの構成生薬は、基本すべて冷やす作用があり、身体の中の余分な熱や水分を取り去ることで症状を改善していきます。また炎症を抑える作用もあるため、歯周病はじめ、口内炎やアトピー性皮膚炎等にも用いられることが多い薬です。
体力のない虚証タイプ、身体が冷えていて便秘がある人、身体の水が不足している「陰虚」のタイプにはおすすめできません。副作用として、肝機能障害、間質性肺炎、黄疸などが記載されているため、服用前に専門家に相談してください。
『補中益気湯』 ◇歯周病が慢性化して治りづらい人に‐
外出から帰宅すると、疲れてすぐに横になりたくなるような事が普段からあり、胃腸の調子もすぐれない。すぐに喉が痛くなったり熱が出るような虚弱タイプの人の免疫力アップに補中益気湯が適しています。
外部から侵入したウイルスや細菌は、身体の免疫細胞によって敵と見なされれば体内から排除されます。これを自己免疫と言いますが、歯周病が治りづらいのは、この免疫力が低下しているためだと考えられます。補中益気湯には、免疫細胞を活性化させる作用があることが研究で明らかになっており、このように西洋医学側の視点からも漢方薬の実力を知る機会が増えています。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、間質性肺炎や肝機能障害が記載されています。