ジストニアに対する鍼灸治療:最新のエビデンス

ジストニアは、本人の意思とは関係なく筋肉が収縮し続けてしまう神経の運動障害です。その結果、体の一部がねじれたり、勝手に繰り返し動いてしまったり、不自然な姿勢をとってしまう状態です。

例えば、首の筋肉に起こる痙性斜頸(けいせいしゃけい)では頭が一方向に傾いて戻せなくなり、目の周りの筋肉に起こる眼瞼けいれんではまぶたが自分の意志に反して閉じてしまいます。こうした不随意な(意思に反し勝手に起こる)運動により、日常生活に大きな支障をきたします​

筋肉が常に緊張しているため痛みを伴うことも多く、症状が長期化するとストレスや不安・抑うつなど心理的な負担も大きくなります​

実際、日本では約2万人がジストニアに苦しんでいると推定されています​。ジストニアの原因は完全には解明されていませんが、脳の奥深くにある大脳基底核と呼ばれる運動の調整を行う部位の機能異常が関与していると考えられています​

大脳基底核からの信号が過剰に出たり乱れたりすることで、本来動かす必要のない筋肉まで収縮してしまい、意図しない動きや姿勢を引き起こすのです​

多くのケースでは明確な原因が特定できない特発性(一次性)ジストニアですが、遺伝的な要因が見つかるものや、脳卒中・外傷による脳の損傷や抗精神病薬などの薬剤副作用によって生じる二次性ジストニアもあります。

ジストニア(局所性ジストニアおよび全身性ジストニア)は、筋肉の不随意収縮により異常な姿勢や運動を引き起こす運動障害です。根本的な治療法が確立しておらず、ボツリヌス毒素注射や経口薬、外科的治療(脳深部刺激術など)が一般的な治療法ですが、十分な効果が得られなかったり副作用の問題もあります​。​

このため、患者の中には鍼灸などの補完代替医療に頼るケースも多く、鍼灸治療の有効性に関心が集まっています​

ここでは、ジストニアに対する鍼灸治療の最新エビデンス(システマティックレビュー、メタアナリシス、RCTなど)から、その効果、作用機序、副作用、他治療との比較についてまとめます。

目次

ジストニアに対する鍼灸のシステマティックレビュー・メタアナリシスからの知見

ジストニアそのものを対象とした鍼灸治療のシステマティックレビューやメタアナリシスは限られています。しかし、脳性麻痺児におけるジストニア(痙性を含む筋緊張異常)に対する研究があります。2023年に発表されたメタアナリシスでは、脳性麻痺児のジストニアに対する鍼灸とリハビリの併用療法を評価しました​​

この解析には15件のRCTが含まれ、通常のリハビリ治療のみを受けた対照群と、鍼灸+通常リハビリを受けた治療群を比較しています。結果は以下のとおりです​

  • 筋緊張の改善:改良Ashworthスケール(筋緊張評価)で、鍼灸併用群のほうが有意に良好でした(スコア差 -0.52, 95%信頼区間 -0.62~-0.41, p<0.01)。筋電図による筋緊張評価でも、鍼灸併用群で有意な筋緊張低下が認められています​。
  • 全体的な有効率:治療効果の「有効率」は、対照群74.2%に対し鍼灸併用群91.5%と高く、オッズ比3.70で有意差がありました(95%信頼区間 2.02–6.78, p<0.01)。
  • 結論:著者らは「鍼灸をリハビリ訓練に併用することで、筋緊張異常の改善と治療効果の向上が期待できる」と結論づけています​。ただし、解析では出版バイアスの存在も示唆されており(ファンネルプロットに偏りが認められた)、結果を解釈する際には留意が必要です。

このように、二次性ジストニア(脳性麻痺によるジストニア)では複数のRCTを統合したエビデンスがあり、鍼灸併用が筋緊張緩和に寄与する可能性が示されています。しかし、一次性(特発性)のジストニア(例えば成人の頚部ジストニア等)に焦点を当てた大規模なメタアナリシスは現時点で見当たりません。全身性ジストニアを直接対象とした高品質のレビュー研究は不足しており、この分野のエビデンスは今後さらなる蓄積が必要です。

ランダム化比較試験(RCT)および臨床研究のエビデンス

一次性ジストニア(特に局所性ジストニア)に対する鍼灸のエビデンスは、小規模な試験やケースシリーズが中心です。主な研究結果を以下にまとめます。

  • 頚部ジストニアへの鍼灸(パイロット研究)2018年に米国の研究グループが行った小規模試験では、慢性の頚部ジストニア患者5名に対し、ボツリヌス毒素療法に鍼灸治療を追加するオープンラベル試験が実施されました​。3ヶ月間のボツリヌス毒素注射間隔に、計6回の鍼治療を併用したところ、5名全員が主観的な症状の改善を報告しました。具体的には、疼痛のビジュアルアナログスケール(VAS)の低下や、患者・臨床医によるグローバルな改善評価で鍼灸による症状緩和が示唆されています。副次的な所見として、頚部ジストニアの重症度スコア(TWSTRS)や生活の質(SF-36)にも改善傾向がみられました。サンプル数も限られるため、エビデンスレベルは高くないものの「鍼灸は慢性の頚部ジストニアに対する補助療法として実行可能かつ安全であり、主観的な症状緩和に寄与する可能性がある」と結論しています​。
  • 頚部ジストニアの鍼灸+ボツリヌス療法 vs ボツリヌス単独:上記パイロット研究を発展させ、米国で鍼灸併用群と非併用群の比較を行った研究も報告されています。鍼灸併用により全員が何らかの改善(特に疼痛軽減)を自覚し、多くの患者が試験終了後も鍼治療を継続希望しました​。しかし、ジストニア重症度の客観的評価スコアには有意差が認められず、運動症状自体の明確な改善は示せませんず、「患者報告では有益だが、客観的には有意差がなかった。安全で忍容性は高かったため、疼痛緩和などに寄与する可能性を検証するためより大規模なRCTが望まれる」とコメントしています。
  • 発声障害ジストニア(痙攣性発声障害)への鍼灸:痙攣性発声障害は喉の局所ジストニア(声帯ジストニア)ですが、これに対する鍼灸の小規模試験もあります。2003年の予備的研究では、内転型痙攣性発声障害患者10名に8回の鍼治療を行い、治療前後で音声機能を評価しました​。結果、患者の自己評価(音声ハンディキャップ指数VHI)では有意な改善がみられ、平均スコアが17ポイント改善しました​。10人中7人が「発声が改善した」と回答しています。しかし、音声の専門家による客観的な音質評価では明確な変化が検出されず、主観的改善と客観的評価の間に差異が認められました。この乖離は頚部ジストニアの研究と同様であり、鍼灸が患者の症状認識やQOLには影響を与えるものの、外見上のジストニア症状への影響は限定的である可能性もあります。
  • 全身性ジストニアへの症例報告:一次性の全身性ジストニアに対するエビデンスは極めて限られ、主に症例報告レベルです。例えば、26歳男性の特発性全身性ジストニアに対する症例報告では、3ヶ月間の集中的な鍼治療を行ったケースでは、四肢のミオクローヌス(素早い筋収縮による不随意運動)の頻度が大幅に減少し、ADLの改善が報告されています。また別の報告では、重度の頚部ジストニアと不安・抑うつを合併した37歳女性が、外科手術やボツリヌス注射を拒否したため鍼灸治療のみで対応し、2クールの治療後に頭位の正常化と精神症状の改善を得られたとされています​。この症例では治療者が工夫として患側の筋に強刺激、健側に弱刺激の鍼を行い、筋緊張の抑制と精神安定を図ったと述べられていま。結果的に「ジストニア症状が治癒した」とまで記載されていますが、これはあくまで一例であり再現性の検証が必要です。著者らもエビデンスに基づく大規模研究の必要性を強調しています​。

以上のように、局所性ジストニアでは小規模研究で鍼灸による主観的症状の改善(疼痛やQOL向上など)の報告が複数みられますが、ランダム化比較試験による明確な有効性の証拠は不足しています。特に運動症状そのもの(異常収縮やねじれ運動)の改善効果についてはさらなる検証が必要です。一方、痛みや精神的ストレスの軽減といった側面では一定の有用性が示唆されています。

鍼灸治療の作用機序

ジストニアに対する鍼灸の作用機序は完全には解明されていませんが、いくつかの仮説や関連研究があります。鍼灸は東洋医学的には経絡・気血の調整によって筋肉の痙攣を鎮め、心身を安定させると考えられています​。実際の生理学的なメカニズムとして、以下のような可能性が指摘されています。

  • 中枢神経系への作用:ジストニアは大脳基底核の機能異常が関与すると考えられますが、鍼刺激は脳内の神経回路に影響を及ぼし、運動調節系を修飾する可能性があります。パーキンソン病モデルでの研究ですが、鍼通電刺激が基底核の神経回路の興奮性を調整し、過剰なGABA作動性活動を抑制することで運動症状を改善したとの報告があります​。このように、鍼は脳内で神経伝達物質(ドーパミン、GABAなど)や脳回路の可塑性に影響しうるため、ジストニアにおいても異常な運動興奮を鎮静化する効果があるのではないかと推測されます。
  • 末梢神経・筋への作用:鍼刺激そのものが筋紡錘や神経に働きかけ、筋緊張を調節する可能性があります。例えば頚部ジストニアの症例では、患側の筋に強い鍼刺激を与えることで脊髄レベルで抑制性の反射を誘発し筋緊張を低下させた一方、健側には弱い刺激で筋力低下を防ぐよう配慮したと報告されています​。この強刺激による「鎮静効果」は臨床的にも経験則的に言われており、筋肉の過剰興奮を直接緩和するメカニズムと考えられます。また、鍼刺激により局所の血流改善や筋の拘縮解消(いわゆる“こり”の緩和)も期待できます。
  • 疼痛・ストレスの軽減:ジストニア患者の多くは筋痛や不快感を伴い、さらに慢性的なストレスや不安が症状を悪化させる悪循環があります。鍼灸には鎮痛効果(内因性オピオイドや下行性痛覚抑制系の活性化)や自律神経調節効果があり、痛みの軽減やリラクゼーションによるストレス緩和につながります​。実際、先述の研究でも鍼灸により痛みの軽減や不安・抑うつ状態の改善が報告されています​。精神的緊張の緩和は二次的に筋緊張の低下にも寄与し、症状全体の緩和につながる可能性があります。

これらの作用機序は現時点では仮説段階であり、ジストニアに特化した基礎研究は十分ではありません。今後、鍼灸が脳のどの部位や神経伝達に作用してジストニア症状を改善するのか、神経科学的な解明が期待されます​

安全性と副作用

鍼灸治療の安全性は比較的高いとされています。ジストニア患者を対象とした研究でも重篤な有害事象の報告はなく、軽微な副作用(一過性の軽度の皮下出血(あざ)や一過性の不快感)が生じた程度で、いずれも自然軽快しました​

一般的に鍼治療の副作用として考えられるものは以下のようなものです。

  • 局所的な反応:針を刺入した部位の軽い痛み、出血、皮下出血(内出血によるあざ)など。​
  • 稀な合併症:極めて稀ですが、不適切な部位への刺鍼により感染症(針の消毒不備による)や神経・臓器損傷(肺近傍での気胸など)のリスクが指摘されます。ただし実際にはこうした重篤な合併症はほとんど報告されていません。

鍼灸の安全性は高いとはいえ、施術者の技量や衛生管理が重要です。副作用を最小限にするため経験豊富な施術者による治療を受けることが推奨されます。また、ジストニア患者では頚部などデリケートな部位に施術するケースが多いため、解剖学的知識に基づいた慎重な刺鍼が必要です。ですが、安全性という点に関して言えば、総じて、鍼灸はボツリヌス毒素や経口薬と比べても全身的な副作用が少ない治療法と言えます​

ボツリヌス療法では嚥下困難や筋力低下、抗体産生による効果減弱等の副作用があり​、経口薬も抗コリン薬による口渇などが問題となりえます​が、それらと比較すると、鍼灸は副作用プロファイルの面で有利であり、患者の身体的負担は小さいと考えられます。そのため、通常の治療に低リスクで追加できる有益な方法となりえるといえます。

他治療法との比較(ボツリヌス毒素、薬物療法など)

ジストニア治療において主流となっているボツリヌス毒素療法薬物療法と、鍼灸治療を比較すると、それぞれ長所と限界があります。

  • ボツリヌス毒素注射との比較:ボツリヌス毒素A型製剤(BoNT-A)は、局所性ジストニア(特に頚部ジストニアや眼瞼けいれんなど)の第一選択治療です。筋肉への直接注射により過剰収縮を起こしている筋を選択的に弛緩させ、60〜90%の患者で有意な症状軽減が得られます。しかし効果は一時的で通常3ヶ月程度しか持続しないため反復注射が必要です。また、繰り返すうちに抗体が産生され効果が減弱する場合があります。一方、鍼灸は上述のように痛みや不快感の軽減には役立つ可能性がありますが、ボツリヌス毒素ほど直接的に筋収縮を止める強力な作用は証明されていません​。現時点のエビデンスでは、鍼灸単独でボツリヌス注射に匹敵する運動症状の改善を示したとは言えず、むしろ補完的役割と捉えるのが妥当です​。実際に、ボツリヌス治療を受けつつ鍼灸を併用している患者も多く、その併用で疼痛管理やQOL向上を図るケースがあります。
  • 薬物療法との比較:ジストニア全身型では抗コリン薬(トリヘキシフェニジルなど)や筋弛緩薬、ベンゾジアゼピン系、ドーパミン作動薬(反応がある場合)などの全身薬物療法が用いられます。これらは特に若年発症の全身性ジストニアで一定の有効性を示すことがありますが、効果には個人差が大きいとされています。
  • その他の治療(理学療法や外科治療)との関係:理学療法(リハビリテーション)もジストニア管理に有用で、ストレッチや筋力トレーニング、感覚トリック訓練などが症状改善に寄与します。鍼灸は理学療法と組み合わせて相乗効果を狙うことも可能です。実際、前述のメタアナリシスではリハビリとの併用効果が検証され高い有効率が示されました​。外科的治療としては脳深部刺激療法(DBS)が全身性ジストニアで劇的な効果を示すことがありますが、侵襲的手技でありコストも伴います。

以上をまとめると、鍼灸治療はジストニアに対して単独で標準治療を凌駕するエビデンスはないものの、痛みや生活の質の改善など補助的メリットがあると考えられます。専門医も「西洋医学的治療に代わるのではなく統合医療として併用すべき」との姿勢を示しており​希望や症状に応じて鍼灸を含む包括的アプローチを検討することが推奨されています。

結論

ジストニア(局所性・全身性)に対する鍼灸治療のエビデンスを総合すると、一定の有効性が示唆されるものの、エビデンスレベルは全体として高くないというのが現状です。システマティックレビューやメタアナリシスでは、脳性麻痺児のジストニアにおいて鍼灸併用が筋緊張の改善に有効との結果が報告されています​

一方、一次性ジストニア(特に成人の局所ジストニア)に関しては、小規模RCTや症例報告で疼痛緩和や主観的症状の改善がみられるものの​、運動症状そのものへの客観的効果はまだ明確に証明されていません​。鍼灸は副作用が少なく安全であり​、不安・抑うつの軽減やQOL向上など患者にもたらす付加的な利点があるため、ボツリヌス療法や薬物療法の補完療法として位置づけるのが適切です​。

実際に多くの患者が標準治療と併用して鍼灸等の補完療法を利用している現状も報告されています​

作用機序については、鍼灸が中枢の神経回路を調整して筋の過剰興奮を抑制しうることや​、鎮痛・リラクゼーション効果によって症状の二次的悪化要因を軽減することが考えられます​

結論として、鍼灸治療はジストニア患者に対し安全に試みる価値のある補助療法であり、特に痛みの軽減や精神的ストレスの緩和による生活の質改善が期待できます。高品質なRCTや長期的な比較試験はまだ不足しているため、現時点では標準治療に取って代わる「第一選択」とする根拠は十分ではありません。しかし、症状や患者ニーズによっては統合医療の一環として鍼灸を取り入れることが有益な場合もあります。今後、より大規模な臨床試験やメカニズム研究が蓄積され、鍼灸の位置づけがさらに明確になればと思います。今後の研究に期待します。

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鍼灸を検討されている患者様へ

ジストニアは本人の意思に反して筋肉が収縮してしまうつらい病気ですが、現在ではボトックス注射をはじめ様々な治療法によって症状のコントロールが試みられています。それでもなお十分に改善しない痛みや不調に対し、鍼灸治療は東洋医学の観点からアプローチする魅力的な選択肢となり得ます。最新のエビデンスからは、鍼灸によって痛みが軽減したり症状が和らいだと感じる患者さんがいる一方、客観的な改善効果はまだはっきり示されていないことがわかりました。​

しかし、痛みやストレスの緩和、全身の調整といった鍼灸のメリットは、ジストニア患者さんのQOL向上に役立つ可能性があります。副作用も少なく安全に試せる点は大きな利点です。

大切なのは、ジストニア治療において「引き出しを増やす」ことです。ボトックスや薬物療法だけでなく、リハビリテーションや鍼灸、生活習慣の工夫など、使える手段はできるだけ組み合わせて総合的に対処していく姿勢が望まれます​

一人ひとり症状も反応も異なるジストニアだからこそ、自分に合った治療の組み合わせを見つけることが重要です。もし鍼灸に興味がある場合は、主治医に相談の上、経験豊富な鍼灸師のもとで施術を受けてみるとよいでしょう。鍼灸治療は即効性のある「特効薬」ではありませんが、続けることでじわじわと効果が積み重なり、つらい症状を和らげる一助となるかもしれません。現代医学と伝統医学のいいとこ取りをしながら、ジストニアと上手に付き合っていきましょう。

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