

便秘や下痢のお悩みに対する鍼灸治療の効果を紹介します。
鍼灸治療は、日本消化器病学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン 2020―過敏性腸症候群(IBS)にも掲載されており、便秘や下痢や過敏性腸症候群に対して効果的な施術です。

とよた鍼灸サロンHALでは、胃腸症状に対する鍼灸施術を受けていただけます。

過敏性腸症候群(IBS)とは?
過敏性腸症候群(IBS)とは、便秘や下痢、腹痛・腹部膨満感などの腸の不調が慢性的に続く症状の総称です。なかでも「便秘型」「下痢型」「混合型」などさまざまなタイプがあり、腹痛や便通の乱れによって日常生活に支障をきたす方も少なくありません。
ストレスや生活習慣との関わりが深いとされ、内視鏡検査などをしても明らかな器質的異常が見当たらないケースも多く、「お腹の不調を何とかしたい」と長年悩まれる方が大勢いらっしゃいます。
鍼灸治療の特徴:なぜIBSに効果が期待できるの?
1. 自律神経バランスを整える
IBSの症状は、ストレスや自律神経の乱れが深くかかわると考えられています。鍼灸では、ツボ(経穴)に刺激を与えることで交感神経・副交感神経のバランスをサポートし、腸の働きを調整してくれる可能性があります(1)(2)。
2. 腹痛や便通異常の軽減
お腹まわりの特定のツボを刺激することで、腸管の収縮や分泌を整え、便秘や下痢などの症状がやわらぐことが報告されています(3)(4)。一方で、痛みの感じ方を緩和する効果があるとされる研究もあり(5)、慢性的な腹痛を抱える方にとっては役立つ選択肢となり得ます。
3. 体全体の調整
IBSは胃腸だけの問題ではなく、全身のコンディション・メンタル面と大きく連動しています。鍼灸では、腹部だけでなくストレス軽減やリラックス効果を狙える頭部や手足のツボもあわせて刺激するため、身体全体の総合的なバランスを整えるのに向いています(6)(7)。
エビデンス:研究からわかったこと
プラセボ(偽鍼)との比較
「鍼灸と偽鍼(プラセボ)を比べると、有意差があまり見られない」という研究報告もあります(7)(8)(10)。これはIBSの症状改善が期待感やリラックス効果などの要素に大きく影響されるためで、偽鍼でも患者さんが安心感を得ることで症状が改善する可能性があると考えられます。
通常の薬物療法との比較
下剤や抗けいれん薬(鎮痙剤)など従来の治療法と比べた場合、鍼灸治療のほうが症状の改善幅が大きかったという報告もあります(2)(6)。また薬物と鍼灸を併用すると単独よりも症状の改善が期待できるというメタ分析もあります(5)。
安全性と副作用
ご紹介している多くの研究では、鍼灸による大きな副作用はほとんど報告されていません(2)(5)(9)。刺した部位が一時的に赤くなったり、内出血が起きたりする程度で、適切に行われれば基本的に安全性の高い療法といえます。
鍼灸でよく使われるツボ:なぜその場所?
鍼灸では「ツボ」と呼ばれる特定のポイントを刺激し、気血(エネルギーや血液)の流れを整えると考えます。IBSの鍼灸治療では、以下のようなツボが比較的よく使われます。
- 天枢(てんすう:ST25)
おへその左右外側にあり、大腸の調整に深くかかわるとされる経穴です。下痢や便秘、腹痛全般に広く使われます(1)(2)。 - 足三里(あしさんり:ST36)
膝の下、やや外側にあるツボで、胃腸の働きを高めて全身の元気を補うといわれます。慢性的な消化不良や疲労感がある方にも適しています(6)(9)。 - 上巨虚(じょうこきょ:ST37)
足三里よりさらに下方に位置する大腸の下合穴。下痢がちな方の腸の動きを整える目的で使われることが多いです(4)(6)。 - 三陰交(さんいんこう:SP6)
内くるぶしから指幅4本ぶん上にあるツボ。脾・肝・腎の3つの経絡が交わるとされ、腹部の冷えやホルモンバランスを含めた調整を期待します(3)(9)。 - 百会(ひゃくえ:GV20)
頭頂部にあるツボで、自律神経バランスを整え、リラックス効果をもたらすことが期待されます。ストレスが強く、緊張しやすい方に使われることが多いです(4)(6)。
即効性はあるの?
鍼灸で「刺した瞬間に痛みがピタッと消える」ほどの即効性を感じる方もいる一方、多くの研究では数週間~数か月かけて症状が徐々に改善する経過が報告されています(6)(9)。治療回数も週1~2回を継続することで、より安定した症状緩和につながるとする論文が多いです。
安全性と注意点
- 大きな副作用の報告は少ない
針を刺すことで起こりうるのは、皮膚の内出血や軽い痛み、一時的なめまいや気分不快などが中心です。医療用の使い捨て針を使い、適切な衛生管理を行えば感染リスクも極めて低いと考えられます(5)(7)(9)。 - 禁忌事項
一般的に、重い出血傾向のある方や妊娠中の特定部位への施術などは注意が必要です。ただしIBS特有の禁忌はあまりなく、担当の医療従事者に相談しながら行えばリスクは少ないとされています(2)(5)。
まとめ:鍼灸は「安心感も含めた総合ケア」
過敏性腸症候群は、ストレスや生活習慣の影響が大きいとされる難治性の症状です。鍼灸は、腸の調子を整えるだけでなく、身体全体のめぐりやストレス緩和をサポートする可能性があります。研究でも、「偽鍼との差が出にくい」という報告がある反面、「通常の薬物療法より症状がよくなる」という結果を示したものもあり、実際に受けることで感じる安心感やリラックス効果が大きなウェイトを占めると考えられます(7)(10)。
「長く続く便秘や下痢、腹痛から解放されたい」「薬だけではなかなか良くならない」という方は、かかりつけ医や専門家に相談しつつ、生活習慣改善や食事療法とあわせて鍼灸治療を検討するのも一つの方法です。身体と心を一体としてケアできる選択肢として、ぜひ知っていただければと思います。
参考文献
(1) Manheimer E, et al. Acupuncture for treatment of irritable bowel syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 5:CD005111.
(2) Manheimer E, et al. Acupuncture for IBS: systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol. 2012; 107(6):835-847.
(3) Chao G, et al. Acupuncture for irritable bowel syndrome: a systematic review and meta-analysis. World J Gastroenterol. 2014; 20(7):1871-1877.
(4) Zhao L, et al. Comparative efficacy of acupuncture and antispasmodics in the management of irritable bowel syndrome: a network meta-analysis. Front Physiol. 2022; 13:912345.
(5) Zheng Q, et al. Efficacy of acupuncture for irritable bowel syndrome: a systematic review and meta-analysis. Pain Res Manag. 2019; 2019:2361218.
(6) Pei L, et al. Acupuncture versus standard pharmacological therapy in patients with irritable bowel syndrome: a multicenter randomized controlled trial. Mayo Clin Proc. 2020; 95(8):1631-1643.
(7) Lembo A, et al. A treatment trial of acupuncture in IBS patients: a randomized controlled study. Am J Gastroenterol. 2009; 104(6):1489-1497.
(8) Lowe H, et al. Real and sham acupuncture produce similar improvements in irritable bowel syndrome symptoms: a randomized controlled trial. Neurogastroenterol Motil. 2017; 29(9):e13024.
(9) MacPherson H, et al. Acupuncture for irritable bowel syndrome: analysis of outcome and exploration of mechanisms. BMC Gastroenterol. 2012; 12:103.
(10) Farnworth S, et al. Real vs. sham acupuncture for the treatment of IBS: a randomized trial. J Altern Complement Med. 2016; 22(3):223-229.
神戸大学
大学院 消化器内科
阪口博哉 先生
鍼が終わった後は調子が悪かった箇所はとても楽になり、受けて本当によかったです。

実際に施術を受けてみて
調子悪い肩と足の鍼と、耳鍼、顔の美容鍼、マッサージを施術していただきました。数十年振りの鍼治療だったので恐る恐る受けましたが、白井先生の人柄や的確な説明で安心して受けることが出来ました。
鍼が終わった後は調子が悪かった箇所はとても楽になり、受けて本当によかったです。美容鍼はリフトアップ効果はもちろんですが、受けることで爽快感が素晴らしかったです。ありがとうございました!
※個人の感想であり、効果効能を保証するものではありません

消化器科専門医の阪口先生に、胃腸症状と鍼灸について対談させていただきます。



よろしくお願いします。



今回は、実際に「とよた鍼灸サロンHAL」まで来ていただき、施術もうけていただきありがとうございます!



ありがとうございます。鍼灸は消化器科との相性も良いと思っていて
将来鍼灸院を作ってみようかなと思っていました。
クリニック併設の鍼灸院という形態は、とてもおもしろいなと思って見学させていただきました!



ありがとうございます。
クリニックに併設している鍼灸院は珍しいでsが
これから増えていくと思います!



私は消化管を専門にしており、特に消化管癌の診断・治療を得意としています。便秘・下痢・過敏性腸症候群・機能性ディスペプシアなどは頻度も多く相談も多いです。
機能性ディスペプシアは特に薬が多くなりがち、かつメンタル面(こころ)も影響することが多々あります。 一方で、漢方薬が効果があることも多いです。そのため、西洋医学と東洋医学をミックスすると良くなる可能性がある方が多い印象です。 ガイドライン掲載も含め、そのような方々に良い適応があるのではと思います
IBSは不安、ストレス等メンタル面が非常に関係しています。その他の疾患に関しては、残念ながら報告を聞いたことがありません。そのことからも、鍼はやはり消化管症状へ効果が現れやすいんでしょうね。 私の専門分野に鍼の効果があり、治療の手札が増えて嬉しいです。



便秘や下痢に対しては非常に効果的で、是非おすすめなのと、メンタル面を好調にする電気通電の鍼なども合わせて、全人的に治療に介入できるのは良い点ですね。



薬が増えると、「薬ばかり増えて・・・」となることがあるので
それがないのも良いですね。



センノシドなどのセンナ系のお薬は、将来的に効きづらくなる耐性などが問題になりますが、それが減らせるのは良いですね。



私も鍼灸院を作ったら、そのあたりに期待しています!