四逆散(シギャクサン):ツムラ35番の効能・効果、副作用

四逆散の特徴

胆のう炎や胆石症、ストレスなどによる胃炎、胃酸過多、胃潰瘍や、鼻炎、気管支炎、神経症やヒステリーなどに用いられる漢方薬です。

四逆散は、体力が中程度の人に適する小柴胡湯(ショウサイコトウ)と体力が充実している人に適する大柴胡湯(ダイサイコトウ)のちょうど中間の状態に適する柴胡剤の一種です。

「四逆」とは、「四肢が逆に冷えている」という意味があります。炎症が起きると、本来は熱を帯びますが、炎症が起きても四肢が冷えている状態に適する漢方薬として四逆散と名づけられました。たとえばストレスや緊張が強く、手汗をかいて手が冷えるというような状態の人に適しています。

中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)」に記されています。

次のような人に有効です。

  • 比較的体力がある
  • みぞおちから両側にかけて圧迫感がある(胸脇苦満)
  • 四肢が冷える

四逆散の作用・効果

柴胡(サイコ)と枳実(キジツ)は精神を落ち着かせる作用があり、イライラを抑えます。芍薬(シャクヤク)は筋肉の緊張を緩めて、痛みを取り除く作用があります。そして、甘草(カンゾウ)は、調和作用があります。

臨床では、緊張すると手が異様に冷たくなり思うように動かず、字が書きにくい(書痙)症状に四逆散を処方したところ、わずか数日で改善されたという報告があります。(参考 治りにくい病気の漢方治療)

消化管潰瘍(胃潰瘍や十二指腸潰瘍)に対する四逆散の効果

緊張しやすく神経質な人で、腹部の違和感や重い感じ、胃もたれなどがある場合に胃潰瘍などの消化管潰瘍となっている場合があり、再発防止のために四逆散が用いられることがあります。

和漢医薬誌,2:177~176,1995では、17人の胃潰瘍患者さんに四逆散を使用し、潰瘍再発予防の効果の報告があります。

H+K+ATPasaeという胃酸の分泌に関わる場所に対して、芍薬が酸の分泌抑制効果を持っているという報告があり、酸を押さえ潰瘍を予防するという効果が考えられています。芍薬は、大柴胡湯などの他の柴胡剤には含まれていない生薬なので、それが含まれる芍薬がストレスを伴う潰瘍に良い予防効果を出すのではないか、と考えられています。

レイノー病に対する四逆散の効果

ストレスにより悪化するレイノー病を起こした女性に対する報告があり、レイノー病を改善させ、ストレスで末梢に血流が行き届かない、つまり体のストレス+末梢が冷えるという四逆という状態ととらえ処方をしたところ、非常に有用であったという報告が慶應義塾大学漢方医学講座の入江医師より報告されています。

頭痛に対する四逆散の効果

ストレスで筋肉が緊張して痛みが強くなる頭痛や月経前症候群の一症状として出てくる頭痛に対し、有用であったという報告が多数あります(参考:漢方の臨床:2014年2月号等)

線維筋痛症に対する四逆散の効果

漢方医学講座1989,44,p.57 で、四逆散は「精神の過緊張が骨格筋に影響して筋肉の強ばりを来しているもの」に有用であると表現され、漢方と診療 Vol.4 No.1(2013.04)の症例報告では、関節リウマチに合併した線維筋痛症に対し、四逆散が効果的であったという報告がされています。

掌蹠多汗症・汗疱状湿疹(手汗)に対する四逆散の効果

東方医,6:47~52,1990にて、掌蹠多汗症・汗疱状湿疹の23人に対して四逆散を使用し、皮膚も含め改善した5人と、汗の分泌の改善を認めた13人(56.6%)の報告があり、短期間で手汗の分泌を抑制できたという報告があります。

四逆散の成分・効能

四逆散は、下記の4種類の生薬からなります。

柴胡(サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさまし、「気」のうっ滞を除く作用があります。

枳実(キジツ):ミカン科のダイダイまたはナツミカンの未熟果皮を乾燥させたもの。薬効は、健胃作用、胸腹部のつかえ、膨満感を除く作用があります。

芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」のめぐりをよくする作用があります。さらに筋肉のけいれんを鎮めたり、鎮痛作用もあります。

甘草(カンゾウ):マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張を緩める作用があります。

四逆散の副作用

著しく体力の衰えている人は適しません。

また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。

四逆散の服用方法

ツムラ四逆散エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。

基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。

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