麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ):ツムラ55番の効能・効果、副作用

 麻杏甘石湯の特徴

咳を鎮める強い作用を期待して処方されたり、気管支喘息の発作時の頓服薬として古くから用いられ、小発作から中発作の比較的早期に使われる漢方薬です。大人だけでなく、小児喘息にも用いられます。また、かぜが長引き、乾いた強い咳が残る場合にも使用されます。

4種の生薬名の一字をとって、麻杏甘石湯と名付けられました。

中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)」に記されています。

次のような人に有効です。

  • 体力がある人
  • 顔が赤くて汗をよくかく
  • 口が渇く
  • 喘鳴がする
  • 強い咳が出る

咳に対する漢方薬の使い分け

冷えて、くしゃみや水様の鼻汁や薄い痰が出る小青竜湯
粘調度が高く黄色や緑色の痰
気道に熱がある状態
麻杏甘石湯
痰が切れにくい・喉が乾燥している
咳き込み出すとなかなか止まらない
麦門冬湯
湿白い痰が大量に出る二陳湯

麻杏甘石湯の作用・効果

麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)は、咳を鎮める作用があります。石膏(セッコウ)は熱や腫れを鎮める作用があります。甘草(カンゾウ)は炎症を抑え、他の生薬との調和作用があります。

気管支喘息に対する麻杏甘石湯の効果

麻杏甘石湯は強い咳に使用されます。咳の自覚症状の改善効果もあるため、一時的な改善について適応になります。西村 幸士.第51回日本小児アレルギー学会.2014年の発表では、入院中の喘鳴が続いた日数が短くなったという報告があります。

(ただし基本的に、気管支喘息の発作は、西洋医学的治療を優先した方が良いというのがこのサイトのスタンスです。なぜなら、喘息の治療は確立されつつあり、発作の回数や症状に合わせた治療を行うことで、将来の気道の狭窄(炎症により気道が狭くなってしまうこと)が防げることが、すでに分かっているからです。良い治療があるのに薬嫌いやインターネットの情報や信頼できない体験談(一個人の体験談も含む)に流され、将来後悔のないようにしていきたいと考えております。)

麻黄湯と麻杏甘石湯の使い分け

麻杏甘石湯は、麻黄湯の桂枝を取り去り石膏、半斤を加えたものです。麻黄湯で汗が出て、その後汗が止まらず、咳嗽・喘鳴などの症状も出てきた場合に麻杏甘石湯が使用されます。麻黄に石膏を加えることで、汗を止める働きが出るとされます。生薬の麻黄は気管支を広げ、喉を楽にします。石膏は炎症などの熱症状を改善させるよう働きます。麻黄だけだと汗をかく方向にはたらきますが、麻黄+石膏では汗が出すぎている時には汗を抑え、尿として排泄させるとも言 われています。

マイコプラズマ肺炎の時に使用される場合もあります。⇒参考:マイコプラズマ肺炎の漢方薬の使い分け

麻杏甘石湯の成分・効能

麻杏甘石湯は、下記の4種類の生薬からなります。

・石膏(セッコウ):天然の含水硫酸カルシウム。薬効は、止瀉作用、「熱」をさます作用があります。口の渇きや熱感、ほてりを抑えます。

・杏仁(キョウニン):バラ科のアンズの種子。薬効は、胸のあたりの「水(スイ)」の滞りを正し、咳や痰、息切れを改善させる作用があります。

・麻黄 (マオウ) :マオウ科のシナマオウの茎を乾燥させたもの。薬効は、発汗・鎮咳作用、気管支のけいれんを抑制する作用があります。交感神経や中枢神経を興奮させる作用があるため、高齢者や心臓病、高血圧のある人は注意が必要です。

・甘草 (カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。

麻杏甘石湯の副作用

体力の充実している「実証」向けの漢方ですので、体の虚弱な「虚証」の人には適しません。

麻黄が含まれていますので、不眠、頻脈、動悸、血圧上昇などの副作用が起こる可能性があります。高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人は慎重に用いる必要があります。

エフェドリン類含有製剤、甲状腺製剤(チラーヂン)、カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプレナリン)、テオフィリン(テオドール)を服用している人で麻黄湯を服用する際は注意してください。

また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。

麻杏甘石湯の服用方法

ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。


麻杏甘石湯は「清熱剤」ですので、お湯に溶かしたあと、冷やしてから服用するとより効果的です。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。

参考文献
・今日から使える漢方薬のてびき(講談社)
・漢方薬の服薬指導(南山堂)
・治りにくい病気の漢方治療(創元社)
・漢方薬の選び方・使い方(土屋書店)
・漢方相談ガイド(南山堂)

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