■味覚障害
「何を食べても味気ない」「口の中に何もないのに渋みや苦味を感じる」など味覚の変化を訴える人は味覚障害かもしれません。料理の味付けが上手くいかず家族から指摘されたり、何を食べても美味しく感じられないため、食欲が無くなったりすることで症状に気が付くこともあります。
味覚は人間が健康的に生活するために必要な「センサー」であるため、症状を放っておけば、食欲低下や塩分・糖分過多などで体調を崩しかねません。
原因としては、味覚障害は肝炎や胃炎など疾患が関係するもの、薬剤性のもの、また食事の偏りによる栄養不足(亜鉛)が原因と考えられます。まずは病院で病気がないか探し、あれば疾患の治療を行いましょう。それでもなかなか改善しないという場合は、体質やその他の症状に合わせて漢方薬を併用すると効果を感じられる方もいます。また、偏った食事を続けている人は食生活の見直しをすることが必要です。亜鉛を多く含む野菜や魚、ナッツ類などを意識してとるのもよいでしょう。
【味覚障害におすすめの漢方薬】
『半夏瀉心湯』 ◇味覚障害のファーストチョイス ‐
半夏瀉心湯は体力中等度の人の、口の中の苦みや味覚異常に用いられるファーストチョイスの漢方薬です。胸あたりにこもった熱が上昇し、吐き気やげっぷ、胃酸が逆流するなどの症状があり、ストレスや憂鬱な気分を感じているタイプの味覚障害に適しています。
このような状態では、常に口腔内の環境が悪くなるため、口内炎や歯周炎などが現れることもあります。構成生薬の半夏には、「鎮嘔」(ちんおう)といい、胃の余分な水を捌いて胃の働きを整える作用があるため、上に突き上げる吐き気を抑えます。また黄連や黄芩が胸にたまった熱を冷まし、人参が胃腸を整えます。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、間質性肺炎や肝機能障害、消化器症状、発疹などが記載されています。
『小柴胡湯』 ◇口が苦くて不快な人に ‐
3世紀初めに書かれたとする傷寒論には、少陽病期の病態について「少陽の病たる口苦く・・・」と記されています。少陽病期とは、病邪が体の表面から中へ入り込んでいく途中の段階で、症状として口が苦くて粘りがあり、微熱が出て、胸や脇腹が苦しく、食欲がなくなるといった症状が現れます。
この少陽病期には、内臓の熱を取る生薬である「柴胡」が使われた漢方薬が有効であり、小柴胡湯は味覚障害の他、主に長引く感冒や肝炎などの症状改善に使われます。体力中等度で身体に冷えがない人に適していますが、小柴胡湯の副作用については特に注意が必要なことから、服用する前に必ず専門家に相談することをおすすめします。体力が充実しており、手足に冷えがあるタイプの人には、同じく柴胡が使われている四逆散という漢方薬がよいでしょう。
『麦門冬湯』 ◇口腔内乾燥による味覚障害に ‐
唾液が減ると味を感じにくくなったり、唾液の殺菌作用が低下により舌炎などを発病することで味覚に異常が現れることがあります。加齢や薬の副作用によるドライマウスに悩まされる人は多いようですが、麦門冬湯はこういった口腔内乾燥による味覚障害に適しています
構成生薬の麦門冬は、身体や口内の潤いを補うとともに、潤いが少ないことで火照ってしまった熱を冷まします。また、粳米には潤いを補う作用のほか、気を補う作用もあるため、水の巡りをよくします。味覚障害の他、口臭やドライアイなど、粘膜の乾燥症状に使われることの多い漢方薬です。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、間質性肺炎や肝機能障害、消化器症状、発疹などが記載されています。