出血しやすい人の漢方薬(原因・効果・使い分け)

■出血しやすい

口内の出血の多くは歯茎からの出血であり、誰でも一度は体験したことがあると思います。歯ブラシで強く磨き過ぎ歯茎を傷つけて出血したり、逆に食後のブラッシングが不十分で食べカスが歯と歯の間に挟まり、細菌が繁殖、歯茎に炎症が起き出血することもあります。

この場合はいずれも、毎日の口内ケアを意識しながら行っていくことで改善されます。

しかし、「歯周病や歯肉炎はないのに歯茎から出血する」や「柔らかい歯ブラシで丁寧に磨くけれど毎回出血する」などの症状がある場合は、口内のみの原因でなく、身体全体の健康バランスが崩れてしまっている可能性があります。そうした時には、口内出血の症状のみならず、身体全体の不調にまで視野を広げて漢方薬を使ってみることもひとつの方法です。

※もちろん、血液内科などの内科で、出血をしやすい病気である「血小板低下」を起こしていないか、などを先に調べる必要があります。特発性血小板減少症(ITP)のように、治療によって治せる病気もありますし、白血病のように発見の遅れが致命的になってしまう病気もあります。

出血しやすい、という症状の場合は、血液内科をオススメします。血液内科では、血液の数や形態をみて、病気を診断し治療することに長けています。また、血小板の数だけではなく、機能の障害もみることができますし、凝固という血液を固める機能の評価も行うことができます。

それらを行っても特に問題がないという人で、体質的に出血しやすいという人に、漢方薬が役に立つことがあります。

【口内出血におすすめの漢方薬】

 『芎帰膠艾湯芎湯』 ◇皮膚や粘膜に潤いがない人に‐

芎帰膠艾湯は、止血効果のある薬として口内出血をはじめ、月経過多や痔、鼻出血、眼底出血などに幅広く使われる漢方薬です。

栄養のある温かい血が全身に流れず、皮膚や組織の潤いがなくなり破れやすくなることが原因で出血が起こり易くなっている人向けの漢方薬です。顔色が青白く、冷え症の傾向があるやや虚弱なタイプの人におすすめです。

血を補う生薬の代表選手である、地黄、当帰、芍薬と、止血作用のある艾葉と阿膠、血を巡らす川芎などでバランスよく構成されています。艾葉は日本でも馴染みのあるヨモギの葉で、身体に巡る経絡を温めて冷えを改善する作用もあります。

甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用としてミオパチーや消化器症状が記載されています。

芎帰膠艾湯芎湯の効果・効能・配合生薬・副作用

十全大補湯 ◇疲労困憊で無気力な人に –

出血には「血」が関係します。健康な歯肉(皮膚)が作られるためには栄養のある血が作られることが重要ですが、このよい血を作りには「気」(パワー)が必要となります。

疲労や倦怠感が常にあり、無気力で食欲がない、貧血や皮膚のかさつきがあるようなタイプの人に十全大補湯はおすすめです。

構成生薬の中に人参と黄耆が含まれているものを参耆剤(じんぎざい)といい、気を補う薬として数種類存在しますが、十全大補湯はこの参耆剤のひとつです。直接止血するような作用を持つ生薬などは含まれていませんが、気を補い全身の栄養状態や貧血を改善することで、免疫力や自己治癒力の回復をはかり、身体の不調を改善します。

甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用としてミオパチーや消化器症状、肝機能障害、黄疸などが記載されています。

十全大補湯の効果・効能・配合生薬・副作用について

黄連解毒湯』 ◇体力がありのぼせなどの熱症状がある人に‐

黄連解毒湯は、胃に熱がたまる「胃熱」タイプの出血に適しています。胃熱とは、過食による栄養過多や暴飲暴食でフル稼働した胃が熱を帯びてしまっている状態です。その胃熱が気の逆上とともに頭の方へ上がることで、口腔内の環境がより悪化し、歯肉の炎症が出血を引き起こすきっかけとなります。

黄連解毒湯の4つの構成生薬は、基本すべて冷やす作用があり、身体の中の余分な熱や水分を取り去ることで症状を改善していきます。特に黄連は、上半身の熱を去る作用があるといわれ、歯茎の出血をはじめ、吐血や目の充血などの熱よる炎症症状を改善します。

体力のない虚証タイプ、身体が冷えていて便秘がある人、身体の水が不足している「陰虚」のタイプにはおすすめできません。副作用として、肝機能障害、間質性肺炎、黄疸などが記載されているため、服用前に専門家に相談してください。

黄連解毒湯の効果・効能・配合生薬・副作用

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