意識障害の原因と症状、漢方薬が使われる場合

■意識障害とは

意識障害とは、自分自身や周囲の環境・状況などについて判断できなくなった状態です。意識障害には「意識混濁」「意識変容」という大きく分けて2つの種類があります。「意識混濁」は、軽度では現在自分が置かれている状況や日付などが分からなくなる程度です。しかし重症になると呼びかけや痛みの刺激にも目覚めない、といった状態になります。短時間で回復する「意識消失」や、長く意識が戻らない「こん睡」などがあります。

「意識変容」は幻覚が見える、冬山で遭難したとき衣服を脱いでしまうなど通常ではない行動をとってしまうなどの状態です。現在置かれている環境を正しく認識し、対応することができなくなっているということです。

■意識障害の原因

・脱水症状

 高熱や熱中症による脱水症状と末梢血管の拡張により、全身の血液循環量が減少することで意識が消失することがあります。

・一酸化炭素中毒

ストーブの不完全燃焼などで、一酸化炭素の濃度が高くなると中毒症状を起こすことがあります。頭痛、吐き気などの症状から始まり意識がもうろうとし、こん睡状態に陥ります。

・アルコールの過剰摂取

アルコールには脳を麻痺させる性質があります。多量に摂取すると意識をつかさどる大脳や、呼吸機能・心拍機能をコントロールする脳幹部に影響を与え、意識障害や死に至ることがあります。

・熱性けいれん

 5~6歳くらいまでの子どもに良く見られる発熱に伴うけいれんです。脳の機能が未熟なため、38度以上の高熱時に脳が刺激されて数分程度のけいれんや意識消失がおこることがあります。

・てんかん

 脳の伝達システムに一時的な乱れがおこる慢性疾患です。突然身体がけいれんする、意識を失うなどの発作が起こることがあります。

・糖尿病

 血糖値が異常な高値(800mg/dl以上)になるとこん睡状態に陥ります。逆に血糖降下剤の効き過ぎなどによる低血糖では、血糖値が50mg/dl以下で意識の混濁がおこり、40mg/dl以下になるとこん睡状態になります。速やかに処置をしないと死に至る危険な状態です。

・脳の疾患によるもの

 脳梗塞や脳出血により脳が障害されることで、意識障害や麻痺などがおこることがあります。また細菌やウイルスの感染による脳炎が進行するとこん睡状態になることもあります。

・心筋梗塞

 心臓の筋肉に血液を送る冠動脈に血栓ができ、血流が止まってしまった状態です。心筋梗塞による心筋の壊死が広がると、血圧が低下して意識を失うことがあります。

・腎不全や尿毒症、肝不全によるもの

尿毒症とは、腎不全により老廃物が尿中に排泄されず血液中に蓄積される症状です。これにより脳に障害がおこると幻覚やこん睡などの症状を引き起こします。また肝臓の機能が著しく低下した状態の肝不全では、脳症状として錯乱やこん睡などの意識障害がおこることがあります。

・その他の意識障害

 一時的に脳の血流が低下する脳貧血や、過換気症候群の呼吸困難による失神(短時間の意識消失)も一過性の意識障害をおこした状態です。

意識障害に対する漢方薬治療と対策

意識障害を起こす原因や疾患には様々なものがあります。既に起きてしまった意識障害には速やかで適切な処置が必要となります。病院の救急外来などで調べる、ということが最も優先されます。そのため、急性の意識障害に対して漢方薬を用いる機会はありません。

ここでは意識障害を起こす可能性のある疾患に効果がある漢方薬など、主に予防的な観点からの対策を紹介していきます。

八味地黄丸・・・高齢などにより体力が弱っている人で、口の渇きや頻尿・尿量減少の症状がある糖尿病や高血圧に有効な漢方薬です。また利尿作用があるので慢性腎炎にも用いられます。体力があるタイプの人や胃腸虚弱の人には不向きなので、その場合は五苓散猪苓湯などが使用できます。

牛車腎気丸・・・八味地黄丸に水分調節に効く生薬を2種類加えた漢方薬です。糖尿病は漢方の考え方で「消喝(多尿・口渇の激しい状態)」と呼ばれ、水分調節に効果のある漢方薬がよく使われます。八味地黄丸が適している症状や体質の人で、よりむくみが強い場合などに効果的です。

小柴胡湯・・・体力中等度の人の肝機能障害によく用いられる漢方薬で、臨床実験でも慢性肝炎に対する効果が示されています。ただし慢性肝炎の治療でインターフェロンが投与されている場合は併用できません。また体力があるがっちりしたタイプの人には向きませんので、その場合は大柴胡湯が用いられます。

抑肝散・・・精神や神経の高ぶりを抑える効果があり、てんかんや熱性けいれんの発作の回数を減らす補助的な役割が期待されています。

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