しびれの漢方薬(効果効能・使い分け)

しびれ症状の特徴

しびれの症状はムズムズ、ジンジン、チクチク、ピリピリなどの不快感として自覚されます。

脳や脊髄(特に頚髄)に問題がある場合は、手足を含む体の半身にしびれが生じます。頚椎に問題がある場合は、片側の手や腕だけがしびれます。手や腕の神経の根元が通る場所が狭くなる頚椎症によるものが多いです。

腰椎に問題がある場合は、足だけがしびれます。原因としては、腰の椎間板ヘルニアによることが多いです。

末梢神経に問題がある場合は、手のひらだけがしびれるというように、局所にしびれが生じる場合が多いです。これらのしびれは、夜寝ている間に悪くなる、目が覚めた時が一番しびれている、という特徴があります。

糖尿病や甲状腺機能障害などが原因になっていることもあります。

さらに、多発性神経炎や血管炎などでも神経障害が起こり、しびれが生じる場合もあります。血液検査でCRPや赤沈などの炎症反応で気が付かれる場合も多いです。

しびれに対する西洋医学の治療

原因の特定とその除去が治療の基本となります。軽症であれば、ビタミン剤(アリナミンF、メチコバール、ユベラNなど)によって血行の改善をします。心因性の場合は、抗不安薬を併用することもあります。最近では、リリカという薬も使用される機会が増えてきました。

糖尿病によるしびれの場合は、神経内にソルビトールが蓄積されていることが原因によってしびれが生じるため、ソルビトールの蓄積を抑制するキネダックやメキシチールを用います。

また、アルコールが原因のしびれには、ビタメジンカプセルやメチコバールなどのビタミン剤がよく用いられます。

しびれに対する漢方医学の治療

漢方医学では、しびれは水滞、血虚、瘀血、腎虚が原因であると考えます。

水滞がある場合によく用いられるのは、桂枝加朮附湯で、体力がなく、手足が冷えてこわばり、時に尿量が少ない人に効果があります。配合生薬の桂皮、芍薬、大棗、蒼朮がいずれも鎮痛作用をもち、神経痛を伴う痛みに効果があります。

血が不足する血虚の場合で、手足の冷えがある人には、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が用いられ、手足の冷えがない人には、疎経活血湯が用いられます。当帰四逆加呉茱萸生姜湯には、血液の循環を促進する当帰が含まれています。さらに鎮痛作用のある桂皮、芍薬、大棗、細辛、呉茱萸が含まれ、特に呉茱萸は冷えや水毒による痛みに効果がありますので、しもやけや手足の冷え、特に下肢の冷えが強く、痛くなりやすい人に有効です。疎経活血湯は、血虚を改善する効果のある地黄や当帰、川芎が配合されています。血を補い、循環を良くすることによって、神経痛、腰痛、筋肉痛、関節痛などの痛みとしびれを改善します。

瘀血がある場合は、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯などの駆瘀血剤が用いられます。体力のない人には、当帰芍薬散。比較的体力のある人には、桂枝茯苓丸や桃核承気湯が効果的です。

腎虚がある場合で、特に中高年の下半身の冷えを伴うしびれや痛みの場合は、八味地黄丸が用いられます。地黄、山茱萸、山薬は滋養強壮作用があり体力をつけ、沢瀉、茯苓の利水作用によって体内の余分な水分を排泄させます。弱った腎機能を調節することにより、しびれや痛みの改善をします。また、むくみやしびれの症状が強い場合には、牛車腎気丸が用いられます。こちらの場合は、地黄や山茱萸、山薬の配合量がより多くなっており、牛膝や車前子が含まれて利尿効果が強くなっています。

しびれに対して用いられる主な漢方処方

以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

ライフスタイルで注意すること

しびれの原因は様々なので、原因がわからない場合は何か病気が隠れていることもありますし、進行する病気のこともあるので、医療機関を受診して原因を明らかにすることが大切です。

また、血行不良によってもしびれが生じる場合が多いので、姿勢が悪い、長時間同じ体制でいる、体を冷やす、きつい下着などで体を締めつけるなどの日常生活の習慣を見直すことも大切です。

参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・痛み・鎮痛の基本としくみ(秀和システム)

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