ほてりの漢方薬(効果効能・副作用)

ほてりの原因・症状の特徴

顔や体に異常な熱感を感じたり、赤くなる状態を「ほてり」といいます。運動や入浴後に、体がぽかぽか温かくなり、ほてりを感じますが、これは、血行がよくなったためにおこる生理現象です。時間がたてば、自然に治まる一時的なものです。

しかし、何もしていないのに、顔や体がほてる場合があります。これは、体の不調を訴えるサインだといえます。時に背景に何らかの病気が隠れている可能性もあるので、注意が必要です。

ほてりの原因のひとつに、自律神経のバランスの乱れがあると言われています。自律神経とは、体の生理機能をコントロールする神経のことです。この中には、体温調節機能も含まれています。本来、人間は外界の温度変化に対応できるように血管を広げて熱を放出したり、血管を縮めて熱の放出を防ぐことで、体温を調節しています。しかし、自律神経が正常に働かなくなると、体温調節にも悪影響を及ぼし、暑くもないのに体や顔がほてるという現象が起こってきます。最近では上半身はほてっているのに下半身は冷えているという女性も増えています。

自律神経のバランスの乱れを引き起こす原因として、一つ目に自律神経失調症があります。病名がつくほどひどくなくても、身体的ストレスや精神的ストレスが引き金となって自律神経が乱れることがあります。

二つ目に女性ホルモンの乱れが挙げられます。特に更年期にほてりの症状がよく見られます。なぜなら、更年期には、卵巣の機能低下に伴い女性ホルモンのバランスが崩れますが、この女性ホルモンの分泌をコントロールする脳と自律神経は密接な関わりがあるためです。女性ホルモンのバランスが乱れることによって、結果的に自律神経の乱れを引き起こします。

このように、ほてりの原因が自律神経の乱れである場合、リラックスする時間をもち、体の冷えているところを温めて、血行をよくすることがほてりの改善に効果があります。

自律神経の乱れ以外に、ほてりを起こす病気もあります。風邪、インフルエンザ、熱中症、甲状腺機能亢進症、高血圧などです。この場合、ほてりの原因となっている病気を治療していくことが、ほてりの改善につながります。

漢方医学では、一概にほてりといっても、皆が同じ治療を受けるのではなく、個人の体の状態をよく診断した上で、ひとりひとりに合わせた治療を行っていきます。

体の状態を診断する上で基本的な概念となるのが、「気(生命エネルギー)、血(血液)、水(体液)」です。この体を構成する3つの要素がバランスを保つことによって、健康が維持されると考えます。そしてこのバランスが崩れることによって、体に不調が現れるというわけです。さらに人間の体は「陰」と「陽」に分けられ、2つのバランスが崩れることによっても不調が現れます。

このような観点から見たときに、ほてりを起こすタイプは主に3つに分けられます。

  1. 陰虚タイプ

陰とは分かりやすくいえば、体内の水分(血液と体液)のことで、体を潤し、余分な熱を冷ます働きがあります。一方、陽は体を温める熱エネルギーのことです。陰虚タイプとは陰が不足している状態を表します。すなわち、潤いが不足し、体内に熱がこもることによって、ほてりを引き起こします。他にも寝汗、口の渇き、皮膚の乾燥などの症状も伴います。この場合、体内の熱を冷ます作用をもつ「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」や「温清飲(うんせいいん)」、また、陰を補うものとして「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」も用いられます。このタイプは日頃から水分補給を心がけるとよいでしょう。

  1. 気滞タイプ

気のめぐりが滞っている状態を表します。気のめぐりを調節している臓器は「肝」です。肝はストレスの影響を直接受けやすいため、ストレスを受け続けると、肝の機能が低下し、体のあちこちで気が停滞するようになります。それに伴って、熱もたまり、ほてりの他にも、イライラや怒り、胸やお腹の張り、ガスがたまるなどの症状も見られます。この場合には、気のめぐりを改善する「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「女神散(にょしんさん)」「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」などが用いられます。このタイプはストレスが大敵です。少しでもリラックスする時間をもつようにしましょう。

  1. 血瘀(けつお)タイプ

血のめぐりが悪く、全身に血が行き届かない状態を表します。頭痛や肩こりを伴うことが多く、手足は冷えているのに体はほてるような場合も血瘀が原因であると考えられます。このような症状には血のめぐりをよくする「 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」や「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」「温経湯(うんけいとう)」が有効です。また、血行をよくするために適度な運動をするとよいでしょう。

このようにタイプによって用いる漢方薬の種類が異なります。人によっては、ひとつのタイプに限らず、いくつかのタイプが重なっている場合もあります。ほてり以外にも他の症状を伴うことが多いので、体全体の状態をよく見た上で漢方薬を選ぶことが大切です。

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