不安・緊張・パニック障害・不安神経障害の漢方薬(効果効能・使い分け)

不安神経症と呼ばれる症状の特徴

神経症は、心理的な要因によって日常生活に支障が生じる疾患です。原因としては、災害との遭遇や親しい人との別れ、ストレスなどが挙げられます。強い不安や緊張、神経過敏、不眠、うつ状態、パニック障害、人格障害、対人恐怖症など多様な症状があります。

強い不安や恐怖を感じ、その結果、動悸や胸部の不快感、呼吸困難などが生じる場合もあります。

鑑別が必要な妄想の強い統合失調症が疑われたり、自殺願望があり緊急を要する場合は、早急に精神科の受診を促すことが必要です。

不安神経症の西洋医学の治療

抗不安薬や抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠剤やカウンセリングなどによる治療を行います。また、人格障害、パニック障害、うつ状態、神経症などにもカウンセリングなどの心理療法を組み合わせる治療が行われます。自信を失ったり、悲観的な考えを回復させる認知行動療法も行われています。少量の薬物療法で効果が得られる場合もあれば、入院が必要な重症な例や、回復が難しい場合もあります。

漢方医学の治療

漢方医学では、不安神経症の原因は気の滞りによるものと考えます。従って、気の流れをよくする漢方薬が特に用いられます。漢方治療では、不安神経症のうち、軽症で漢方薬単独でもコントロールが可能な場合や、西洋薬の副作用を軽減するための補完として、用いることが基本となります。効果はマイルドで、長期間の服用が必要かもしれませんが、精神面と、身体面の両方を改善することができ、西洋薬にあるような眠気、倦怠感などの副作用がないことが特徴です。

不安の強い人には、桂枝加竜骨牡蛎湯抑肝散加味逍遙散柴胡加竜骨牡蛎湯が用いられます。

具体的には、桂枝加竜骨牡蛎湯は、体力が低下して、虚弱体質、神経過敏、不安、驚きやすい、不眠がある人に効果的です。配合生薬の牡蛎や竜骨は神経性疾患に効能を持つとされ、神経の高ぶりを鎮めて、精神の安定作用を期待され使用されます。

抑肝散、加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蛎湯はいずれも配合生薬に柴胡が含まれている柴胡剤です。柴胡は神経疾患に効能を持つとされり、特に胸脇苦満の症状を改善する作用があります。

抑肝散は、体力が中程度で怒りやすく、興奮状態、不安、神経過敏症状がある人に用いられます。

加味逍遙散は、体力が低下し、体質虚弱な女性によく用いられます。病院で症状を相談しても不定愁訴とされてしまうようなだるさやめまい、しんどいという言葉にしづらいけれどもしんどいと感じるあの症状やうつ状態、疲労感、不眠、月経異常に効果的です。

柴胡加竜骨牡蛎湯は体力が中程度以上の人で、上腹部の圧迫感、不安、うつ状態、神経過敏症状に効果があります。

うつ状態の強い人には、半夏厚朴湯、香蘇散、加味逍遙散、柴胡加竜骨牡蛎湯が用いられます。

半夏厚朴湯は、気分がふさぎ、咽喉・食道部に違和感があり、動悸やめまい、吐き気をともなう場合に効果があります。配合生薬の半夏と厚朴が、気のめぐりをよくし、つかえ感や吐き気をおさえ、気分を落ち着かせる作用があります。

香蘇散は、特に高齢者によく用いられる漢方薬で、風のひきはじめにも使われます。体力虚弱、神経過敏で気分がすぐれず、胃腸の弱い人に効果があります。発散作用や健胃作用のある生薬から構成され、弱った胃腸を強くし、心身ともに元気にさせる効果があります。

不安神経症に対して用いられる主な漢方処方

以下に症状別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 不安がある人
  • 動悸、体力がある→柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 喉の違和感→半夏厚朴湯
  • 女性の不定愁訴、月経困難、イライラ症状→加味逍遙散
  • イライラ、怒りっぽい、ヒステリー→抑肝散
  • 動悸、神経質、過敏→桂枝加竜骨牡蛎湯
  • うつ状態
  • 動悸、体力がある→柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 喉の違和感→半夏厚朴湯
  • 高齢者、虚弱体質→香蘇散
  • 女性の不定愁訴、月経困難、イライラ症状→加味逍遙散
  • 動悸、神経質、過敏→桂枝加竜骨牡蛎湯

ライフスタイルで注意すること

神経症の人は自分の考えに固執して自由になれない傾向が強いです。精神を安定させるためにも、深呼吸や腹式呼吸などの呼吸法が有効です。

また、自分の悩みや考えを人に話してみることも、客観的に捉えるには、有効な手段です。

参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)

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