脂質異常症の漢方薬(効果効能・使い分け)

脂質異常症の特徴

脂質異常症は、コレステロールや中性脂肪が増加した状態や、HDLコレステロールが低くなった状態をいいます。診断基準の改正が行われ、LDLコレステロール値が140mg/dl以上、120~139mg/dL を境界域高LDLコレステロール血症、HDLコレステロール値が40mg/dl未満、中性脂肪が150mg/dl以上が脂質異常症として診断されます。食生活の欧米化に伴って、近年増加した病気です。

脂質異常症は、糖尿病、高血圧、喫煙とならび動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞の重要な因子の1つと考えられています。

一度でも心筋梗塞や脳梗塞などを起こしにくくなるようにするために、まだ起こしていない人はしっかりと生活習慣の改善と脂質コントロールを行う必要があります。また一度でも心筋梗塞などの冠動脈疾患の既往があれば、LDLは100以下にする、というようなガイドラインもあり、数値は年々変わるものの厳密なコントロールが必要であることは共通しています。

西洋医学の治療

食事療法・運動療法の効果が不十分な場合、あるいは、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、末梢動脈疾患などのリスクがある方や喫煙歴があり動脈硬化のリスクが高い場合には、薬物療法が行われます。

コレステロールが高い場合は、スタチン系薬剤のクレストール®やリピトール®など、陰イオン交換樹脂のコレバイン®など、フィブラート系薬剤のベザトールSR®など、ニコチン酸製剤のユベラN®など、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬のゼチーア®などが用いられます。

中性脂肪が高い場合は、フィブラート製剤、ニコチン酸製剤、スタチン系薬剤、EPA製剤(エパデールやロトリガ)が用いられます。

脂質異常症に対する漢方医学の治療

脂質代謝を改善する生薬である柴胡や山梔子、猪苓、人参、黄芩などが含まれた漢方薬を体質や症状に応じて使います。脂質異常症に伴う肩こり、便秘、腹部膨満感などの症状に対し治療をしていきます。

肥満に対して用いられる主な漢方処方

以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 体力のある人
  • 胸脇苦満、食欲不振、耳鳴り、吐き気、嘔吐、便秘→大柴胡湯
  • 肥満、動悸、肩こり、のぼせ、むくみ、便秘、高血圧→防風通聖散
  • 頭重感、のぼせ、肩こり、足の冷え、下腹部の張り→桂枝茯苓丸
  • 体力が中程度の人
  • のどの渇き、吐き気、むくみ、食欲不振→柴苓湯
  • 体力がない人
  • のぼせ、肩こり、イライラ、不安、便秘→加味逍遙散
  • むくみ、疲労感、腰から下の冷え、手足の冷え、尿量減少→八味地黄丸
  • 頭重感、高血圧、貧血、めまい、むくみ、動悸→当帰芍薬散

ライフスタイルで注意すること

ライフスタイルを見直し、規則正しい食事、適度の運動が大切です。毎日体重を測り、減量を意識することも効果的です。運動の場合は、酸素をたくさん消費しながら行う有酸素運動が効果的です。なかでも、中高年以上の運動不足には、ウォーキングがおすすめです。

また、禁煙と受動喫煙の回避を行い、減塩を行うことも推奨されます。

参考文献

・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・介護のための薬の図鑑(knowledge)

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