むくみが起こる原因、漢方的なむくみの診方

朝起きたら顔がむくんでいたという経験はある方も多いのではないでしょうか?また、長時間立ちっぱなしで足がパンパンにむくんだというのもよく聞く話です。このページでは、特に女性に多い悩みのひとつといわれる「むくみ」について、西洋医学的・漢方的な見方それぞれで解説します。

むくんでいる感覚と、実際のむくみがあるかどうかの見分け方を解説すると、実際にむくんでいる場合にはパンパンになっているところを指でしばらく押してみて、へこんだまま跡が残るようなら、それは「むくみ」です。厳密には10秒押すとよいとされていますが、10秒に限る必要はありません。押すと跡が残ることが大事です。

なぜ人間の体にはむくみが起こるのでしょうか?
これは血液の循環と深い関係があります。心臓から全身に送り出された血液は、細胞に酸素や栄養を供給して回収されて静脈に戻り、その後再び心臓に戻ってきます。一部は尿として排出し、水分量のバランスをとります。しかし、何らかの原因で血液が十分に心臓に戻ることができず、余分な水分が血管から浸みだして皮膚の下に溜まった状態がむくみです。

たまる原因は、様々です。
・ポンプである心臓が原因の場合
・外に出す出口である腎臓が原因の場合
・血管の中に回収する働きを持つアルブミン(タンパク)が不足している場合
・甲状腺や薬など、シンプルには説明が難しいですがむくむ特別な状況

なとがあります。

むくみの多くは一時的なものですが、中には病気が隠れている場合もあります。いつまでもむくみが続いたり、ひどくなるようなら一度病院で検査をしてみる必要があるでしょう。

むくみを起こしやすい生活習慣、というものもあります。
むくみを引き起こす原因となりやすいのは、長時間同じ姿勢でいることです。例えば、長時間立ちっぱなしの状態だと、重力によって血液が足に溜まります。本来足に溜まった血液は、足の筋肉を動かすことによって心臓に送られます。すなわち、足の筋肉がポンプのような役割を果たしています。しかし、長時間同じ姿勢を続ければ、筋肉を動かさないので、ポンプの役目を果たさず、血液の流れが悪くなります。座りっぱなしの場合にも同様です。つまり血行不良がむくみの大きな原因となります。特に女性は筋肉が少ないのでむくみが起こりやすいといわれています。冷え性や運動不足の場合にも、血行不良でむくみが生じやすくなります。

次に、食生活において塩分を摂りすぎるとむくみやすくなります。漬け物やラーメンなど塩分の多い食品を食べた後にのどが渇いて水分を摂りたくなった経験があると思います。これは体内の過剰なナトリウムの濃度を下げようとするためです。体内に水分をため込もうとするため、その結果むくみが生じます。

病因性のむくみ(病気によるむくみ)でなければ、西洋医学では通常治療の対象にはなりません。むくみを解消する薬には利尿剤がありますが、強制的に水分・塩分を排出するため、使用には医師の指示が必要です。一過性のむくみの場合、むくんでいる部分をマッサージしたり、温めながら、血行をよくすることがむくみの解消につながることがあり、原因がなければそれ以上の治療を行わないこともあります。

漢方医学における、むくみ

一方、漢方医学では、むくみを体の異常な状態としてとらえ、治療していきます。体内の構成要素である「気(生命エネルギー)・血(血液)・水(体液)」のバランスを見たときに、むくみは水のめぐりが悪くなっている「水滞」という状態だと考えられています。口から摂取した水分は胃で吸収され、全身をめぐって、体外に汗や尿として排泄されます。この水分の流れがどこかで停滞すると、むくみが起こりますが、水分が停滞する原因は、大きく分けて3つ挙げられます。

一つ目は食物を消化吸収を通して栄養分を作り出す「脾」の不調です。脾は吸収した水分を肺に運ぶ働きをしますが、脾が冷えて機能が低下することにより、水滞が起こります。主に全身や手足がむくみやすく、食欲不振、倦怠感や軟便などを伴います。このような場合には、脾を温めて水分の流れを改善する「五苓散(ごれいさん)」や「茵陳五苓散(いんちんごれいさん)」「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」を用います。

二つ目は「肺」の不調です。肺は脾から運ばれてきた水分を全身に送り出し、回収する働きがあります。この肺の機能が低下すると、特に上半身の水分の流れが停滞し、顔や瞼などがむくみやすくなります。また、急にむくんだり、発熱や咳を伴ったりもします。このような症状には、肺の水分代謝を改善する「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」や「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」などが使用されます。

三つ目は「腎」の不調です。腎は余分な水分を尿として体外に排泄し、必要な水分は再吸収しながら、体内の水分バランスを調節する働きがあります。腎の機能が低下すると、主に下半身がむくみやすく、冷えを伴います。このような場合には、体を温め、水分代謝を改善する「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「真武湯(しんぶとう)」が用いられます。

これらの漢方薬は利水剤とよばれ、西洋医学の利尿剤とは概念が違います。利尿剤は余計な水分を体外に尿として排泄するだけなのに対し、利水剤は体内の水分が余っていれば排泄し、不足していれば保持しながら、体内の水分バランスを整えることが可能です。全身のバランスを整えることを治療の基本とする漢方薬ならではの特徴といえるでしょう。

最後に、むくみが起こるようならば日頃の生活習慣を見直してみましょう。まず、適度な運動をして、筋肉を動かすことです。そして、体を冷やさないようにすることが大切です。入浴などで血行をよくするのも効果的です。食生活においては、塩分の摂り過ぎに注意しましょう。毎日のちょっとした心がけでむくみを予防することができます。

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