捻挫の原因と症状、効果的な漢方薬の使い分け

■捻挫とは

 捻挫とは、関節を不自然な形にひねることで、関節の靭帯や腱、軟骨などが傷ついた状態のことです。関節部分の血管が内出血を起こすと、患部に腫れや皮下出血が見られます。腫れや痛みが続いたり関節がグラついたりしている時は、骨折や靱帯断裂の場合もあるので医療機関の受診が必要です。体のどの関節にも起こる可能性があり、筋肉の疲労や筋肉が固いといった状態が捻挫を起こしやすくなります。突き指や首のむちうち、ぎっくり腰も捻挫の一種です。

捻挫は靭帯の傷つきの状態によって、3つのレベルに分けられます。

1度・・・靭帯が一時的に伸びている状態 痛み・腫れは軽い

2度・・・靭帯の一部が切れている状態

3度・・・靭帯が完全に切れていて、関節が不安定な状態

■捻挫後の処置

捻挫のケアは捻挫直後の時期と、その後の時期で異なります。

・急性期・・・患部が炎症を起こし、熱をもって腫れている時期です。氷や冷感シップなどで冷やして血管を収縮させ、内出血や炎症を抑えます。捻挫後2~3日が目安になります。

・慢性期・・・炎症が治まり、腫れや痛みが多少落ち着いてきた時期です。入浴や温感シップなどで温めて血液の循環を良くし、内出血の吸収を早めて腫れを引かせます。捻挫後4~7日が目安です。

効果的な漢方薬治療と対策

漢方では、捻挫は血の流れが滞る(お血)症状と考えられています。お血(=捻挫で腫れなどがある状態)を取る処方を中心に、炎症を抑える、傷んだ腱や筋肉の組織を柔らかくするなどの漢方薬を、症状によって服用します。

桃核承気湯・・・捻挫した直後の、腫れや痛みが強い状態のときに使用します。お血の改善効果の他、下剤作用のある生薬が含まれています。損傷が起こった組織にある「悪いもの」を、大便と一緒に体外へと出す「下法」という治療法です。比較的体力がある人向きの漢方薬で、体力が衰えている人や、もともと下痢をしている人には使用を控えます。

通導散・・・使用目標は桃核承気湯と似ていますが、皮下出血が広範囲の場合に使用されます。こちらも「下法」の処方で、使用すると黒っぽい便が出るといわれます。

桂枝茯苓丸・・・症状が軽症の場合や、捻挫後数日たって腫れの悪化が落ち着いてから使用することがある漢方薬です。微細血管の血液の流れも良くするといわれ、腫れを引かせる作用があります。急性期に桃核承気湯などを2~3日服用した後に、桂枝茯苓丸を数日服用するという使い方をする場合もあります。主に体力中等度の人に使用します。

治打撲一方・・・捻挫や打撲の代表的な処方で、痛みや炎症が強い、あるいは長引いているような場合に使用します。軽症から重症まで幅広く使用できますが、温める作用をもつ漢方薬なので、患部の熱があらかた引いてから服用すると腫れや痛みに効果的です。外傷後早めに使用する事で後遺症を防ぐ一方で、以前の古傷が痛むような場合にも適しています。比較的体質を選ばず服用できる漢方薬です。

桂枝加朮附湯・・・体を温める生薬や、余分な水分を体の外に出す作用のある生薬が含まれています。冷えると古傷が痛むような場合に効果的です。天候が悪くなると痛むという人は、湿気による冷えが原因となっていることが多く、特に関節には動きを滑らかにするための関節液があるため冷えがたまりやすくなります。比較的体力がなく、体に冷えがあったり水がたまりやすい人に向いている漢方薬です。

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