びまん性汎細気管支炎(DPB)に対する漢方薬

びまん性汎細気管支炎とは

持続的に咳や痰が出る病気のひとつに「びまん性汎細気管支炎(DPB)」があります。

気管支は枝分かれしながらだんだん細くなり、最終的に肺胞という空気を交換する場所につながっていますが、肺胞の手前の部分を呼吸細気管支と呼んでいます。

この呼吸細気管支に慢性的に炎症が起こっている状態をびまん性汎細気管支炎といいます。びまん性とは、炎症が肺全体に広がっている状態のことを意味します。

この病気は、欧米ではほとんどみられず、日本を始め東アジアに多くみられます。

一昔前は、死に至ることも珍しくなかった病気ですが、近年、治療法が確立され、症状が著しく改善されるようになりました。しかし、放っておくと呼吸不全を引き起こす可能性があるので、早目に治療することが大切です。

びまん性汎細気管支炎の原因はまだはっきりと解明されていませんが、副鼻腔炎を合併しやすいことから、上気道(鼻から喉まで)と下気道(喉から肺まで)の防御機能の低下が関連していると推測されています。

また、家族歴も多く報告されていることから遺伝的な要因もあると指摘されています。つまり、現在のところ、環境的要因と遺伝的要因の両方が関わって発症すると考えられています。

びまん性汎細気管支炎の症状

主な症状としては、慢性的な咳、黄色や緑色の痰、運動時の息切れが挙げられます。

特に痰の量が多いのが特徴です。これは細菌感染が起きているためです。そして、病気が進行するにつれて気管支が狭くなるため、呼吸困難を引き起こすようになります。

慢性副鼻腔炎を合併していると、黄色い鼻水、鼻づまり、臭いが分からないなどの症状も併せて現れます。

びまん性汎細気管支炎の治療方法

治療方法は、気管支の炎症を抑えるために第一選択薬としてマクロライド系の抗生物質であるエリスロマイシンを少量長期投与します。

1984年に、エリスロマイシンの少量長期療法が発見され、それにより治療予後(生存する確率)が著しき改善しています。

また症状に合わせて、痰を抑えるために喀痰調整薬を使用したり、呼吸をしやすくするために気管支拡張薬の吸入療法を行います。

びまん性汎細気管支炎に対する漢方薬

びまん性汎細気管支炎の治療は、西洋薬による治療が基本になります。その上で、必要時に補助的に漢方薬を取り入れていくと、より治療効果が期待できる場合があるといわれています。

漢方医学では、咳、痰の状態だけでなく、体全体のバランスをみて体質を見極めながら、本来のバランスの整った状態を取り戻していくために、個人に合った漢方薬を処方していきます。

びまん性汎細気管支炎は、肺に不調が起きている状態と考えますが、不調を引き起こす要因として多く見られるのが肺に熱をもっている状態と考えます。

これは、肺を潤す水分が不足して、乾燥するために熱が発生し、これは慢性の気管支炎に多くみられる状態です。

主に乾いた咳、息切れ、粘り気が強く切れにくい痰、口の渇き、微熱などの症状が現れます。このような場合には、水分を補い、余分な熱を冷ます「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」や「滋陰降下湯(じいんこうかとう)」が用いられます。痰が多い場合には「清肺湯(せいはいとう)」も用いられます。

また肺は気を取り入れる役割を果たすため、肺の機能が低下すると気が不足した状態になります。疲れやすい、息切れ、汗が出やすいなどの症状が現れる場合には補気剤である「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「六君子湯(ろっくんしとう)」も使用します。

びまん性汎細気管支炎は、最近になってこそコントロールできる病気になりましたが、病気が進行してしまってからでは改善が難しい難病であることには違いありません。

何よりも早期発見、早期治療が重要です。

咳や痰が長引くようなら、特に慢性副鼻腔炎を伴う場合、びまん性汎細気管支炎の可能性があるので、『自分で疑って漢方薬を試す』というのは避け、まずは早目に医療機関を受診するようにしましょう。

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