絨毛がんの漢方薬|絨毛がんの原因と症状

絨毛がんとは

絨毛とは、妊娠した時にできる胎盤の外側にある細い糸状の組織のことです。絨毛は子宮の壁に入り込み、これを通して母体の血液から酸素と栄養が胎児に送られます。

この絨毛に発生する病気を絨毛性疾患と言い、絨毛から発生する悪性腫瘍が絨毛がんです。発生頻度は妊婦1万人に1人という割合ですが、子宮に発生するがんの中では最も悪性度が高いがんで、進行が早く転移もしやすいのが特徴です。

絨毛がんの原因

絨毛がんの原因として最大のリスク要因は、「胞状奇胎」という絨毛性疾患です。胞状奇胎は卵子と精子の受精の異常によって起こるもので、子宮内に絨毛が変化してできた小さな嚢胞が多数集まりブドウの房のような形に見えます。

胞状奇胎の10~20%は子宮の筋肉の中に細胞の一部が侵入して「侵入奇胎」という腫瘍性病変を形成し、1~2%は悪性の絨毛がんへ移行すると言われています。絨毛がんは正常分娩や流産・死産の後に残った絨毛から生じることもありますが、正常分娩と比べて胞状奇胎の絨毛がんリスクは1000倍以上も高くなります。

絨毛がんの症状

絨毛がんの初期は正常妊娠と変わりないため、早期発見が難しい場合があります。よく起こる症状は不正出血で、妊娠終了後に異常な出血がある場合は早めの受診が勧められます。

また絨毛がんは母体の血液を介して遠隔転移しやすく、肺に転移すれば咳・血痰などの呼吸器症状が、脳に転移すれば頭痛・麻痺・意識障害などの脳腫瘍の症状というように、転移した場所によって様々な症状があらわれます。

絨毛がんの治療

絨毛がんは抗がん剤が非常に良く効くがんであることや、がん細胞が血液に接しているため抗がん剤による全身療法が効果的であることなどから、化学療法が治療の中心となります。

化学療法を行った後、必要に応じて子宮摘出術や転移病巣の手術などの外科療法が行なわれます。脳の転移病巣など、化学療法があまり有効でない部位に対して放射線療法が併用されることもあります。絨毛がんの治癒率は80~90%であり、治癒後に無事妊娠・出産する例も多くなってきています。

絨毛がんに使用されうる漢方薬治療と対策

絨毛がんの治療は抗がん剤による化学療法が基本となるため、副作用を軽減したり、がんや抗がん剤によって落ちた体力・免疫力を強化するといった点で漢方薬が効果を発揮します。

十全大補湯・・・「気」と「血」の両方を補う作用があり、全身の弱った状態や貧血傾向などを改善する漢方薬です。抗がん剤治療による体力や抵抗力の低下に効果があるほか、骨髄の造血機能を回復させる効果が証明されており、骨髄抑制の副作用に対しても用いられます。同様の効果がある漢方薬に人参養栄湯があり、不眠・不安などの精神症状を伴う場合はこちらが用いられます。

小柴胡湯・・・絨毛がんの化学療法に使われる薬剤には、重症な口内炎の副作用が起こるものが多いのですが、治療開始前から服用することで口内炎の発生が抑えられたという報告があります。小柴胡湯にはアレルギーの原因物質の産生抑制作用が証明されていて、これが抗がん剤による口内炎発生予防に関係するとされています。

六君子湯・・・胃腸の働きを整え、胃もたれや食欲不振などの症状を改善する作用があります。「気」を補う効果もあり、胃弱で元気がない人によく用いられる漢方薬です。抗がん剤治療による食欲不振にも効果的で、食べて気力・体力を増進することは治療に良い影響を与えます。

香蘇散・・・「気」の巡りを良くする作用や健胃作用があり、がんによる心身のストレスからくるうつ状態を改善する効果があります。がん以外の神経症状や胃腸虚弱にも用いられる漢方薬です。気分がふさぎがちで、喉に何かがつかえるような感じがある場合は半夏厚朴湯を、抑うつ状態が全身に及び倦怠感などの症状がある場合は補中益気湯などが用いられます。

当帰芍薬散・・・手術で卵巣を切除した場合、女性ホルモンの分泌がなくなることで閉経後の更年期障害のような症状が現れます。血の巡りを良くする効果などがある、更年期障害の女性にもよく用いられる漢方薬で症状の改善をはかります。体力が低下した人に用いる当帰芍薬散のほか、精神不安・不眠などがある場合は加味逍遥散など、体質や症状に合わせて数種類を使い分けます。

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