空気嚥下症(かみしめ呑気症候群)の漢方薬、原因と症状

空気嚥下症(かみしめ呑気症候群)とは

空気嚥下症とは無意識の内に空気を飲み込んでしまい、飲み込んだ空気が胃腸に溜まることによって、ゲップやおなら・腹部膨満感などの症状が起こることを言います。

原因はいくつもありますが、空気を飲み込む原因の一つに奥歯を食いしばってしまうことがあります。本来食事の時以外は奥歯を合わせる(=かみしめる)ことはないのですが、何らかの原因でかみしめが習慣的に行われていると、ものを飲み込むときの「嚥下反射」が度々起こることになります。

このとき唾液と一緒に飲み込まれた空気がお腹のガスとなるもので、かみしめによって起こる空気嚥下症は「かみしめ呑気症候群」と呼ばれることがあります。

かみしめ呑気症候群の原因

かみしめはストレスや緊張などの心因的なものが原因で起こるものが多いと言われています。例えば緊張することに対して奥歯を合わせて構える、集中して作業をしている時に奥歯が接触している、といったことを無意識に行っている人がいます。

このように習慣的にかみしめを行っている人は、上下の奥歯は接触している状態が普通だと思っていることも少なくないようです。また日中のかみしめがなくても、寝ている間にストレスで歯ぎしりや食いしばりをしていることが原因の場合もあります。

その他として、かみしめやすいうつむきの姿勢をとることが多いことや、うつ傾向などが原因となることもあります。

空気嚥下症(かみしめ呑気症候群)の症状

飲み込んだ空気が胃や腸に溜まることで次のような症状が起こりやすくなります。

・ゲップやおならが多くなる
・胃の不快感や胸焼けがある
・お腹が張る、お腹が鳴る
・食欲不振
・胸の痛みや重苦しさ

さらにかみしめ呑気症候群では、かみしめで顔や頭の筋肉が疲労することによる慢性的な肩こりや頭痛、あごや目の奥の痛みなどが起こることがあります。またおならやお腹の鳴る音が気になったり、何か重大な病気ではないかと心配したりすることで神経症を起こすケースもあります。

空気嚥下症(かみしめ呑気症候群)の治療

空気嚥下症は胃カメラなどの症状に対する検査をしても異常は見つからず、整腸剤などの効果もあまり期待できないのが通常です。

原因となるストレスを習慣や環境の面から整えたり自律訓練法を行う、うつ状態がある時は対応する治療を行うなどの治療法がとられます。

かみしめの対策としては奥歯を離すことを意識したり、マウスピースを使用する歯科的治療が行われることがあります。日頃の習慣を意識して変えることで症状がかなり軽減する場合もあるようです。

空気嚥下症(かみしめ呑気症候群)の漢方薬治療と対策

空気嚥下症を漢方では、「気」が滞ったときに起こる胃やお腹の張り・ゲップ・食欲不振などの症状と関係すると考えます。またストレスなど精神症状と関わりがある「肝」が影響を受けることで、肝に助けられている「脾(消化器)」の機能が低下するとされています。

このことから肝の働きを整えてストレスをコントロールしたり、気の巡りを良くしたりすることが不快な症状を改善するために効果的と考えられます。

半夏瀉心湯・・・ストレスで上がり過ぎた胃の気を下げる作用があり、ゲップやお腹の鳴るのを改善したり、消化吸収機能を整えたりする効果があります。一般的な神経性胃炎や消化不良にもよく使われる漢方薬です。体力中程度で、胃のつかえ感やポチャポチャと胃に水が溜まった音がするような人に向いています。

半夏厚朴湯・・・自律神経の緊張をゆるめ、気の巡りを良くして神経症状や胃腸症状、喉がイガイガして咳込むといった症状などを改善します。神経質なタイプで喉がふさがるような感じ(咽における気のうっ滞)がある人に良く効きます。

香蘇散・・・気の流れを良くして気滞を改善し、また胃の気を下げることで胃痛や吐き気などの症状を改善する作用があります。体力が虚弱で神経質な人の胃腸症状のほか、うつ状態や不眠、初期の風邪などに用いられます。

酸棗仁湯・・・精神を安定させ、イライラからくる不眠を改善する効果があります。また神経を司る「心」がストレスなどで消耗して「血(栄養)」が不足した状態を補う作用があります。虚弱な体質で神経が繊細なタイプの人に向いています。

加味逍遥散・・・ストレスなどで滞った肝の気を巡らせ、イライラや不眠・不安などの神経症状を改善する作用があります。比較的体力が弱く、冷えあるいは冷えのぼせ、不定愁訴が多いなどの症状がある人に向いています。女性の更年期障害にもよく使われる漢方薬です。

  • URLをコピーしました!
目次