アスペルガー症候群の原因と症状、使用する漢方薬

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群は、言語発達の遅れや知的障害を伴わないものの、社会生活上必要な能力に障害があることが特徴的です。言葉や知能に問題がないことから、軽度の場合は本人も周囲の人も気づかないことも少なくありません。

・想像力やコミュニケーションの障害

アスペルガー症候群では、相手の立場になって考える・共感する・空気を読むといったことが苦手なため、相手への気遣いができなかったり悪気が無く人を傷つけてしまうことがあります。また、例え話が理解できない・場に合わせた言葉づかいができない・一方的に自分ばかり話続けてしまうなど、コミュニケーションがうまくとれないことがよくあります。

・社会性の障害

その場の雰囲気を想像して適切な行動をとったり、コミュニケーションを自然にとったりということが苦手なため、円滑な社会生活を送るのが困難なことがあります。本人や周りの人が障害のせいであると分からない場合、本人の甘えであるとか変わった人だと思われてしまうこともあります。

・興味や関心の偏り、行動のパターン化

興味の対象が限定されていて、他のことにあまり関心を示さないことも特徴の一つです。しかし興味があることにはとても詳しく、非凡な能力を発揮することも少なくありません。また、決まった行動パターンや手順・スケジュールなどに強くこだわり、それらを急に変えることでパニックになってしまうこともあります。

ただその分こだわれる部分には優れた集中力を発揮し、一芸に秀で、音や臭い・感触などの感覚に敏感であったり、ある感覚に対して集中しきれるなどの特徴が見られることもあります。

アスペルガー症候群の診断と治療

アスペルガー症候群は上記のような特徴が見られることや、スクリーニング検査の結果などから総合的に診断されます。しかし診断は必ず受ける必要があるという訳ではありません。ただ、人間関係などがうまくいかない原因を明らかにし周囲の理解を得る、福祉系サービスの利用等必要な対策をとる、など生活しやすくするために診断を受けるということができることがあるので、そういう意味で診断の意義があります。

アスペルガー症候群の根本的な治療法は今のところなく、認知行動療法など社会生活を送りやすくするための訓練が治療の中心となります。また興奮などの症状や、対人関係などがうまくいかないストレスから生じる二次的な精神神経症状に対して、抗うつ薬や抗精神病薬が用いられることもあります。

効果的な漢方薬治療と対策

漢方ではアスペルガー症候群に見られるような症状は、「気滞(活動エネルギーである気の流れの滞り)」や、自律神経に関わる「肝」・精神活動に関わる「心」の不調などが原因ととらえ、それらを改善する漢方薬を用いることで症状の緩和や、二次的な精神症状の改善を目指し使用されることがあります。

抑肝散・・・肝の働き過ぎを抑えて高ぶった神経を静め、イライラや興奮・不眠・夜泣きなどを改善する作用があります。比較的体力がなく、イライラして怒りっぽく、神経興奮があるような人に向いています。乳幼児から高齢者まで幅広く使える漢方薬です。さらに体力が弱く、ストレスによる胃腸症状などがある人には抑肝散加陳皮半夏を使用します。

柴胡加竜骨牡蛎湯・・・肝の機能を整えて気の巡りを改善し、精神を安定させる作用があります。比較的体力があり、小さなことでもイライラ・不安感・不眠などの症状が出やすい、みぞおちのつかえる感じや体内に水の滞りがあるといった人に向いています。比較的体力が弱く、みぞおちのつかえや水の停滞がない人には桂枝加竜骨牡蛎湯を使用します。

甘麦大棗湯・・・心を滋養して、神経興奮や精神不安を静める作用がある生薬が組み合わせられている漢方薬です。興奮状態が強く、激しく起こったり泣いたりするような症状によく用いられます。

加味帰脾湯・・・気と血を補って体を元気にし、胃腸の調子を整え、心を養う作用があります。体力が弱って疲労し、精神不安や不眠などの症状が出ているものに効果を発揮します。虚弱な体質で貧血傾向やのぼせ・ほてりなどを伴う神経症状がある人に向いています。

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