偽痛風の原因と症状、使用する漢方薬

偽痛風とは

偽痛風とは、主にピロリン酸カルシウムの結晶が関節に蓄積し、発作的に関節の痛みや腫れを起こす病気です。痛風と似た症状が現れますが、尿酸の結晶が原因である痛風に対して、尿酸以外の結晶が原因となるものが偽痛風と呼ばれます。通常60歳以上の高齢者に多く、男女比では女性がやや多いと言われています。

偽痛風の原因

偽痛風の原因は、関節軟骨に沈着したピロリン酸カルシウムの結晶が関節内に出てくることで、白血球による炎症反応が起こるためと考えられています。ピロリン酸カルシウムは新陳代謝により生成し肝臓で分解されますが、加齢により肝臓の機能が低下することで分解しきれず、関節軟骨に沈着すると考えられています。ほかにも遺伝や、副甲状腺機能亢進症や痛風など他の病気によるものが原因としてありますが、明確にはなっていません。

偽痛風の症状

偽痛風の発作は、関節に突然痛みや腫れ・熱感などの症状が起こります。手・足・肘・首など全身の様々な関節に起こりますが、膝の関節に最も多く見られます。

痛風と似た症状で、関節の痛みと腫れ、熱が出ます。発作は1週間位の内に軽快する場合が多いようですが、痛みやこわばりが長く続くこともあります。病型によりA~F型の6つに分類され、関節リウマチや変形性関節炎と似た症状が現れるものや、所見はあるが無症状のものなど様々です。

偽痛風の診断と治療

偽痛風は、関節液にピロリン酸カルシウムの結晶が認められること、関節軟骨の石灰化が見られること、血液検査により痛風や関節リウマチなど症状の似た他の病気ではないと確認されたことなどから診断されます。

膝の関節は関節液の量が多く、穿刺することが容易で診断に重要です。関節が一つしか腫れていない場合、感染症の除外のために穿刺が必要とされています。

治療は基本的に急性期に炎症を抑える治療をします。発作の痛みや炎症を抑えるための非ステロイド系消炎鎮痛剤やステロイドの投与(内服や注射)、関節液の排出、安静、冷湿布などが行なわれます。発作を繰り返す場合は、白血球の働きを抑える薬(コルヒチン)を毎日内服することがあります。

効果的な漢方薬治療と対策

偽痛風の漢方薬治療では、発作時には痛風や他の関節炎と同様に、気血水の流れを良くするもの、熱や炎症を取り除くものなどを用いて症状の改善をはかります。

また漢方治療では薬だけでなく、日々の生活習慣や食事などを通じて生命力を養う「養生」が重視されます。偽痛風の原因となる肝機能の低下を予防するために、睡眠を十分にとり、「肝」を養う食物を取り入れることも治療に役立つと期待できます。

桂枝加朮附湯・・・血の巡りを良くして体を温め、体内の余分な水を除く作用があります。体力があまりなく、冷えがあり、口渇や尿量減少など水の偏りがある人の関節痛や神経痛などに用いられます。

越婢加朮湯・・・体内の熱を冷まし、余分な水を取り除いて、関節や筋肉の腫れや痛み・熱感などを改善する作用があります。比較的体力があり、むくみなど水の停滞がある人に向いています。

防已黄耆湯・・・水分代謝を良くして余分な水を除き、皮膚の機能を改善して過剰な発汗を抑える作用があります。特に膝関節の痛み・だるさ・水がたまるといった症状に効果的です。汗かきで筋肉が柔らかい水太りタイプの人の、主に下半身のむくみや関節炎に用いられます。

柴苓湯・・・炎症を抑え、免疫機能を調節する働きがある「小柴胡湯」と、体内の余分な水を除く作用がある「五苓散」を合わせた処方です。体内で作られるステロイドと似た作用があり、ステロイド療法の補助やステロイドの減量目的でもよく使用される漢方薬です。関節リウマチや痛風の治療にも用いられています。

食養生としては、肝を養い元気にするのは酸味のものであり、梅干しや酢の物・かんきつ類などを適量摂るのが良いとされています。他にも色の濃い緑黄色野菜や、豆腐・納豆などの大豆製品、牡蠣・シジミなど貝類がおすすめの食材です。対して、アルコールや甘いもの、スナック菓子、高脂肪・高タンパク食・食品添加物などの摂り過ぎは肝臓に負担をかけるため注意が必要です。

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