前庭神経炎の原因と症状、使用する漢方薬

前庭神経炎とは

「前庭神経」とは、体の平衡感覚を保つ三半規管からの情報を脳に伝える神経です。前庭神経炎とはこの前庭神経が障害されてめまいや吐き気・ふらつきなどの症状が起こる病気です。

前庭神経炎の原因ははっきりしていませんが、風邪を引いた後に発症することが多いことから、ウイルス感染が主な原因と考えられています。他に循環障害も原因とする説もあります。

前庭神経炎の症状

前庭神経炎の症状は、突然のぐるぐる回るような(回転性)激しいめまいで始まることが多いです。めまいはじっとしていても治まらず、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

このような症状が数日、あるいは1週間以上続くこともあり、その後徐々に治まってきます。このような激しいめまいを繰り返すことはありませんが、歩行時や体を動かしたときにめまいやふらつきを感じるといった症状が数ヶ月続くことが多いです。

前庭神経炎の症状では、耳鳴りや難聴など聴覚症状が起こらないことが特徴的です。

前庭神経炎の治療

前庭神経炎の治療はまず安静が大切であり、回転性めまいの症状が強い場合は入院が必要になることもあります。薬物治療としては、症状を緩和するための抗めまい薬や吐き気止め・抗不安薬、内耳の血流を良くする循環改善薬、前庭神経の炎症を抑える副腎皮質ステロイドなどを使用します。

急性の症状が治まった後に続くめまいやふらつきには、機能が低下した前庭神経の代わりに脳の機能を高めて平衡感覚を保つためのリハビリが有効となります。例として、

・顔の前で動かした手の親指を、顔を動かさずに目で追う

・固定した親指を見ながら頭を動かす

などの方法があります。

前庭神経炎で使用する漢方薬治療と対策

漢方では気(活動エネルギー)・血(血液とその働き)・水(体液など体に必要な水分の巡りやバランスが悪くなることで、体に様々な不調が起こると考えます。

前庭神経炎に関わらずめまいにおいては、気の流れが滞る、血そのものの不足や血行不良、水の代謝が良くない、気が上(頭の方向)にのぼって自律神経の乱れが生じる、などが原因として挙げられます。特に体にたまった水はめまいの大きな原因と考えられています。

抑肝散加陳皮半夏・・・自律神経に関わる「肝」の気の巡りを良くし、余分な水を除き、胃腸の働きを整えて吐き気などを抑える作用があります。体力があまりなく、ストレスでイライラや不安感がある、めまいやふらつき・神経症状などがある人に向いています。

半夏白朮天麻湯・・・胃腸の調子を整えて水の代謝を良くし、胃に溜まった水が原因となる頭痛やめまいを改善する作用があります。胃腸があまり丈夫でなく、疲れやすく冷えがあるような人に向いています。

五苓散・・・体内にたまった水を除く代表的な漢方薬です。余分な水分が原因で起こる頭痛やめまいに効果的です。口が渇いて水分をたくさん摂る割には尿として出る量が少ない、むくみがあるといった人に向いています。

苓桂朮甘湯・・・体を温め、胃腸の機能を整えて、体内の水のバランスを良くして動悸やめまい・頭痛などを改善する作用があります。めまいでは特に立ちくらみや起き上がった時などのふらつきに効果的です。比較的体力が弱く冷えがあり、水の停滞があるが口渇はあまりない人に向いています。

釣藤散・・・肝の働きを整え、胃腸の調子を良くして余分な水分を除き、上半身にのぼった気を抑えてめまいや頭痛を改善する作用があります。体力中程度でのぼせなど体内に熱をもち、イライラや高血圧傾向がある人に向いています。

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