筋性斜頸の原因と症状、使用する漢方薬

「斜頚」とは、首が傾いて頭が曲がった方向に固定している状態のことを言います。筋性斜頸は、耳の後ろから鎖骨や胸骨へとつながる胸鎖乳突筋という筋肉にこぶのようなものができ、筋肉が収縮して固まった状態(拘縮)になることで起こります。

原因ははっきりしていませんが、分娩時に首の筋肉が傷害を受けることによるものと考えられ、骨盤位分娩(逆子のこと)では発生する頻度がやや高くなると言われています。

斜頚の原因はいくつかあり、他にも骨の形に問題がある骨性斜頸や、目を動かす筋肉に原因がある眼性斜頸などがあります。

筋性斜頸の症状

筋性斜頸は「先天性筋性斜頸」とも呼ばれ、新生児の時期から症状が現れます。左右どちらかの拘縮が起きている側に首が傾き、顔は反対側の方を向いている姿勢になります。顔を動かして逆側(拘縮が起きている側)に回すことができない状態です。筋性斜頸を長く放置していると、背骨が曲がってくる、顔の変形が起きるなど他の部位にも影響が出てきます。

筋性斜頸の治療

首の筋肉にできたこぶは徐々に小さくなり、1歳6か月頃までに自然治癒する場合が多いので、経過観察が一般的となります。顔の向きが正面になるように枕の位置を調節したり、授乳や呼びかけを斜頸がある側からするなどして経過を見ます。首の筋肉のマッサージなどは悪化の原因となるので行わないようにします。

この時期を過ぎても筋肉の拘縮が改善しない場合は、必要に応じて胸鎖乳突筋の一部を切る手術を行います。拘縮が残っていても機能的・外見的(変形など)に問題が無ければ手術は行わない場合もあります。

筋性斜頸で使用される漢方薬と対策

漢方では筋肉の強い緊張で起こる斜頚は、筋肉や自律神経と関わりがある「肝」が過剰に働いていることや、それによって気(元気などの活動エネルギー)の巡りが悪くなっていることに原因があると考えます。このため肝の機能を整えるものや、筋肉の緊張を緩める作用をもつ漢方薬が有効と考えられ使用されることがあります。

柴胡桂枝湯・・・肝の働きを調整して気の巡りを良くし、自律神経を整え、炎症や痛みを抑える作用があります。風邪の後期から消化器系疾患、ストレスからくる病気など幅広く用いられる漢方薬です。体力中程度でイライラ・不眠などストレスの影響を受けやすい、頭痛や首肩の凝り、胃痛などの症状があるような人に向いています。

柴胡加竜骨牡蛎湯・・・肝の働きを整えて精神を安定させ、ストレスに伴う諸症状を改善する作用があります。比較的体力があり、ストレスによるイライラや精神不安などがある、みぞおちの辺りに張った感じがあるといった人に向いています。

抑肝散・・・肝の働き過ぎを抑えて神経の高ぶりを鎮め、筋肉の緊張を緩める作用があります。体力があまりなく、イライラして怒りやすい・癇癪を起こす・小児なら夜泣きが多いなど神経の興奮があるような人に向いています。より体力が弱い人や胃腸の不調を訴える人には抑肝散加陳皮半夏を使用します。

芍薬甘草湯・・・肝の機能を整え、筋肉の痙攣やつりを緩め、痛みを抑える作用があります。骨格筋・内臓筋の痙攣による症状に、あまり体質を問わず広く用いられる漢方薬です。

葛根湯・・・発汗・解熱作用などのほか、筋肉の凝りを緩める作用があり、特に首筋や肩の凝りに効果がある漢方薬です。比較的体力があり、あまり汗が出ないような人に向いています。

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