唾液腺炎(耳下腺炎や顎下腺炎)の原因と症状、使用する漢方薬

唾液腺炎とは

唾液腺は唾液を産生する器官であり、左右一対ずつある「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」の大唾液腺と、口腔内の様々な部分に存在する「小唾液腺」があります。

何らかの原因でこの唾液腺に炎症が起こり、痛みや腫れ・唾液の分泌不良などの症状が起こるものを唾液腺炎といいます。

唾液腺炎の種類

(1)耳下腺炎

耳の下にある「耳下腺」という唾液腺が炎症を起こしたものです。

・流行性耳下腺炎

いわゆる「おたふくかぜ」であり、ムンプスウイルスというウイルスの感染によって起こります。2~3週間の潜伏期間の後、両側または片側の耳下腺の腫れ・痛み・発熱などの症状が見られ、1~2週間で落ち着くのが一般的です。

一度かかると終生免疫がつくため、基本的にその後かかることはありません。治療は、患部を冷やして痛みを緩和する・酸味のものや硬い食物を避ける(唾液分泌量が増加して痛みが増すため)などの対症療法のみになります。

・急性化膿性耳下腺炎

口腔内の唾液を排出する管の出口から細菌が入り込み、耳下腺に感染したものです。感染した側の耳下腺の痛み・皮膚表面の発赤を伴う腫れ・耳下腺内に溜まった膿が口腔内に排出される、などの症状が起こります。抗生物質や消炎鎮痛剤を投与し、口内を清潔に保ちます。切開して膿を排出する処置を行うこともあります。

・反復性耳下腺炎

耳下腺炎を何度も繰り返し発症します。多くは免疫力が弱い小児期に発症しますが、大人にも見られます。原因は、口腔内細菌の感染やアレルギー・唾液の分泌不良などとも言われますが、はっきりしていません。耳の下の腫れが見られますが痛みは軽いことが多く、熱が出ることもほぼありません。通常は2~3日で症状が治まります。治療は抗生物質や消炎鎮痛剤の使用が必要に応じて行われますが、体調が良ければ通常通りの生活が可能です。

顎下腺炎

(2)顎下腺炎・・・顎の下にある「顎下腺」という唾液腺が炎症を起こしたものです。

・急性化膿性顎下腺炎

唾液を排出する管の出口から細菌が入り込み、顎下腺に感染することで起こります。顎下腺の腫れや皮膚の発赤・痛み・膿の排出などの症状が起こります。治療は抗生物質や消炎鎮痛剤の投与を行い、膿瘍(組織に部分的に膿が溜まった状態)がある場合は切開して取り除きます。

・唾石症

唾液腺や唾液を排出する管の中に石ができるもので、額下腺にできることが最も多いです。石が排出管につまってしまうと唾液の分泌が妨げられ、額下腺の腫れや痛みの症状が起こります。急性化膿性顎下腺炎を合併すると、症状の悪化や膿の排出が見られるようになります。石は自然に排出されることもありますが、排出されない場合は手術や内視鏡によって石を取り除く治療を行ないます。

その他

ガマ腫(舌下腺に唾液が溜まって腫れるもの)、小唾液腺炎(口腔粘膜の腫れ・痛み・発赤などが起こる)、など

唾液腺炎の時に使用される漢方薬治療と対策

唾液腺炎の漢方薬治療では、炎症を抑え化膿による膿を排出するものが主に使用されています。より早く症状を落ち着かせる効果や、炎症を起こしやすい体質を改善するなどの効果があります。

葛根湯・・・体表を温め、発汗・解熱・首筋などの凝りをほぐすなどの作用があります。風邪の初期の他にも、副鼻腔炎や中耳炎・耳下腺炎など特に首から上の症状に適しています。比較的体力がある人で、首や肩の凝りがあり、症状の急性期で寒気がして汗が出ないような状態に効果的です。

排膿散及湯・・・化膿性疾患の熱や炎症を冷まし、膿などを排出する作用があります。副鼻腔炎や中耳炎・歯槽膿漏・ニキビなどにも用いられます。漢方の抗生物質とも呼ばれる漢方薬で、あまり体質を問わず広く使用できる処方です。

荊芥連翹湯・・・血を補って血行を良くし、体内の熱や炎症を抑え、膿や痰を排出する作用があります。体質的に解毒する力が弱く、炎症を起こしやすいタイプ(解毒症体質)の人に向いている漢方薬です。鼻・喉・皮膚などのやや慢性化した炎症性疾患に効果的です。

柴胡清肝湯・・・主に小児の解毒症体質に使用される漢方薬です。荊芥連翹湯と似た使用目標ですが、神経質で体力が弱く、肌が乾燥して浅黒いタイプで、炎症やアレルギー性疾患を起こしやすい人に向いています。

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