花粉症の漢方薬(効果・使いわけ)

大気汚染、ストレスなど、いくつもの生活環境の変化で花粉症を発病する人は年々増えています。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状は西洋薬で改善されますが、眠気や鼻喉の粘膜乾燥などの副作用が現れる抗ヒスタミン薬などは、日常の生活に支障をきたす場合があります。

「眠くて勉強がはかどらない」、「会議なのに口が乾いてうまく話せない」、「薬で胃もたれがつらい」などで西洋薬の服用を避けたい場合、副作用の少ない漢方薬を選択する方も居ます。また、西洋薬の使い方でも、副作用を減らし効果を強められる方も居ます。

眠気が出る花粉症の薬としてイメージされる、「抗ヒスタミン薬」と言われる薬は、アレルギー反応ででる「ヒスタミン」という物質を出すのを抑えるため、症状を和らげます。この薬は、症状が出る前に飲む薬か、症状が出てから飲む薬かの違いを理解して使うべき薬です。花粉症のアレルギーは肥満細胞の上のIgEという部分に抗原が乗ることでヒスタミンが放出する、というプロセスがあり、薬が乗れば症状が出ない。アレルゲンが乗れば症状が出る。という結果になります。

この、「抗原が乗る」か「薬が乗る」かの勝ち負けが、症状を決めます。抗原が乗るのは、一度のれば終わりではなく、乗ったり外れたりしながら次第に定着していきます。初めから、「薬が乗っている」状態であれば、アレルゲンが乗れなくなるため症状は劇的に和らぎます。あらかじめ薬を載せておくために、出掛けるよりも前に飲んでおくことが重要です。前日の夜や当日の朝起床時などに飲み、薬の濃度が高い状態で体を馴染ませておいてから外に出ると、症状がそれ以前より改善することがあります。

また、どの薬がどの作用をするのかを知っておくことも必要です。鼻づまりがひどい時には、抗ヒスタミン剤だけでなく、+血管収縮作用のあるものが適しています。ディレグラ®などです。点鼻血管収縮剤に加え、落ち着いて来たらロイコトリエン拮抗薬なども有用です。

同様に、点鼻のステロイドも有用です。鼻の外側に向かって噴霧します。一時的に併用することで、全体のコントロールが改善することがありますので、そこは担当医と相談しましょう。

また漢方薬の服用もするとなった同時に、日常生活の中でも花粉症などのアレルギー症状の原因を考え、食事の摂り方などを見直すことがとても大事になってきます。花粉症の期間だけでも食事の改善をすると、漢方薬の効き目も違ってきますので是非実践してください。

【花粉症におすすめの漢方薬】

 『小青竜湯』 ◇冷えて透明な鼻水が出る人に ‐

「花粉症」といえばどこの耳鼻科でも出される漢方薬として、小青龍湯は世の中に知られてきました。しかし人の体質はそれぞれ異なるため、誰にでも効果があるわけではありません。この薬は身体が冷えてむくみやすく、透明の鼻水がツーとたれ落ちるようなタイプの人で、体力が中程度以上の人に適しています。構成生薬のうち麻黄と細辛が身体を強く温めて、半夏が胃に滞る水余分な分を取り去ります。

花粉症などのアレルギー性鼻炎はもちろん、鼻かぜにも使われ、くしゃみや痰などの症状を改善します。ちなみにこの麻黄は多くの漢方薬で使われ、他の生薬との相互作用によって温めるだけでなく、咳を鎮めたり気管支を広げたりと、様々な力を発揮します。ただし、循環器系の既往歴がある人や高血圧の人に影響を及ぼす可能性がありますので、必ず服用前に専門家に相談するようにしてください。また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。

小青竜湯(ショウセイリュウトウ)の作用・副作用・生薬の成分

苓甘姜味辛夏仁湯』◇体力がない人の花粉症の咳や鼻水に ‐

鼻水は小清竜湯と同じく、透明で粘り気がないことが特徴ですが、この苓甘姜味辛夏仁湯は構成生薬に麻黄が含まれないため、体力がない人や胃腸虚弱の人、血圧が高めの人でも服用できます。咳を鎮め痰の切れをよくする杏仁や、身体をやさしく温め冷えて滞った水分を取り去る複数の生薬で構成されており、ゼイゼイ喘息のような症状や、力のない湿った咳や痰が出るタイプの花粉症に適しています。

甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。

 ⇒苓甘姜味辛夏仁湯の作用・副作用・生薬の成分

麻黄附子細辛湯』 ◇冷えて虚弱な人の花粉症に ‐

いつも身体の中に冷えがある、体力虚弱な人や高齢者に適しています。麻黄、細辛、附子のシンプルな構成で、全てが熱性の生薬であるため、身体を温めて新陳代謝を促し、気や血の巡りをよくすることで症状を改善します。

構成生薬の麻黄には、小青龍湯と同様強力な抗アレルギー作用があるため、気管支を拡張するため喘息や咳の症状を緩和しますが、循環器系の既往歴がある人や高血圧の人に影響を及ぼす可能性がありますので、必ず服用前に専門家に相談するようにしてください。

附子については、のぼせ、舌のしびれなど中毒症状が現れる場合があるため注意が必要です。ただし、一般薬店で市販されている漢方薬は医療用に比較して薬の濃度が薄くなっているため、実際症状が現れるケースは少ないようです。

麻黄附子細辛湯の効果・効能

葛根湯加川芎辛夷』 ◇鼻づまりがひどい人に -

花粉症の鼻づまりは、炎症が起きて鼻の粘膜が腫れ、空気の通り道を狭めてしまっていることが原因です。葛根湯加川芎辛夷は、身体を温める「葛根湯」に「川芎」と「辛夷」を加えた漢方薬です。辛夷は鼻の血管を収斂させることで鼻づまりを改善し、川芎は血液の流れを促進して身体を温めることで鼻づまりや鼻水を改善します。副鼻腔炎など慢性症状にも使われることがあります。

麻黄が含まれるため、著しく体力のない人や汗が多く出る人、高血圧や循環器系の障害や既往歴がある人は服用前に必ず専門家に相談してください。また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。

葛根湯加川芎辛夷の効果・効能

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