葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)ツムラ2番の効能・効果、副作用

葛根湯加川芎辛夷の特徴

かぜ薬としてよく用いられている葛根湯に、鼻づまりに効果的な辛夷(シンイ)と、血行をよくする作用や鎮痛作用のある川芎(センキュウ)を配合した、日本で創薬された漢方薬(経験処方)です。

頭痛、肩こりの症状に加えて、鼻風邪(風邪のときの鼻づまり)、風邪による鼻炎、蓄膿症、慢性鼻炎に用いられています。本朝経験方(ホンチョウケイケンホウ)に記されています。

次のような人に有効とされる漢方薬です。

  • 比較的に体力があり、頭重感(頭の重い感じや頭痛)や肩こりを伴う
  • 風邪で鼻づまりがある(鼻づまりがある、鼻汁がでる)
  • 慢性鼻炎
  • 蓄膿症(副鼻腔炎)
  • 後鼻漏がある

葛根湯加川芎辛夷の作用、効果

葛根湯(カッコントウ)に含まれている麻黄(マオウ)には、エフェドリンという成分が含まれ、交感神経や中枢神経を刺激する作用があります。この成分は発汗作用、気管を広げ、咳を抑える作用の他にも、血管を収縮し、鼻粘膜の腫れを抑えます。

さらに、鼻症状に効果のある川芎(センキュウ)と辛夷(シンイ)の成分が加わり、鼻を通します。

そのため、アレルギー性鼻炎、花粉症に対する治療薬としても使用されます。

葛根湯加川芎辛夷の効果

花粉症に対しても、相性のよい方であれば効果を期待できます。葛根湯加川芎辛夷は体力のある人向けの薬です。鼻炎に対してよく用いられる、小青竜湯に風邪症状を伴っているような方や、小青竜湯を飲める体力以上に体力があるという方に対してとてもよく聞いた、という報告があります。小青竜湯を飲んでいて、鼻汁の粘性が高かったり風邪のような症状を伴っているときは、切り替えて改善する場合があります。

子供(小児科)での慢性副鼻腔炎や膿性鼻漏、後鼻漏に対して、臨床的な改善効果が報告され、使用されています(引用:耳鼻咽喉科臨床, 1984 77(1),p153 , 漢方医学.2005, 29(4), p175より)

葛根湯加川芎辛夷は、麻黄を含んだ製剤なので、眠気を押さえ興奮方向に働くため、抗ヒスタミン剤で出やすい眠気を押さえる方向に働くというメリットがあります。

葛根湯加川芎辛夷の成分・効能

葛根湯加川芎辛夷は、下記の9種類の生薬からなります。

葛根(カッコン)マメ科のクズの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は発汗作用、解熱作用、鎮痛作用、うなじや背中のこわばりを治す働きがあります。

麻黄(マオウ)マオウ科のシナマオウの茎を乾燥させたもの。薬効は発汗、鎮咳作用の他、気管支のけいれんを抑制する作用があります。交感神経や中枢神経を興奮させる作用のあるエフェドリン類が含まれていますので、高齢者や心臓病・高血圧のある人には注意が必要です。

桂枝(ケイヒ):クスノキ科のニッケイの樹皮または枝を乾燥させたもの。薬効は、「気」の巡りを整え、発汗によって地表の毒を除く働きがあります。解熱、鎮静、血行促進、抗血栓にも効果があります。

芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の巡りを良くする生薬で、血行を良くします。筋肉のけいれんを鎮め、鎮痛作用もあります。

甘草(カンゾウ)マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。

生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える働きがあります。

大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。胃腸の機能を整えたり、精神を安定させ、筋肉の緊張による疼痛や腹痛などの痛みをやわらげる作用があります。

川芎(センキョウ):セリ科のセンキュウの根茎を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」と「気」の巡りを抑止、からだのバランスを整えます。鎮静、鎮痛、補血、強壮作用があり、頭痛やのぼせ、貧血、月経異常などの婦人病に用いられることが多いです。

辛夷(シンイ):モクレン科コブシまたは同属植物の蕾(つぼみ)を乾燥したもの。薬効は、発散作用、排膿作用、筋弛緩作用、抗アレルギー作用があり、鎮静、鎮痛薬として、頭痛、頭重感特に鼻炎、蓄膿症などに効果があります。辛夷は外界と通じる通路(たとえば鼻やのどの空気の通り道)を開き、風寒を去る作用があるとされます。

葛根湯加川芎辛夷の副作用

 体力の充実している「実証」向けの漢方ですので、体の虚弱な「虚証」の人、胃腸の調子の悪い人、また、発汗の多い人には向きません

麻黄が含まれていますので、不眠、頻脈、動悸、血圧上昇などの副作用が起こる可能性があります。高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人は慎重に用いる必要があります。

また、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。

葛根湯加川芎辛夷の服用方法(飲み方)

ツムラ葛根湯加川芎辛夷エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的には、葛根湯と同様に、風邪の急性期に用いる薬ですので、発病後1~2日目に服用するのが最も効果的です。

見た目は淡褐色~黒褐色の粉末で、味は口に入れるときにはやや甘いですが、後半で苦みや辛みが出てきます。使用期限は製造後5年ほどとされています。

小児(子供)の場合、お湯に溶かして口の中に塗って投与する、という方法を推奨している人もいます。

参考文献
・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・今日から使える漢方薬のてびき(講談社)
・漢方薬の服薬指導(南山堂)
・治りにくい病気の漢方治療(創元社)
・漢方薬の選び方・使い方(土屋書店)
・漢方相談ガイド(南山堂)

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