芍薬はボタン科の芍薬の根の外皮を除去し乾燥させた、補血薬に分類される生薬の一つです。中国、朝鮮、日本を産地とし、モノテルペノイド配糖体やタンニン類を成分としています。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と江戸時代から言われる通り、芍薬の花はすらりとまっすぐに伸びる美しい花です。バラの香りに似ていることから、ヨーロッパでは「5月のバラ」と呼ばれています。
【中医学的に見る芍薬の効能】
肝、脾を帰経とし、味を苦、酸、性を微甘とする生薬です。生理不順、生理痛、不正性器出血、寝汗、汗かきに用います。補血作用があるので、婦人科の疾患によく使用されます。また、脇腹の張り、腹痛、四肢の痙攣や疼痛にも用います。
【芍薬を使う主な漢方薬】
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
:生薬「熟地黄」のページを参照して下さい。当帰はこの漢方薬において、補血、活血による止痙、止痛作用を発揮しています。
- 加味逍遥散(カミショウヨウサン)
:不定愁訴とされてしまうことも多い、気分の変動が多い症状に良く使用されます。芍薬はこの漢方薬において、補血による柔肝作用(=肝気を改善すること)を発揮しています。
- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
:生薬「桂皮(ケイヒ)」のページを参照して下さい。芍薬はこの漢方薬において、活血、化瘀作用を発揮しています。
- 四物湯(シモツトウ)
:生薬「熟地黄」のページを参照して下さい。芍薬はこの漢方薬において、補血作用を発揮しています。
- 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
:生薬「甘草」のページを参照して下さい。芍薬はこの漢方薬において、止痙、止痛作用を発揮しています。
- 葛根湯(カッコントウ)
:生薬「葛根」のページを参照して下さい。芍薬はこの漢方薬において、発汗しすぎるのを抑える作用を発揮しています。
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
:生薬「五味子」のページを参照して下さい。芍薬はこの漢方薬において、発汗しすぎるのを抑える作用を発揮しています。
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
:腹痛を伴う胃腸炎や所謂お腹の風邪に使用されることが多い漢方薬です。芍薬はこの漢方薬において、柔肝・補血・止痙作用を発揮しています。
【西洋医学的に見る芍薬】
芍薬に含まれる主なモノテルペノイド配糖体であるペオニフロリンには、鎮痛、鎮痙、鎮静が認められており、収斂、緩和、鎮痙、鎮痛薬として、筋肉痙攣、腹痛、胃痙攣、頭痛、婦人病薬などに応用されています。