加味逍遙散(カミショウヨウサン):ツムラ24番の効能・効果、副作用

加味逍遙散の特徴

月経異常や更年期障害など、女性特有の症状に効果があり、産婦人科ではよく処方される漢方薬です。

めまいや頭痛のほか、手足の冷えやのぼせ、イライラ、不安、うつ症状など、女性の不定愁訴といわれる様々な心身の不調に用いられます。

次のような人に有効です。

  • 虚弱体質
  • のぼせがある
  • 月経困難、月経不順がある
  • 上半身の熱感・発作性の発汗
  • イライラ、精神不安がある

加味逍遙散の作用・効果

「逍遙」とは、ぶらぶら歩くという意味ですが、様々に移り変わる症状に効果があるとして「加味逍遙散」と名づけられました。

産婦人科で用いられる3大漢方薬である当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸は、いずれも血液の循環をよくする漢方薬ですが、加味逍遙散は「気逆」からくる神経の高ぶりにも、「気うつ」からくる抑うつにも効果があります。

更年期障害に対する加味逍遙散の効果

更年期障害に対しては、全国28施設を対象に加味逍遥散とホルモン補充療法とのランダム化比較試験が行われています(ランダム化比較試験とは、薬が効果を持っているか調べるためのとても有用な試験とされているものです)

試験の結果抑うつ症状は、加味逍遙散群と ホルモン補充療法群両方において投与 4 週後より有意な改善を認め、不安症状も投与 4 週後より有意な改善を認め、睡眠はホルモン補充療法の方が効果が出るのが早かったものの、加味逍遙散群でも投与8 週時で睡眠が改善したという報告があります。

参考:更年期障害の精神神経症状に対するホルモン補充療法,加味逍遙散 投与の効果の比較.日更医誌17(Suppl): 109, 2009
入眠障害、興奮・イライラ、めまい、手足のしびれに対する改善度合いは、ホルモン補充療法よりも良かったというデータもありました。

婦人科癌術後の体調不良(主に卵巣欠落症状)に対する効果

癌の手術後の成績は良くなってきている一方、その後のだるさや不快な諸症状が残る・新しく出てくる場合があります。西洋医学では原因がわからず、だるいことで苦労しているという方に、加味逍遙散を用い改善する場合があります。(もちろん癌が治癒していることが前提です)

日本東洋医学会の「漢方治療エビデンスレポート 2010 ─ 345 の RCT(EKAT2010)」という漢方薬の科学的な研究結果にも掲載されていますが、卵巣欠落症状に対して加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・補中益気湯・十全大補湯が有効であったと報告されています。特に不安に感じやすいかたや、落ち込んでしまうという方には効果を発揮する場合が多いと感じます。

加味逍遙散の成分・効能

加味逍遙散は、10種類の生薬からなります。

柴胡 (サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさまし、「気」のうっ滞を除く作用があります。

芍薬 (シャクヤク) :ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の巡りをよくし、血行を促進します。筋肉のけいれんを鎮める作用や、鎮痛作用があります。

蒼朮 (ソウジュツ) :キク科のホソバオケラの根を乾燥させたもの。薬効は、「水滞」の改善し体内の水分代謝を正常にする働きがあります。

当帰 (トウキ) :セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを良くします。

茯苓 (ブクリョウ) :サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、利水作用があり、余分な水を排泄する作用があります。胃腸を整え、精神を安定化する作用もあります。

山梔子 (サンシシ):アカネ科のクチナシの果実を乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさまし、精神を安定にさせる作用があります。

牡丹皮 (ボタンピ):ボタン科のボタンの根皮を乾燥させたもの。薬効は、血行をよくして、「熱」をさます作用があります。「血(ケツ)」の滞りによる症状の改善に用いられます。

甘草 (カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張をゆるめる作用があります。

生姜 (ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整え、食欲増進作用があります。

薄荷 (ハッカ) :シソ科のハッカの草を乾燥させたもの。薬効は、解熱作用、発汗作用、胃腸症状改善作用があります。

加味逍遙散の副作用

体力旺盛な人には適していません。また、胃腸の虚弱な人は嘔吐や腹痛、下痢が起こることがあります。

牡丹皮は、妊娠中の人には慎重に用いるべき生薬とされています。大量でなければまず心配はないのでは、という人も居ますが、妊娠中の服用については医師とよく相談してください。

配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。アルドステロン症、ミオパシー(筋肉障害)、低カリウム血症の人は使用できません。

過敏症として発疹、発赤、そう痒等 その他、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢等などの副作用がでることも記載されています。

加味逍遙散の服用方法

ツムラ加味逍遙散エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください

独特の風味があり内服しにくい場合、湯に溶いたものを冷やして飲む・ゼリー状にするなどで飲むことが出来る場合があります。

配合生薬の種類が多い場合、効果が出るまでに少し時間がかかる場合があります。そのため少し早めに飲んでいただくことで症状が楽になるまでの時間が早くなる場合があります。

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