ホットフラッシュとは
「ホットフラッシュ」とは、更年期障害の中でよく見られる代表的な症状のひとつです。急に顔がほてったり、のぼせたり、汗が止まらなくなるといった症状が現れます。これは季節などの環境やその人の意識に関係なく、何の前触れもなく突然起こります。
ホットフラッシュが起こる原因は女性ホルモンのエストロゲンと関係があります。本来エストロゲンは卵巣から分泌されるホルモンで、排卵を起こし、妊娠の準備をする働きをしながら、女性らしさを維持するために重要な役割を果たしています。しかし、40歳を過ぎる頃から、少しずつ卵巣の機能が衰え始めると共に、エストロゲンの分泌も減少します。そして閉経を迎える50歳前後の10年間を「更年期」と呼びますが、この時期にエストロゲンが急激に減少し、ホルモンバランスが大きく変化します。
エストロゲンが減少すれば、元の状態を維持しようと、脳からエストロゲンを分泌するように指令が出ますが、卵巣の機能が低下しているため、エストロゲンの分泌量を増やすことはできません。そのため脳から指令を出し続ける状態が続くことになり、脳が混乱するわけです。
すると脳の同じ部分から指令を受けて動く自律神経まで悪影響を受けて、自律神経のバランスが崩れてしまうことになります。自律神経とは、人間が生きていく上で必要な体の機能をコントロールする神経のことです。自律神経の乱れによって更年期障害といわれる様々な症状が現れるようになるといわれています。
更年期障害の中で、ホットフラッシュは体温調節をする自律神経のバランスが崩れることによって 起こる症状です。すなわち体温調節がうまく働かないということです。
このようにみたとき、ホットフラッシュが起こる元々の原因はエストロゲンの減少です。したがって、症状を改善する治療法として、ホルモン補充療法が最もよく用いられています。ホルモン補充療法とは錠剤や張り薬によって女性ホルモンを補う治療法です。更年期障害の症状全般に用いられる治療法ですが、中でもホットフラッシュに対して効果が高いといわれています。しかし、他の病気の発症リスクが高かったり、薬を投与できない人もいることから、ホルモン補充療法に代わる治療法として漢方薬治療も取り入れられています。
漢方医学では、昔から女性の体は7の倍数で節目を迎えるといわれ、49歳頃が閉経の時期にあたります。閉経は老化のひとつで、避けて通ることができないものですが、閉経前後の更年期に現れる症状は「腎」の機能低下と深く関わりがあります。
「腎」には、成長や生殖に関わる生命エネルギー源である「腎精(じんせい)」を貯える機能があります。腎精は20歳ごろをピークに徐々に減っていきます。加齢とともに腎精が不足すれば、腎の機能が低下するようになります。
また、腎には「陰」と「陽」をコントロールする働きがあります。分かりやすく言えば、「陰」は体を潤し、体内の余分な熱を冷ます体液や血液、「陽」は体を温め、各臓器を活発に動かす熱エネルギーのことです。
更年期障害は、腎の機能が低下し、陰陽のバランスが崩れることにより、体を温めたり冷ましたりするいわゆる体温調節がうまくいかなくなります。特に多いのは、陰が不足することによって、潤いが不足し、熱が体内にこもってしまう「腎陰虚(じんいんきょ)」という状態です。腎陰虚に伴い、腎と互いに補い合う関係である「肝」の機能も低下します。その結果「血」や「気」にもトラブルを引き起こします。特に気が頭や上半身に逆流する「気逆」という状態を伴うことによって、ホットフラッシュの症状が見られます。
根本的な原因が腎と肝の機能低下なので、治療には、体内の熱を冷まし、腎と肝を補うものとして「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」や「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」が用いられます。
杞菊地黄丸の効果・効能
知柏地黄丸の効果・効能
気逆の改善には「加味逍遥散(かみしょうようさん)」が有効です。これは肝の機能を回復して気の巡りをよくし、血行もよくする働きをします。他にも血の巡りを改善する「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「女神散(にょしんさん)」や血液の流れを改善しながら熱を冷ます「温清飲(うんせいいん)」も効果を実感される方を多数経験します。
更年期の症状は個人差がありますが、ストレスを受けていると強く現れやすいようです。しかし軽症ならば、ストレス解消、バランスのとれた食事、体を温めることなどちょっとした心がけで、症状の緩和が期待できます。 更年期をうまく乗り切っていく上で、まずは無理をせず、リラックスした生活を送ることも大切なことと言えるでしょう。