アトピー性皮膚炎は、今の時代に増えてきている病気のひとつです。
アトピー性皮膚炎は、遺伝による体質も関係していますが、環境も関わっています。そのため、アトピーを発症しやすい「アレルギー体質」を持った人でも症状が出ない人もいれば、アレルギー体質ではなかった人が突然発症することもあり、アトピー性皮膚炎はまだまだ分かってないことが多い疾患です。
アトピー性皮膚炎は、大気汚染などの環境の変化や、食事や睡眠時間などの生活サイクルとも大きくかかわっています。そのため、代替療法を提唱する方も多く、社会的な問題もあります。
アトピー性皮膚炎は、中高生の間までに持ち越さなければ、その後はアトピー性皮膚炎が続きにくいとされています。そのため、良い状態を保つことが重要です。
皮膚科での治療を中心に考える
皮膚科では抗アレルギー剤やステロイド外用薬を使った治療を行います。
アトピー性皮膚炎の治療で大事である一番のポイントは、『良い肌の状態を保つ』ことです。
炎症があると、炎症がかゆみを生み出します。すると、かゆくなり、かいてしまうため皮膚が荒れ、皮膚があれるため炎症を起こし、かゆくなります。こういった流れを止め、落ち着かせるためにステロイドは重要な薬です。日本では拒否感を持たれることも多いのですが、拒否されるべきではなく、むしろ必要な方に上手に使うことを考えるとよいでしょう。
そして、保湿をすることが重要です。良い皮膚に、保湿のバリアをすることで、皮膚が良い状態を保ちます。
西洋薬を適切に使うことで、湿疹や辛いかゆみなどの症状を和らげ、日常生活の質を保つことができ、また症状の悪化を防ぎます。しかし、こういった治療で改善きらないケースでは、時に西洋薬での治療と併用できる漢方薬が有用な場合があります。
服用する際には、担当医に漢方薬を使用する旨伝え、現在服用中の西洋薬があれば、飲み合わせの確認を行うとよいでしょう。
アトピー性皮膚炎の漢方薬
『十味敗毒湯』 ◇化膿を伴う急性の炎症に ‐
体質は中等度で、患部がジュクジュクと湿っており、痒みや熱を持つような初期の症状に十味敗毒湯は適しています。構成生薬の独活、防風、荊芥が患部の熱と湿気をとり去り、柴胡や川芎などが化膿を伴う湿疹を改善します。
著しく胃腸の弱い人は使用を控えてください。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『消風散』 ◇慢性化し分泌物が多い湿疹に ‐
体質は中等度で、症状が広がり慢性化し、かゆみの強い人に消風散は適しています。分泌物の多い湿疹で、舌をみると全体に赤く、わずかに黄色い苔があることが特徴です。
消風散が効果的な場合のアトピー性皮膚炎は、本来は夏の時期に悪化するケースが多いのですが、冷房完備された現代では例外が多いです。またステロイド外用薬を用いている場合は症状が抑えられているので、時期だけで判断することは困難です。
こうした場合は、漢方の専門家に相談することをおすすめします。消風散は13種類の生薬で構成され、患部の熱を冷ます、痒みを止める、膿や分泌物を排出する、血を補うなどの多様な作用でアトピーの辛い症状に役立つ場合があります。
胃腸虚弱な人や冷えが強い人には不向きです。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『白虎加人参湯』 ◇身体のほてりと皮膚の熱感、口の渇きがある人に ‐
体質は中等度~やや虚弱で、のどが異常に渇き、舌をみると苔が白く乾燥していて、便秘がちな人に白虎加人参湯は適しています。身体に熱がこもり、その熱を逃がそうと大量に汗をかいてしまった結果、体内の水分が失われ皮膚がほてりかゆみが現れます。
漢方の気・血・水でいうと、気と水に問題があるととらえ、水の足りない「津虚」、パワーの足りない「気虚」を改善していきます。白虎加人参湯はアトピー性皮膚炎の他、熱中症や脱水症状にも使われることがあります。構成生薬のひとつである石膏は強力に身体の熱を取り、人参や粳米が身体に潤いを与え元気にします。
胃腸が弱く体力が著しく低下した人、身体の冷えが強い人には向いていません。食欲不振や吐き気がある人は、必ず専門家に相談するようにしてください。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、肝機能異常、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『温清飲』 ◇皮膚を掻きこわしてしまう人に ‐
温清飲は、身体の熱を冷まし炎症を抑える「黄連解毒湯」と血を補い栄養を皮膚に与える「四物湯」を合わせた薬です。体質は中等度で身体に冷えがあり、皮膚をかくと粉がこぼれ掻きこわして出血してしまうような人で、女性であれば月経困難、月経不順、冷えなどを伴う場合に適しています。
また不眠症や神経症などの精神的な症状にもよいとされています。構成生薬の黄連、黄芩、黄柏、山梔子は身体の熱を冷まし皮膚の炎症を抑え、地黄や当帰は血を補い、身体を温め全身へ巡らすことで皮膚への栄養状態をよくします。
温清飲は胃腸虚弱の人にはおすすめできません。副作用として、肝機能障害、黄疸、消化器症状が記載されています。
『抑肝散』 ◇ストレスで悪化する症状に ‐
ストレスで皮膚症状が悪化する場合は、抑肝散を試してみるのもよいでしょう。体質は中等度からやや虚弱で、ストレスによる不眠などの症状がある人にも適しています。
抑肝散は名前のとおり「肝」の高ぶりを「抑える」「散剤(生薬を粉砕した薬)」であり、主に精神症状に用いる漢方薬のひとつです。漢方では五臓という考えがあり、身体の機能や働きを「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つに分け、互いがバランスを保っている状態が良いとされています。
興奮して怒りやすいようなイライラタイプは、「肝」が失調しバランスを崩してしまっている状態ととらえます。抑肝散はこの肝の失調を改善することでイライラ気分や怒りを鎮めます。
甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、間質性肺炎、肝機能障害などが記載されています。