ドライアイの時に使用される漢方薬、原因と効果。ヒアレインなどで改善しない人への選択肢

■ドライアイ

目の表面は涙(涙液)で常にうるおいが保たれていますが、何等かの原因でこのうるおいが失われる状態をドライアイといいます。

涙には細菌やウイルスから目を守る殺菌作用や、角膜などに栄養を届ける大切な働きがあるため、症状が長く続けば不快感のみならず、角膜の表面に傷がつき、細菌に感染したり、眼精疲労などから視力低下につながることもあります。

西洋の治療では、ドライアイの症状に合わせた成分を含む点眼薬が処方されます。点眼することで不快な症状はすぐに改善し、また潤いが続くことで傷ついた角膜の修復にもつながります。しかし点眼を辞めると元の症状に戻ってしまう人も少なくありません。

漢方ではドライアイ症状の人の「気」(パワー)、「血」(血液の質とその働き)、「水」(体内の水分)のバランスや、体質、体力の状態で薬を選択し、身体の中から症状を改善していくことを目標にしています。もちろん漢方薬を服用するだけではなく、日々の生活の質を改善する必要もあります。パソコンの使い過ぎ、空気の乾燥、ストレス、偏った食生活など、思い当たる原因を自ら意識的に取り除くことも大切です。

ドライアイに使用される漢方薬

 『人参養栄湯  疲労倦怠感が続き、元気がない人のドライアイに ‐

過労やストレスのため、慢性的に疲労困憊の状態が続き、「元気」や「ヤル気」など「気」のパワーが減少している状態を漢方では「気虚」と言います。人参養栄湯は、その気虚に血の不足した状態である「血虚」状態を伴う、「気血両虚」の人のドライアイに適しています。

血液は身体の隅々に栄養と酸素を届けます。乱れた食生活や不十分な休息などが続くと「血」の質が悪くなり、その血や水を全身に届けるための「気」の力も不足するため、栄養や水分が身体の末端まで行き届かず、ドライアイをはじめ、手足の冷えや動悸、眠りが浅い、髪が抜けやすいなど様々な症状が現れます。

人参養栄湯の構成生薬である当帰や地黄は血を補って血虚を改善し、人参には気を補って気虚を改善する作用があります。また遠志には精神を安定させる鎮静作用があるため、気分の落ち込みやストレスなどの原因が伴う場合にも改善が期待されます。

甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。胃腸が著しく弱い人、食欲不振が続いている人、嘔吐がある人は服用前に必ず専門家に相談するようにしてください。

人参養栄湯:ツムラ108番の効果効能・配合生薬

麦門冬湯』  喉や口の中の乾燥も気になる人のドライアイに ‐

麦門冬湯は、身体を潤す力が低下しているタイプに適しています。「気・血・水」でいうと「水」に不調がある場合です。

構成生薬の麦門冬は、身体に潤いを補うとともに、潤いが少ないことで火照ってしまった身体の熱を冷まします。また、粳米には潤いを補う作用のほか、気を補う作用もあるため、水の巡りをよくします。ドライアイの他、乾燥したタイプの咳や気管支炎、痰が切れにくいなど呼吸器の症状に使われることの多い漢方薬です。

甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また副作用として肝機能障害や間質性肺炎などが

記載されているため、服用前に専門家に相談してください。

麦門冬湯:ツムラ29番の効果効能・配合生薬

 『杞菊地黄丸』  疲れ目やかすみ目、目の老化症状がある人に ‐

疲れ易い、肌が乾燥する、白髪・抜け毛が増える、耳の聞こえが悪いなど、人は歳を重ねるごとに様々な症状が身体に現れます。この状態を漢方では「腎虚」と言います。

杞菊地黄丸はこの腎虚のなかでも、身体の熱を冷ましたり潤したりする力が低下した「腎陰虚」タイプに適しています。便が硬い、手足にほてりがある、尿の色が濃い、口の中が乾くなどが特徴です。さらに「腎」は、五臓のひとつでもあり血を司る「肝」とも密接な関係があるため、構成生薬には血を補う生薬も複数含まれています。

処方名にも使われている菊花は、上半身の熱を取り除く「清熱」の作用があるため、目の充血や炎症を抑えます。枸杞子や地黄は血を補い、潤いを与え、牡丹皮は血流を良くし、山薬は腎に栄養を与え元気をつけます。これら複数の作用により、ドライアイはじめ不快な症状を身体の中から改善していくと考えられ、処方されます。ちなみに腎虚は、高齢者だけに当てはまるものではありません。幼いころから不健康な生活を送っている人は、早いうちに腎虚に陥ることがあります。

地黄が含まれているため、胃腸虚弱の人や消化不良がある人は使用を控えてください。また副作用に皮膚に発疹やかゆみが現れると記載されているため、服用前に専門家に相談することをおすすめします。

参考:杞菊地黄丸とはどのような漢方薬か?

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