桂枝加朮附湯の特徴
冷え性で、四肢の関節が痛んで曲げ伸ばしが困難なとき、腰痛や肩こり、神経痛に用いられる漢方薬です。さらに、痛みの改善を目的に関節リウマチにも用いられることがあります。
整形外科で痛み止めとして処方される非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)の場合は、胃に負担がかかり、副作用として胃炎や胃潰瘍が出る可能性がありますが、桂枝加朮附湯の場合はそのリスクは低くなります。痛みに対する上乗せ効果が出るため、西洋薬の消炎鎮痛薬(NSAIDs)と併用することによって、西洋薬の量を減らせる場合があります。
もとは、傷寒論(ショウカンロン)に記されている桂枝加附子湯(ケイシカブシトウ)で、これに吉益東洞が蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)を加えて作った漢方薬です。
次のような人に有効です。
- 冷え性で体力がない
- 関節がこわばる、関節痛がある
- しびれや神経痛がある
- 腰痛もち
桂枝加朮附湯の作用・効果
桂枝湯(ケイシトウ)に蒼朮(ソウジュツ)と附子(ブシ)が加わった処方です。
桂皮(ケイヒ)はおだやかな発汗、発散作用があります。
芍薬(シャクヤク)は筋肉の緊張を和らげ、痛みを抑える作用があります。
蒼朮(ソウジュツ)は痛みを和らげる作用があります。
附子(ブシ)は体をあたため、痛みをとる作用があります。
甘草(カンゾウ)は他の生薬との調和作用があります。
桂枝加朮附湯の成分・効能
桂枝加朮附湯は、7種類の生薬からなります。
・桂皮 (ケイヒ):クスノキ科のニッケイの樹皮または枝を乾燥させたもの。薬効は、「気」の巡りを整え、発汗によって体表の毒を除く働きがあります。解熱作用、鎮静作用、血行促進作用、抗血栓作用があります。
・芍薬 (シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。「血(ケツ)」の巡りをよくし、筋肉のけいれんを鎮めたり、鎮痛作用があります。
・蒼朮(ソウジュツ):キク科のホソバオケラの根を乾燥させたもの。薬効は、「水滞」の改善作用があり、体内の水分代謝を正常にします。さらに消化機能を高める作用もあります。
・附子(ブシ):キンポウゲ化のハナトリカブトの塊根を乾燥させたもの。薬効は、体を温める作用や鎮痛作用があります。冷えの強い人や関節痛、神経痛の改善などに用いられます。副作用で、舌のしびれ、吐き気、動悸、不整脈などに注意が必要です。
・生姜 (ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える働きがあります。健胃作用、食欲増進作用があります。
・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。薬効は、胃腸の機能を整えたり、精神安定化作用、鎮痛作用があります
・甘草 (カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張をゆるめる作用があります。
桂枝加朮附湯の副作用
体力のある人、暑がりの人には適していません。
また、附子(ブシ)の副作用(主な成分はアコニチン、メサコニチン)で、舌のしびれ、吐き気、動悸、不整脈などに注意が必要です。附子を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、その重複に注意が必要です。小児は中毒がおこりやすく原則として使用できません。
さらに、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。複数の方剤の長期併用時などの時は注意が必要です。
桂枝加朮附湯の服用方法
ツムラ桂枝加朮附湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。桂枝加朮附湯は「温補剤」ですので、お湯に溶かして、温めながら服用するとより効果的です。