防已黄耆湯の特徴
色白で水太りで、筋肉が軟らかく、疲れやすくてむくみやすい人に用いられる漢方薬です。水分代謝に働きかけ、むくみを取り、倦怠感を改善させる目的で処方されます。また、変形性膝関節症で膝に水が溜まったり、関節リウマチで関節が腫れて痛みをともなう症状に応用されます。
また、上記の症状でもあまり太っていない人には、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)が用いられます。冷えて筋肉や関節が痛み、汗をかきにくく、体力がある人には、麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)が用いられます。
中国・漢時代の「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力があまりなく、疲れやすい
- 水太りタイプ
- 色白で筋肉が軟らかい
- 汗が多くて尿量が少ない
- 膝関節の腫れによる痛みがある
- 下肢にむくみがある
防已黄耆湯の作用・効果
防已(ボウイ)、蒼朮(ソウジュツ)は、体内の余分な水分を排出し、炎症や痛みを緩和する作用があります。
黄耆(オウギ)は滋養強壮作用があり、汗を止める作用があります。
大棗(タイソウ)生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)は胃腸の働きを助ける作用があります。
ダイエットやむくみの改善だけでなく、腎炎やネフローゼ、関節炎、月経不順にも使用されます。また、ステロイド剤の副作用を軽減するために併用されることもあります。水分を調整する漢方薬であるため、抗うつ薬で汗が出過ぎて困る症例に対し、防已黄耆湯を使用し改善したという報告があります。参考:精神医学54(11):1159-1161,2012。
慢性腎臓病(CKD)・腎不全に対する防已黄耆湯の効果
現在確固たる地位を獲得させるのは難しいですが、CKD(慢性腎臓病)の方で、クレアチニン値が改善したという報告もあり、今後の研究が待たれます。黄耆にクレアチニン低下作用があるのでは、と考察されており、腎臓の学会誌に掲載されているのはとても興味深いです。(参考:日本腎臓学会誌. 2009, 51, p.338)。
実際の患者さんに投与した研究では、防已黄耆湯を慢性腎臓病のステージ3(2009年版なのでeGFRで30~59、平均のクレアチニン値は1.69)で、ACE阻害剤/ARBを内服している22例を対象に、1ヶ月~30ヶ月内服し、血清クレアチニン値が約8ヶ月で1.68mg/dL→1.38mg/dLに改善したと報告されています。(参考:Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.40 No.1 2016)
変形性関節症に対する防已黄耆湯の効果
膝(変形性膝関節症)や股関節の最も多い原因である変形性関節症に対して、痛みを取り除く効果を持っています。腰から上は汗ばみ、腰から下が重たく膝が腫れ、曲げにくいというような方には適した漢方薬です。
疲れやすく色白で汗をかきやすく、カエル腹と呼ばれる出っ張った感じで、日中は屋内で体を動かす習慣が少なく、それでも普通量食べてしまい、関節に水がたまっている人に適しています。
1981年ごろから臨床試験がはじまり、変形性膝関節症に対して87%有効であったという報告があります。また、60人を対象とした関節痛の方に防已黄耆湯を使用し、46人で改善したという報告されています。全体に腫れが引いて痛みが改善したと報告されています。(参考:漢方医学5(5):9-15,1981)
また、証がある程度合わない(つまりどんな人でも)変形性膝関節症で防已黄耆湯を使用すると、6割で痛みが改善したと申告するという報告もあります。
防已黄耆湯の成分・効能
防已黄耆湯は、6種類の生薬からなります。
・防已(ボウイ):ツヅラフジ科オオツヅラフジ茎または根茎を乾燥させたもの。薬効は、炎症や痛みを緩和し、水分代謝を正常にする作用があります。
・黄耆(オウギ):マメ科のキバナオウギ、ナイモウオウギなどの根を乾燥させたもの。薬効は滋養強壮作用があり、体内に滞った「水(スイ)」を除く作用があります。
・蒼朮(ソウジュツ):キク科のホソバオケラの根を乾燥させたもの。薬効は体内の水分代謝を正常にする作用があります。さらに消化機能を高める作用、関節痛み、神経痛を改善する作用もあります。
・生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える作用があります。
・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。薬効は、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたり、筋肉の緊張による疼痛や、腹痛などの痛みをやわらげる作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和作用、緊張をゆるめる作用があります。
防已黄耆湯の副作用
スポーツをしている筋肉質の人には適していません。
ダイエット目的で服用するにしても、薬を服用するだけでは効果がありません。食事内容を見直したり運動をしたりなど、生活習慣を見直した上で漢方の力を借りるのが意味のある使用法とされます。
配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。アルドステロン症、ミオパシー(筋肉障害)、低カリウム血症の人は使用できません。
防已黄耆湯の服用方法
ツムラ防已黄耆湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください