鼻水の症状が出る原因と日常の注意点
鼻の内壁には粘液分泌腺があり、鼻汁を少しずつ分泌することで、いつでも鼻腔内に湿り気を持たせる仕組みがあります。
湿り気と、鼻水の流れが、菌の定着を防ぎ、菌の繁殖を防ぎます。加えて鼻汁には、外気と直接触れる鼻粘膜を病原菌やアレルギーのもとから守るリゾチームという物質が含まれています。風邪のウイルスや花粉などのアレルゲンが鼻腔に侵入すると、防御反応として大量に鼻汁が分泌されます。鼻水の症状は非常に不快ですが、身体は自分の身を守るために必死に応戦しているのです。
頑張ってくれているのはとてもありがたいのですが、鼻水が出過ぎると勉強や仕事に集中できなかったり、夜眠れなかったりと、別の疲労やストレスで身体に負担をかけることになります。風邪ならゆっくり休む、アレルギーであればアレルゲンを取り除くことが一番の対策なのですが、なかなかそうもいかない世の中です。
そこで鼻水症状におすすめされる、4つの漢方薬を紹介します。
鼻水の症状に処方される漢方薬
『小青竜湯』 -身体が冷えている人の透明な鼻水に-
最近は「花粉症」といえばどこの耳鼻科でも出される漢方薬として世の中に知られてきました。しかし人の体質はそれぞれ異なるため、誰にでも効果があるわけではありません。
小青竜湯は身体が冷えてむくみやすく、透明の鼻水がツーとたれ落ちるようなタイプの人で、体力が中程度以上の人に適しています。構成生薬のうち麻黄と細辛が身体を強く温めて、半夏が胃に滞る水余分な分を取り去ります。花粉症などのアレルギー性鼻炎はもちろん鼻かぜにも使われ、くしゃみや痰などの症状に対する効能を持ちます。
麻黄はさまざまな漢方薬に使われており、素晴らしい効果を発揮する生薬ですが、循環器系の既往歴がある人や高血圧の人に影響を及ぼす可能性がありますので、必ず服用前に専門家に相談するようにしてください。また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。
『苓甘姜味辛夏仁湯』 –体力のない人でゼイゼイする人の咳や鼻水に–
苓甘姜味辛夏仁湯鼻水が用いられる鼻水は、小清竜湯と同じく透明で粘り気がない鼻水が特徴ですが、この苓甘姜味辛夏仁湯は構成生薬に麻黄が含まれないため、体力がない人や胃腸虚弱の人、血圧が高めの人でも服用できます。
咳を鎮め痰の切れをよくする杏仁や、身体をやさしく温め冷えて滞った水分を取り去る複数の生薬で構成されており、ゼイゼイ喘息のような症状や、力のない湿った咳や痰が出るタイプの人にも適しています。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。
『柴胡桂枝乾姜湯』 –冷えと熱症状を繰り返し、イライラや不眠がある人の鼻水鼻づまりに-
柴胡桂枝乾姜湯は、体力のない人が風邪をこじらせてしまった時にも使われる漢方薬のひとつです。身体に冷えと熱が同時に存在して繰り返し、動悸や息切れなどがあり、また何となく「イライラ」や神経過敏な症状が現れるタイプに適しています。
身体を温める生薬と熱を冷ます生薬で構成されています。また牡蛎(ボレイ)は牡蠣の貝殻を砕いたものですが、気持ちを落ち着かせる鎮静作用があります。漢方では「身心一如=身体と心は一体で分けることができない」という言葉があるように、心のバランスが崩れた状態であると身体の中の各臓器や機能、免疫なども影響を受け、回復が遅くなります。
この柴胡桂枝乾姜湯は身体と心の両方にアプローチする漢方薬と言えます。ただし甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。また桂皮はまれにアレルギーや発疹などを起こす例があるので注意が必要です。
『葛根湯加川芎辛夷』 - 黄色い粘り気のある鼻水鼻づまりに-
葛根湯加川芎辛夷は名前のとおり、身体を温める「葛根湯」に「川芎」と「辛夷」を加えた漢方薬です。炎症や鼻づまりが強く、肩こりや頭痛なども伴う症状の人に適しています。辛夷は鼻の血管を収斂させることで鼻づまりを改善し、川芎は血液の流れを促進して身体を温めることで鼻づまりや鼻水を改善します。
副鼻腔炎など慢性症状や、花粉の時期の辛い鼻づまりにも使われることがあります。麻黄が含まれるため、著しく体力のない人や汗が多く出る人、高血圧や循環器系の障害や既往歴がある人は服用前に必ず専門家に相談してください。また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。